渡辺弁護士へのインタビュー「事業者が講ずべきNo.1表示に必要な競合相手の選び方」

事業者が講ずべきNo.1表示に必要な競合相手の選び方

2026年06月02日

弁護士プロフィール

光和総合法律事務所

渡辺 大祐 弁護士

わたなべ だいすけ

略歴

渡辺大祐弁護士(第一東京弁護士会)
https://www.kohwa.or.jp/wp/members/2190/

景品表示法に関するセミナー・講演を精力的に行い、書籍を多数制作する景品表示法に精通している弁護士。公正取引委員会に審査専門官(主査)として出向後、消費者庁表示対策課において景品・表示調査官として実際の事件執行業務を行っただけでなく、令和5年改正景表法の立案業務を担当。これらの経験から、消費者庁の視点を踏まえて表示を評価し、クライアントにリーガルアドバイスを提供することも出来る。また上級食品表示診断士の資格もあり、食品業界の表示に対して特に精通している。

執筆

『Q&A BtoCビジネスと企業の法実務対応 消費者庁所管主要9法令から理解する』(有斐閣:2026年5月)
『ビジネスを促進する 景表法の道標 ~事例から読み説き導き出す解~』(共著)(第一法規:2025年7月)
『実務の勘所をおさえる 景品表示法重要判例・命令』(共著)(中央経済社:2025年3月)
『法律要件から導く論点整理 景品表示法の実務』(第一法規:2023年12月)
『逐条解説 令和5年改正景品表示法 確約手続の導入など』(共著)(商事法務:2023年12月)
『景品表示法[第6版]』(共著)(商事法務:2021年6月)

セミナー実績

「近時の動向を踏まえた消費者関連法実務と企業のコンプライアンス ―第1回 景品表示法編―」((株)FRONTEO:2026年7月)
「BtoCビジネスの2026年最新動向を解説!消契法・景表法・公益通報者保護法の対応ポイント」(LegalOn Technologies:2026年6月)
「90分でキャッチアップ!消費者契約法・景品表示法の実務ポイントと近時のトレンド」(弁護士ドットコム(株):2026年5月)
「広告表示の基礎的知識(景品表示法)」((公社)日本通信販売協会:2026年5月)
「二重価格表示に関する景品表示法解説講座」((公財)公正取引協会:2026年3月)
「SNS をはじめとしたインターネット取引に関する相談対応に必要な法律知識」(独立行政法人国民生活センター:2026年2月)

メディア出演

「水迫畜産不適正表示 問題発覚から2か月 自治体は補償求めるも「極めて不十分」」(MBC南日本放送:2026年5月8日)
「カットモデルAI波紋 画像生成 客「うそつかれた気分」」(讀賣新聞社:2025年10月14日)
「味の素などステマ疑い 冷凍宅配2社 消費者庁、改善計画認定」(日本経済新聞社:2025年9月20日)
「追跡“紅麹サプリ”〜健康ブームの死角に迫る〜」(NHKスペシャル:2024年6月9日)
「その広告 本当?健康食品の表示 ここをチェック」(NHKサタデーウォッチ9:2024年6月8日)

本文

No.1表示や国内初などの表示をする際、競合調査を実施して表示を掲載するケースもある。この時、競合相手の選び方に対する考え方は弁護士によっても見解が異なる。どのような選び方をするのが最適解か。

今回は競合相手の選び方について、景品表示法のセミナーを多数担当している渡辺弁護士に話を聞いた。

最終的な表示の責任の所在

表示の最終的な責任を負うのは誰か。当然ながら広告を出す事業者(広告主)だ。調査会社が杜撰な調査結果を提示したとしても、消費者庁の調査を受ける事になるのは、その調査結果に基づいて広告を展開する事業者だ。

「景品表示法では、不当表示の責任を負うのは、表示内容の決定に関与した事業者とされる広告主です。調査会社による調査が問題ないように見えたとしても、調査が不十分であって表示と実体が異なる事が明らかになった場合には、当該事業者(広告主)自身がその調査会社を選んで依頼している以上、消費者庁に対して『調査会社の責任です』と主張する事は難しいでしょう」

