消費者庁インタビュー「No.1調査における景品表示法」その2

2024年04月25日

消費者庁から見た景品表示法違反にならない適切なサンプル数

No.1調査をはじめとした様々な調査を行うにあたり、サンプル数をどのように設定すべきか頭を悩ませる(広告表示・リサーチ)担当者も多いだろう。

公正取引委員会が平成20年に発表した「No.1表示に関する実態調査報告書」では、適切なサンプル数について、以下のように定義されている。

  • 当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認  める方法によって実施されていること
  • 社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

サンプル数が不十分な調査結果を元にNo.1表記をすると、客観的な調査結果として妥当と認められず、景品表示法違反となる可能性が高い。そこで適切なサンプル数はいくつかについて、消費者庁はどのように考えているのかを把握するべく、消費者庁 表示対策課 指導係に問い合わせを行った。

一般的にアンケート調査では、最低でも400のサンプル数を集めることができれば、信頼性の高い結果だと言われている。一見すると400のアンケート・サンプル結果を集めることができれば問題ないように思えるが、消費者庁 表示対策課 指導係によれば、この数値は必ずしも妥当とは客観的に評価できるものではないとのことだ。
例えばAというお店が「会社員が選ぶ全国居酒屋チェーン店 顧客満足度1位」と表記しようと検討している。A社が2つの調査方法を検討した場合、どちらが客観的なものか判断できるだろうか。

 
  1. 名古屋市内在住の会社員400名を対象
  2. 47各都道府県からピックアップした400名の会社員

サンプル数はどちらも400名ではあるが、①は名古屋市内の会社員を対象にした調査のため東海圏の偏った結果となり「全国」とは言えないことが分かる。一方②は47都道府県のサラリーマン400名にアンケートを実施しているため、「全国」と表記するために客観性のある調査を行っていることが分かる。

しかしながら、これはあくまで東海エリア、全国エリアの範囲を比較しただけであり、客観的に妥当と判断できる調査結果ではない。

顧客満足度を確かめるのであれば、一度でも来店した経験がある全国400名の会社員にアンケートを実施しなければならない。仮にAというお店に足の運んだことのない会社員に対し調査をしているのであれば、結果的に、第三者の立場から妥当な調査結果と評価してもらえないのだ。

サンプル数を多く集めることも客観性を示すために重要ではあるが、「どのような過程でその調査結果を得たのか」という点が景品表示法違反に該当しないためには重要だ。

消費者庁 表示対策課 指導係よれば、行政指導の対象となった企業の中には、調査会社の調査過程を知らなかったケースも珍しくないと指摘する。サンプル数に目が行きがちだが、消費者庁は客観的に評価できる調査結果かどうかで判断をしている。サンプル数さえクリアすれば良いのではなく、客観的な評価を得るために、どのような調査を行えば良いか、広告主が調査過程をしっかり把握しておかなければいけないことも心得ておくと良いだろう。

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