HR領域における生成AIの可能性

インタビュー日 2024年10月7日

本インタビューの目的

本インタビューは、海外調査などで多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修・実施しております。

海外進出や海外への事業展開などを検討されている皆様のお力になれればと思い、各企業様へ海外における最新トレンド(生成AI・ブロックチェーンなど)に対する考え方や実績など、ここにしかない情報をインタビュー形式でご紹介しております。

従来の業務プロセスを一新し、あらゆるビジネスに破壊的な変化をもたらす生成AI。
OpenAI社が2022年12月に「ChatGPT」のサービスを提供開始してから、全世界で1億ユーザーを達成するまでに要した期間はわずか2か月であった。生成AI技術は急速に社会に普及しており、様々な領域で既に生成AIが使われている。
その中で特に注目すべきがHR(Human Resource: 人事をはじめとした人的資源に関わる業務)領域だ。
HR×生成AI領域の最新動向や今後の展望について、人事向けの生成AIサービスを提供している株式会社Algomatic Worksの高橋氏に話を聞いた。

株式会社Algomatic Works
COO/株式会社Algomatic 執行役員 高橋 椋一

東京工業大学大学院修了後、株式会社NTTデータにてAI・ロボティクス技術の研究開発に携わる。
その後、ソフトバンク株式会社にて社内ベンチャーの立ち上げを事業責任者として務めた後、株式会社グッドパッチを経て、2023年7月にAlgomaticに入社。2024年5月より、Algomatic Worksの立ち上げにCOOとして携わる。

人事領域での生成AI活用は米国・中国がリード

「HR領域の中でも特に生成AI技術の活用が進んでいるのは採用、従業員支援、労務の3つの領域です。米国や中国では実際に、人間の代わりに一次面接を自動で行なう『AI面接官』や、スカウトメールを自動送信する『AIリクルーター』、社員のスキル開発を支援する『AIキャリアアドバイザー』、そして労務関連の業務を代理で行う『労務AIエージェント』が普及しつつあります」

生成AIを活用した人事向けのサービスは、海外で既に実用化されており、大手企業も次々に導入を進めているという。一方で、海外で流行しているAIツールをそのまま日本国内で利用すれば良い、という訳ではないようだ。

「国ごとの社会情勢や雇用慣行により、求められるサービスは異なります。例えば、中国で新卒採用向けの『AI面接官』が急速に普及している背景には、圧倒的な買い手市場があります。大学卒業者が年間1000万人の大台を突破している一方、企業側では採用計画の縮小が相次いでいます。そのため、1つの求人に対して数多くの大学新卒者が殺到するような状況であり、これがAIによる面接効率化を後押ししていると考えられます。一方、売り手市場の日本では、『AI面接官』の普及には一定の時間がかかると予測しています」

さらに、転職市場のエコシステムの違いも顕著だ。

「米国ではLinkedIn(※)などのプラットフォーム上で求職者情報がオープンになっており、スカウトを自動送信する『AIリクルーター』ツールが生まれやすい土壌があります。一方、国内ではクローズドな転職媒体が主流となっており、海外サービスをそのまま利用しづらい状況です。日本国内のエコシステムにあわせた生成AIサービスが求められています」

※LinkedInとは

ビジネス特化型SNS。10億人以上が利用し、ユーザーはプロフィールを作成し、学歴や職歴、スキルや自己アピール文の掲載が可能。海外ではユーザー同士でつながりを持ち、業務活動や職探し、ネットワーキングツールとして活用されているが、日本での普及率は海外に比べ低い水準にある。

HR×生成AI領域はアジアに活路あり

Algomaticは日本国内のみに目を向けて事業を展開している訳ではない。グローバル市場にも目を向けている。
「特に注目しているマーケットはアジア圏です。特に東南アジアでは、各国の言語に対応した生成AIモデルの開発がまだ進んでおりません。日本が東南アジアの生成AI領域をリードできる余地が残っています」
また、欧州でのAI規制も日本にとっては追い風になるという。
「2024年5月に成立した欧州の『AI規制法』では、採用の自動化や雇用管理などにおける生成AI活用に一定のハードルが課されています。一方、日本ではイノベーション促進とリスク緩和のバランスをとったルール整備が進んでおり、採用や労務領域でも生成AIサービスの開発が可能です。日本がHR×生成AI領域をグローバルでリードできる可能性があります」

生成AIを効果的に使うために知るべきこと

Algomaticでは、生成AIの社内導入をサポートする「Algomatic AI Transformation」を提供しており、生成AIの活用コンサルティングや受託開発も行っている。生成AIの社内導入にあたっては、事業者自身が注意すべき点もあるとの事だ。

「生成AIサービスには、大きく分けての二つの方向性があります。一つが、AIが業務を1から10までやってくれる『自動化(Automation)』の方向性です。そしてもう一つが、AIが人間の作業の”お手伝い”をする『強化(Augment)』 の方向性です。
たとえば、採用の一次面接をAIが全て行うケースは『自動化』、一方で面接官の補助として情報収集や分析を行うのが『強化』の方向性です。
AI主体で業務を自動化することが理想なのか、人間の作業をAIに強化してもらうのが理想なのか、各社ごとの生成AI導入のゴールを明確にすることが重要です」

DX化が推進された際にも、経営層や導入部署でDX化の目的が明確にならず、中身の伴わない失敗事例がたびたび取り沙汰された。生成AIも同様に、導入のゴールを明確にしておかなければ同様のミスが考えられる。事業者として生成AIのできることを理解し、経営層と導入部署で目的を揃えておく必要があるだろう。

株式会社Algomatic

https://algomatic.jp/
Algomaticは、DMMから20億円の投資を受けて設立された、生成AIスタートアップ。スタートアップスタジオ型の組織体系を採用し、法人向けチャットAIツールの「シゴラクAI」やAIコンサルティング・受託開発サービス「AI Transformation(AX)」、独自の翻訳エンジンを活用した「DMM動画翻訳」などを提供する。またグループ会社として、HR×生成AI領域に特化した子会社である「株式会社Algoamtic Works」を設立している。

(記者 山口 晃平)

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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