このように、基本的には調査会社に責任を負わせる事は難しい。その一方で調査会社と民事訴訟で争う余地はある。

「景品表示法上、不当表示の責任を負うのは基本的には事業者(広告主)となりますが、そのような不当表示をした原因が調査会社による杜撰な調査にある場合には、当該事業者(広告主)が調査会社に対して民事上の責任を追及する可能性はあるかもしれません」

勿論、広告主が調査会社に対してこのような民事上の責任を追及しようとしても、実際には、どのような損害が発生しているのかといった点や、その損害は調査会社の杜撰な調査によるものであると言えるのかといった、いわゆる因果関係の点も争点になり得る。そのため立証は難しく、民事訴訟を起こしても調査会社に責任を問えないケースも十分考えられる。表示で何か指摘を受けた場合には調査会社に責任を負わせればよいと軽々に考えるのではなく、No.1表示をトラブルなく掲載するためにはどのような工夫が必要なのかを考えておくと良いだろう。

適切に調査を進めるためにできること

事業者はNo.1表示を進める際に、どのようにすればトラブルを回避して適切な表示を掲載出来るのか。
渡辺弁護士は、No.1表示を掲載するにあたり、調査会社と事前にすり合わせをするなどして、「調査のプロトコルを適切に作成する事」がとても重要になると説明している。

例えば、

  • ・どのような分野でのNo.1か
  • ・調査対象を誰にするか(調査商品を何にするか)
  • ・調査方法をどうするか

といった点は、調査前に事業者自身が把握し、検討しておく事が重要だ。

「No.1はまさに最上級であることを示す表示であるため、「具体的にどの分野の、どのような商品群におけるNo.1であるのか」というカテゴリーの視点は重要であると思います。このような発想がない状態でNo.1表示をしようとすると、調査範囲が狭すぎたり、あるいは広すぎたりもしてしまいますし、適切なカテゴリーにおけるNo.1表示に足り得るのかという点で懸念が生じる恐れがあります。」

調査会社に対して競合相手の選定を依頼すべきか、それとも事業者(広告主)自身で行うべきか。これについて一概には明言出来ないが、いずれにせよ、事業者(広告主)は、不当表示の対象となり得るのは自身であるとの認識のもと、責任を持って競合相手(調査の対象範囲)を選定する事が重要だと渡辺弁護士は説明する。

「調査会社は調査の手法自体は事業者(広告主)よりも熟知しているとは思いますが、その業界に対して専門的な知見があるかと言われると、必ずしもそうではありません。事業者(広告主)がNo.1表示をするに当たり、競合商品として想定されるのはどの会社のどのような商品であるのかについて理解をしているのは、基本的には事業者(広告主)であると思います。」

網羅的に競合他社、競合商品を抽出する事は難しいかもしれない。だが、例えば、価格比較サイトで類似商品をリストアップしたり、必要であれば調査会社から売上などのデータを購入して分析するなど、事業者として出来る事は必ずある。大切なのは、調査会社に全て任せきりにするのではなく、調査過程に事業者が積極的に携わる姿勢だ。

丸投げではなくコミュニケーションも

調査会社に依頼する際に、コミュニケーションを適切に取る事も当然重要だと渡辺弁護士は説明する。

「No.1表示では、事業者(広告主)が具体的にどのようなカテゴリーにおいてのNo.1を表示したいのかによって、適切な調査方法が変わると思います。そのため、調査会社に任せきりにせず、事業者側も調査内容、調査対象(調査範囲)をきちんと把握しておく事が大切です。日頃から調査会社と密にやり取りしていれば、調査に問題がある場合にも気づきやすくなります。重要なのは、事業者が主体的にコミュニケーションを取る事です」

調査会社が調査のプロだからと言って、概要だけ伝えて終わりではもったいない。
事業者としてなぜその表示が必要なのか、なぜそのような調査となるのか、熱意を持って表示の思いを伝えておく事も重要だ。

No.1表示は訴求力の高い表示である一方で、調査過程で何らかの問題を抱えていると失敗してしまう事も考えられる。本当に問題のない表示かどうかを判断するためにも、調査会社と連携を取り、適切な表示の運用を心掛ける事が重要だ。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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