佐藤弁護士へのインタビュー「大手サロンの確約計画から見る返金計画の考え方」

大手サロンの確約計画から見る返金計画の考え方

2026年04月06日

弁護士プロフィール

中本総合法律事務所

佐藤 碧 弁護士

さとう みどり

略歴

まっすぐ。をモットーに、景品・表示規制をはじめとする消費者法全般、民事、商事一般、少年事件、労働事件を取り扱う。2011年〜2014年には、消費者庁に出向し、消費者制度課において消費者の財産被害に係る行政手法の検討等、表示対策課において景品表示法違反事件の調査等を行う。

本文

2026年3月3日、消費者庁より、株式会社ソシエ・ワールド(以下「ソシエワールド」という)がエステティックサロンで提供する施術サービスについて行っていた表示に係る景品表示法違反被疑事件について、確約計画が認定されたと発表された。確約計画には厳格な諸条件があり、要件を満たすと措置命令及び課徴金納付命令を回避出来る。本記事では、確約計画のポイントについて、景品表示法に精通している佐藤弁護士に見解を求めた。

まずは指摘を受けない表示を

今回のポイントは大きく分けて3つある。まずは「確約計画の経緯」について整理していく。どのような経緯でソシエワールドが確約計画を申請するに至ったのかを紐解いていく。

「消費者庁が調査の経緯を公表する事がないためあくまで推察の域を出ませんが、何らかの情報の提供があって調査に入り、調べてみたらかなり以前の令和3年から問題のある表示を掲載していたケースではないかと思われます」(佐藤弁護士)

もちろん消費者庁は全ての事業者の全ての表示をチェックしている訳ではない。調査の端緒となるのは消費者等からの情報提供が多い。景品表示法は消費者を守る法律であり、不利益を被らないよう事業者に様々な対策を指示している。

「よくある事例として、期限付きのキャンペーン情報をHP等に掲載しているが、実際には期限後も同様のキャンペーンを継続していたというケースで、違反が認定されることは多くあります。事業者は、キャンペーン期限については表示通りに遵守できているか、改めて確認する必要があります」

調査の端緒となるのは、消費者の他、競合他社からの情報提供ということもありうる。

「競合となる事業者が適切に表示を行っている場合、他社の問題のある表示を看破する可能性があります。自社は適正に運用している一方で、他社が守らないのはおかしいという理由から情報提供が行われることもあります」

一般的には、大手事業者や、急成長し、業界から注目されているベンチャー企業については、注目度が高いため調査対象となるリスクが高いといえる。問題のある表示が業界内で横行すれば、消費者庁は必ず動く。「他社が攻めた表示をしているから自社も攻めた表示をしよう」と他社を基準とするのではなく、その表示に問題がないかを自社で確認しておく事が重要だ。

確約計画のポイント

ソシエワールドは、消費者庁からの調査を受け、確約計画の申請を選択した。確約計画の中で、当該表示を見た利用者への被害回復のためにAmazonギフト券の配布を実施している。

確約計画については、消費者庁が「確約手続に関する運用基準」を出している。その中で、確約計画の認定に当たっては、当該確約計画における確約措置が、①違反被疑行為等を是正するために十分なものであること(「措置内容の十分性」)及び②確実に実施されると見込まれるものであること(「措置実施の確実性」)を満たす必要がある(景品表示法第27条第3項又は第31条第3項)とされている。そして、措置内容の十分性について、「必要な措置」とされているものと、「有益である」とされているものがある。返金措置については、この中で「措置内容の十分性を満たすために有益であり、重要な事情として考慮することとする」とされており、認定のために「必要な措置」とされているわけではない。

「たとえばECサイトなどにおいては、返金対応を行いたくても、取引単価が低く、かえってコストがかかってしまうケースや、顧客の個人特定が困難な事例が存在するため、現実的ではないケースがあることを考慮したものと思われます。」

つまり、確約計画として提出した計画において、「必要な措置」を盛り込んだ上で、その措置に確実性があるかが重要であり、返金措置を示さなくても他の措置において事業者として誠実さを示せれば、確約計画として認められる可能性はある。

とはいえ、被害回復を行うために返金対応は消費者庁からの評価が高く、措置命令を回避出来る可能性が高い。確約計画を利用する際は、消費者庁の上記の基準を踏まえ、事業者がどのような形で改善をするか、確約計画のどのような点を重視するかを協議すると良いだろう。

うちは大丈夫と軽視しない

措置命令が出る度に、事業者は自らの問題として受け止め、真摯に向き合うべきだ。ここで最も避けたいのは、「自社は事業規模が大きくないから目を付けられる可能性は低いだろう」と決めつけて、軽視してしまうことである。

「一般的に、予防効果から、事業者の市場規模はある程度考慮されるのではと考えていますが、小規模の事業者であれば問題とされないという訳ではありません。確約計画が認定されたとしても、違反があったこと自体は公表されてしまいますので、事業者として重要な時期にこのような公表が行われると、顧客からの信頼を失墜させる恐れもあります。基本中の基本ですが、表示を正しく運用する事が重要です」

今回は、『No.1』や『国内初』という表示とは関係ない事例を紹介したが、全く無関係という訳ではない。消費者庁が調査を実施する際は、指摘のあった表示だけでなく掲載されている広告を隅々まで確認する。指摘を受けた表示が適法と判断されても、No.1表示に不備があれば、No.1で指摘を受ける事もある。反面教師として、今回の件を活用してみてはいかがだろうか。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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