小倉弁護士へのインタビュー「歯医者のNo.1表示が危ない理由」

小倉弁護士へのインタビュー「歯医者のNo.1表示が危ない理由」

2026年06月11日

弁護士プロフィール

松田綜合法律事務所

小倉 佳乃 弁護士

おぐら かの

略歴

小倉佳乃(東京弁護士会)

https://jmatsuda-law.com/members/kano-ogura/

株式会社ファーストリテイリングでの企業法務経験を活かし、企業法務〜景表法など様々な領域を担当。「依頼者が満足し、笑顔になれる丁寧な接客」をモットーに。依頼者目線の寄り添った相談を行っている。

<経歴・主な業務>

東京大学法学部卒業
東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了
2015年12月 松田綜合法律事務所
2020年5月 株式会社ファーストリテイリング 法務・コンプライアンス部 グローバル法務チーム
2024年1月~ 松田綜合法律事務所
本文

歯医者(歯科医院)のHPでは、「No.1」を使った表示を見かける事がある。中には、HPの更新が追いつかず、古い表示がそのまま残っているケースもある。しかし、このような表示は掲載しているだけで、医療法や景品表示法などに抵触する恐れがある。今回は、数多くの表示物のレビューに携わってきた小倉佳乃弁護士に、歯医者のNo.1表示についてお話を伺った。

クリニックはNo.1等の最上級表現を避けるべき

結論から言えば、医療法等に抵触する恐れがあるため、No.1や最先端などの表示を避けるべきとの事だ。

「「No.1」や「最高」、「最先端」などの表示は比較優良広告又は虚偽誇大広告に該当すると指摘される恐れがあります」

確実にNGとなる表示は、「症例数全国No.1」や「県内No.1の実績」など、他の歯医者と比較して自らのクリニックが優れている事を表す表示だ。

「医療法上、他の病院又は診療所と自らを比較して、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告する事は認められていませんので、「No.1」や「最高」という表示は控える必要があります。強いて許容される表現を挙げるなら、『最新の機器を導入』といった記載ですが、最新である事について裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要があるので留意が必要です」

「また、より新しい医療機器が定着したり、長期間経過した場合には、「最新」の表現を使用する事は虚偽広告や誇大広告に該当するおそれがあります。○○年製の△△を導入のように事実だけを書く方が安全です」

クリニックがNo.1や最先端などの表現を活用する事は避ける方が良いだろう。

顧客満足度No.1について

歯医者がNo.1表示を掲載する場合、「顧客満足度」であれば表示として問題ないと考える担当者もいるかもしれない。このような場合はどうか。

「他の病院等と比較をする場合、やはり医療法では他と比較して優良である旨の表現が禁止されているため、患者さんに治療を受けてもらい、その意見や感想を聞いたとしても、「「顧客満足度No.1」などの表示は避けるべきでしょう」

治療内容に直結するNo.1表示は避けるべきだが、待合室の清潔度など、治療に直接関係しない項目のNo.1表示はどうだろうか。

「実際にクリニックに通った患者さんを対象に調査を実施し、待合室の使い勝手を聞く事は出来ると思います。しかし、治療内容そのものではない点についても、他の病院等と比較して優良である旨の表現は使用できません」

上記のような点で考えると、やはり「顧客満足度No.1」という表示をクリニックが行う事は控えた方が良いだろう。

表示の見直しと適切な表示の運用を

No.1や最先端以外にも、歯医者では景品表示法に注意すべき項目がある。例えば口コミを意図的に操作する、いわゆる「ステマ規制」だ。

実際に、利用者にGoogleマップで★5などの高評価の口コミを投稿させる代わりに費用を割り引く事を伝えたクリニックが、ステマ規制違反で措置命令を受けたケースもある。

「ステルスマーケティング規制では、患者さんによる口コミやSNS投稿に対して、割引や特典の提供を条件とする場合や投稿内容について情報をやり取りする場合はリスクが高いので特に注意が必要です。事業者が表示内容の決定に関与している場合は、広告である事が消費者に分かる形で表示する事が重要です。」

口コミを意図的に偏ったものに調整する事例も問題だが、インフルエンサーにクリニックの宣伝をお願いする場合など、SNSでのPRを依頼するケースも、PRである事を適切に表示しなければ同様に問題のある表示として指摘を受ける可能性がある。適切に表示を運用するために、過去の表示内容を含め問題がないかを確認しておくと良いだろう。

最終的な表示の責任は、原則として事業者が負う

今回は歯医者などのクリニックが注意すべき表示について紹介した。No.1や最先端の表示はリスクが高く、厳格な対応が求められる。

「クリニックにおいて最上級表現はリスクを伴う表示なため、別のアプローチを検討すると良いでしょう」

勿論、内部の資料作成のために調査会社を活用し、他社との満足度を調査するなどのアプローチは問題ない。ユーザー向けに広告をするために調査を実施するのではなく、今後の戦略を立てるために競合調査を実施するのは有効だろう。

広告として「No.1」と表示を掲載すると、最終的な責任を問われるのは原則としてクリニックだ。今回の記事を参考に適切な広告作成を心掛けて欲しい。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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