弁護士プロフィール
丸の内五番街法律事務所
辻󠄀本 奈保弁護士
つじもと なお
大手飲食事業会社と中央官庁で活躍した経験を活かし、クライアントのニーズに合わせたサポートが可能。
広告・表示(景品表示法、薬機法、食品表示法等)、飲食・食品事業関連に強みを持ち、事業者が抱えている問題に対し寄り添ったアドバイスを行う。
消費者庁調査官や大手企業での組織内弁護士の経験を活かし、辻󠄀本奈保法律事務所を開設。「クライアントのニーズに応え、期待を上回ること」をモットーに、事業者が納得する解決策を提案。
2025年2月に「辻本奈保法律事務所」から「丸の内五番街法律事務所」へ事務所名変更
関連書籍
- 『景品表示法(第6版)』(共著、商事法務)(2021年6月)
- Thomson Reuters Practical Law Global “Employees: Cross-Border Private Acquisitions (Japan)” (共著)(2022年3月)
- 『労務管理のエキスパートガイド-事例でみる職場環境における配慮と問題行動への対処-』(共著、新日本法規出版)(2023年10月)
- 『遺言だけじゃない!?弁護士だからできる 生前の相続対策のすべて』(共著、第一法規)(2024年2月)
本文No.1や初表示に関する直近1年以内での裁判事例を解説して欲しい。過去の裁判記録があれば、記事にして欲しい。など、未来トレンド研究機構にはNo.1表示や初に関する裁判事例に興味関心を持つ事業者も多い。
しかし、過去の裁判事例を調べてもNo.1や初に関して直接的に判断を示した裁判事例は2025年時点では存在しないとみられる。裁判よりも重要な事について、事業者の表示をチェックしていた元消費者庁調査官、辻本弁護士に取材を行った。
裁判で争う価値
なぜ裁判で争う事例が少ないのか。その理由は措置命令にあった。
「消費者庁が調査を行う場合、事業者への連絡前に事前調査を行うのはもちろん、事業者からの主張や提出資料等も精査するなど綿密な調査を実施します。当然ながら、行政当局も杜撰な調査を元に措置命令を発出する訳ではないため…裁判をしても覆すのが難しいと感じるのはその通りだと思います」(辻󠄀本弁護士)
特に表示している期間や、表示内容自体の事実を覆す事は難しい。それでも過去に景品表示法で事業者が争った事例もある。
「No.1の事例ではありませんが、過去の裁判の中では、事業者がアンケートの結果を基に争ったケースがあります。その表示を見た消費者がどのように感じるか、1つの基準を設定することは難しく、アンケートを拠り所にするケースもあるかと思いますが、実際にアンケートによって裁判で決着がつくというものでもないのが現状です。」(辻󠄀本弁護士)
No.1や初表示で裁判を行ったとしても、措置命令が出た時点で企業へのダメージは大きい。仮に裁判に勝ったとしても、信用回復へかなりの時間を要すると考えて良いだろう。
裁判よりも重要な事
辻本弁護士によれば、裁判よりも重要な事があると指摘する。
「消費者庁の調査が入った事業者に対して全て措置命令が発出される訳ではありません。調査の結果、次回から気を付けるように注意、指導で留まる件数も多くあります。措置命令が出た後に裁判で争うことを前提にするのではなく、その前に、注意・指導に留めてもらうよう目指すことも選択肢となります。また、最近では、確約手続の運用も開始されましたので、これも視野に入れる必要があると思います」(辻󠄀本弁護士)
実際に令和6年度の消費者庁のデータを見ると、措置命令に至ったケースは26件に対し、339件の事例に指導が入っている。
「消費者庁が調査を行うのにもリソースは限られています。そのため、措置命令を出すべきと思われる事案について事前に調査を実施して対象を絞り、その後の事業者の対応もふまえて措置命令を出す事もありますが、次回以降に気を付けるよう指導で留まるケースも多いです。最初から裁判で全面的に争う姿勢を模索するよりも、万が一消費者庁からの調査が入ってしまった時に、指導で留める事が出来るのかという点も重要になります」(辻󠄀本弁護士)
調査官の心証をよくするために出来る事
では、指導で留めるためにどのような対策をすれば良いのか。当然、「これをすれば絶対に大丈夫」という対策はないが、対策をする際のコツがあると辻本弁護士は解説する。
「調査開始後、事業者の初期対応で、この事業者さんは景品表示法で定められた対策を適切に実施しているかどうかをすぐに看破する事が出来るケースもありました。心証という側面もあるかもしれませんが、まずは、『景品表示法に則って普段から適切な対策をしています』と示す事も重要なことだと思います」(辻󠄀本弁護士)
具体的に何をすれば良いのか。これまで景品表示法に強い弁護士が異口同音に指摘する、「管理措置指針」の対策だ。
「管理措置指針はある程度抽象的な部分もあるので、これを全て行っていれば絶対に大丈夫という訳でもないかしれませんが、管理措置指針に則った対策をしていれば、景品表示法違反となるリスクをかなり抑えられることは間違いないと思います。管理措置指針に則り、必要な措置を講じることが事業者に義務付けられており、同指針の7つの項目を実施しているかどうかも調査官は精査しているので、まずはこうした体制を構築出来ているか再確認する事が重要です」(辻󠄀本弁護士)
管理措置指針に沿った対策を日頃から取っているかどうか、調査官から見ればすぐに分かる。
「例えば体制がしっかり整っていれば、不実証広告規制が適用される資料提出期間である15日以内に必要書類を提出する事が出来ます。勿論当時の担当者との連絡等が必要になる場合もあるかもしれませんが、少なくとも書類が見つからないということはなくなるはずです。一般的に、提出資料として、根拠となる調査資料がA4用紙一枚で足りるという事はなく、大量の資料準備が必要になるケースも多いと思います」(辻󠄀本弁護士)
管理措置指針には、No.1表示に必要な根拠資料を管理しておくように定めている項目がある。迅速に提出出来ないという事は、適切に管理をしていないという意味となり、結果的に「この事業者は管理措置指針についてしっかりしていないな」と初動で露呈してしまう。その結果、調査を行う際に厳しく確認していく可能性も高くなる。
「調査は人が行うものになりますが、景品表示法は、一般消費者がどう感じるかという観点が重要なので、調査官がどう感じるかという事も意識して対策を心がけておくと良いでしょう」(辻󠄀本弁護士)
まとめ
裁判事例を確認し、消費者庁がどのような視点で表示を見ていたかを憂慮するよりも、裁判に発展しない仕組みを平時から構築する事が重要だ。 管理措置指針に従って適切に運用している事を証明出来れば、措置命令を防ぎ注意、指導で留められる可能性がある。
また調査が入った時に景品表示法に強い弁護士と連携していれば、迅速に対応してもらう事も可能だ。
管理措置指針がしっかり適切に行われているか、景品表示法に強い弁護士と連携が取れているのか。裁判事例を確認する前に、一度この2つの項目について確認しておくと良いだろう。
未来トレンド研究機構では、上記2つのテーマに関しても記事を作成している。こちらも併せて一読頂きたい。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
その他の弁護士インタビュー
-
神田弁護士へのインタビュー「消費者庁が措置事例に至るまでに実施する調査とは」 -
神田弁護士へのインタビュー「景表法対策は専門弁護士に相談した方が良い理由」 -
籔内俊輔弁護士へのインタビュー「消費者庁が注視する「二重価格」

03-6801-6836
info@miraitrend.com


2025年12月18日





info@miraitrend.com
info@miraitrend.com