森田多恵子弁護士インタビュー「景品表示法の基本」

2024年03月29日

No.1の有効期限

NO.1調査結果で得た「NO.1」はいつまで表記できるものなのか、疑問に思う事業者もいるかもしれない。適切な調査結果を元に表記したNO.1でも、数年後には競合相手にNO.1を奪われてしまう可能性も考えられる。今回はNO.1の有効期限について、ビジネス法分野を得意とする西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 森田多恵子弁護士にお話を伺った。

NO.1と表記する場合、「〇〇年度NO.1」といった形が一般的だ。なぜこのような書き方をするのか、森田弁護士によれば、ユーザーの多くは、パッケージやWebサイトに書かれている情報をぱっと見て現在「NO.1」なのだと判断することが多く、「NO.1」だけ表記をしていると優良誤認表示として判断されてしまう場合があると指摘する。

NO.1の正しい表記方法について森田弁護士に伺うと、一定期間を調べて今年度NO.1と表記を行うケースが多いとのことだ。NO.1表記の有効期限について具体的な期日が存在する訳ではないが、優良誤認表示を避けるため、いつのNO.1調査なのか、ユーザーが分かるように提示しておくべきである。

もちろん「NO.1」という結果は時代と共に変化していくものだ。「2024年度アンケート調査NO.1」と年数がはっきりと明示されていても、数年後になればアピール項目としては弱い項目になっていることも理解しなければならない。また、商品・サービスによって2~3年おきの調査で良いものもあれば、必ず1年に1度は調査をしなければならないものもあるだろう。この辺りは表記したいものによって異なるため、事前に調べておくと良いだろう。

またホームページで「今年度売上NO.1」と表記する場合、定期的に表記に問題がないか確認しておくと良いだろう。競合相手の売上が上回った場合、NO.1ではなくなってしまうため優良誤認表示となってしまう。このようなケースでは、自社の製品がNO.1と言えなくなってしまう。

このような場合には表記を「2024年度売上NO.1」と記載を変更すれば、優良誤認表示を回避できる。
以上を踏まえ、NO.1を正しく表記するためには下の2つのポイントが重要であることが分かる。

  • どの程度の期間はNO.1と表記できるのか
  • NO.1を他社に取られた場合、再調査をするか「()年度NO.1」と表記するか検討する

措置命令を受ければ、社会的な信用を失ってしまう可能性があるため、できれば、社内で期限を決めてNO.1調査を定期的に行うか判断しておく必要がありそうだ。

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