柳澤美佳弁護へのインタビュー「万が一に備えた広告審査体制」

2024年10月02日

元インハウス弁護士が伝授する『万が一に備えた広告審査体制』とは?

インタビュー日 2024年8月20日

「近時の消費者庁の措置命令において、No.1表記に対する事案が増えているので出来れば避けた方が良い」

有識者がこのような見解を述べる機会が多くなったが、本当にNo.1表記は避けるべきなのか。選択肢から外すという考え方も一つの方法だが、行き過ぎた対策にも感じられる。そこで、今回は「消費者庁への問い合わせ方法」についてアドバイスを頂いた、WINGS法律事務所の柳澤弁護士にお話を伺った。

WINGS 法律事務所
https://wings-law.net/message/

柳澤弁護士が「正義の実現」を目指してWINGS法律事務所を設立。ビジネス法務の現場で培った経験を活かし、様々な事業者の問題を解決する。「景品表示法の基礎を踏まえた委縮しない広告制作と広告チェック体制構築のポイント」や、「女子中高生向けキャリア講座『弁護士という生き方』など、多岐に渡るセミナー講師を担当する。

No.1表記の運用方法

No.1表記を広告手法として活用するのであれば、「どのようなNo.1表記であれば適切か」についての知識が必要不可欠だ。消費者庁は、①客観的な調査に基づき、②調査結果を正確かつ適正に引用しているものであれば、No.1表記を行っても問題ないとしている。

しかし、客観的な調査(①)を行った場合であったとしても、広告の書き方次第では(②)、違法なNo.1表記になってしまうこともある。例えば、エステの顧客でない一般消費者に対するイメージ調査で、“満足できそう”という質問でのNo.1の結果を得た場合に、「顧客満足度No.1」と表現した場合、調査結果を正確かつ適正に引用しているとは言えない(そもそも客観的な調査と言えない、とも考えられる)。調査結果はあくまで“満足できそうというイメージ”におけるNo.1なので、“顧客満足度”でNo.1と謳うことはできない。No.1表示に対する近時の措置命令はこのようなパターンに対するものが多いようだ。

また、注釈の書き方にも注意しなければならない。すなわち、調査結果の正確かつ適正な引用(②)であるためには、No.1表示は直近の調査結果に基づいて表示することが原則だ。

「例えば、A社が、2024年6月の調査時に顧客満足度No.1であったとしても、半年後にはNo.1でなくなってしまうこともあります。つまり、同年12月に、A社ではなくB社が顧客満足度No.1となったにも関わらずA社がNo.1表示を継続している場合、注釈で「2024年6月時点」と分かりやすく表記されていなければ、消費者は広告の時点でA社がNo.1と受け止めるため、A社のNo.1表示が不当表示と判断される可能性も考えられます」(柳澤弁護士)

他にも、調査結果の正確かつ適正な引用(②)と言えるための要件(例:No.1表示の対象となる商品等の範囲の記載方法)を知識として知っていれば、消費者庁から違法と疑われないよう広告の精査が可能だ。消費者庁は不当表示の疑いのあるものを調査するのであって、全ての表記を違法性のあるものと決めつけている訳ではない。つまり必要以上に怖れる必要はない。その点を誤解せず、“正しく怖れる”という観点が重要だ。

理想の広告審査体制

No.1表記を目指す事業者であれば、景表法を適切に運用するための正しい体制を構築しておくことも不可欠である。そして、この体制構築のためにぜひとも参考として頂きたいものがあると柳澤弁護士は説明する。それは、消費者庁が発表している「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」だ。

この指針では、景表法第26条第1項に基づく事業者の義務である、不当表示(と過大な景品)を防止するために事業者が講ずべき措置について、大きく分けて7つの項目があると説明している。7つの項目は以下の通り。

  1. 景品表示法の考え方の周知・啓発
  2. 法令遵守の方針等の明確化
  3. 表示等に関する情報の確認
  4. 表示等に関する情報の共有
  5. 表示等を管理するための担当者等を定めること
  6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採る
  7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

「管理措置」とも呼ばれるもので、消費者庁も「事業者に課している義務」という認識だ。柳澤弁護士はこの7つの項目に書かれた対策こそが広告審査体制の構築及び景表法の運用では非常に重要であると説明する。

「管理措置は消費者庁から出ている事業者が景品表示法を適法に運用していくための基本的な考え方です。同法第26条第1項に基づき、どの事業者も必ず実施しなければならない義務となっています」

1つずつ確認をしていけば、実は、不完全であったとしても事業者が既に実施しているものも多く、実施ハードルがそこまで高いとは言えない。しかし、時間をかけて専門家と協力しなければ、運用がうまくいかないものが多いのも事実だ。

万が一調査が入った時は措置命令の前で食い止める対策を考える

管理措置に書かれている指針のうち1から6までの措置を実施すれば、消費者庁の調査対象となるリスクを下げることが出来るだろう。しかし、適切に運用を心がけていたとしても、競合他社や消費者からの指摘により消費者庁の調査が入る場合もある。消費者庁から調査が入った時に(上記の7の措置に関係する対策として)事業者自身がどのような対応を取るかも考えておかなければならない。

「No.1表記が消費者庁の調査対象となった場合、合理的根拠を適切に保管していれば、消費者庁に提示できます。そして合理的根拠に基づき正確かつ適正な引用していることが分かれば、消費者庁から措置命令が出ることはありません」

なお、消費者庁が不当表示の疑いがあるとして事業者に対し調査を実施する場合、不当表示と疑う確たる証拠があるのだろうと誤解されがちだが、決してそうではないと柳澤弁護士は指摘する。

「すべてのケースが該当する訳ではありませんが、情報提供を受けて消費者庁が任意調査を実施する場合、明確な裏付け証拠を持たずに事業者に調査を実施することもあります。このような場合に適切な根拠資料と管理上の措置に沿った社内の運用体制を示せば「お咎め無し」で済むものも、事業者が管理上の措置を十分に講じていない場合、消費者庁の対象表示への疑いが強まるということも十分考えられます」

消費者庁の調査が入った場合、事業者自身で対応をすることだけは避けた方が良いとのこと。

「事業者がご自身だけで対応されようとする場合、最初から諦めてしまう事態にも陥りかねませんが、場合により、調査が入ってから試験を行い、合理的根拠を提出することも出来なくはありません。一方、自社で保有する試験結果を過大に評価し、重大な見落としに気づかずに結果として措置命令に繋がることも考えられます。このような事態を防ぐため専門家の意見が必要不可欠です。任意調査の段階で専門家に相談すれば、どのような資料を提出すべきか、追加でできる試験はないのか、消費者庁が気にしているポイントはどこなのか等を入念に検討し、事業者にとって最悪の事態といえる措置命令(及びその後に続く課徴金納付命令)を回避するために何が出来るかを、事業者と一緒に検討出来ます」(柳澤弁護士)

景表法改正で新たに導入される「確約手続き」では、事業者が措置命令を回避できる代わりに、表記等の改善を実施することを約束するという救済措置であるが、当該手続きを利用したことが公表される。事業者名の公表リスクを避けたい場合は、「行政指導」を目指すのが理想、と柳澤弁護士は説明する。

「消費者庁の調査が入ったが不当表示とは認められなかった、という“お咎め無し”が理想ですが、できれば企業名の公表を回避できる「行政指導」で済ませるのが理想です。万が一消費者庁の調査が入った場合は、“お咎め無し”や“行政指導”を目指してどこまでできるか、入念な対応をしていくことが重要です」

行政指導に留めるためには、事業者自身が景表法を適切に運用していることをアピールできると良い。アピール材料として先述した管理措置指針を常日頃から行なっていることが重要だ。適切な運用を実施していることをアピールするため、消費者庁への対処方法を熟知している専門家との連携が必要不可欠だ。その結果、万が一の事態に陥ったとしても最悪の事態を回避できるのだ。

管理措置は事業者を守る対策でもある

仮に消費者庁の調査が入り、景表法の適切な運用を行っていることを事業者がアピールしたい場合、どのような対策を行えば良いのだろうか。柳澤弁護士によれば、「管理措置」指針を参考にした体制構築が最も重要と説明する。

「任意調査で消費者庁は、事業者が講じている管理措置の説明を求めます。事業者が具体的に説明できなければ、杜撰な運用をしている事業者として、不当表示を行っているだろうとの推認が働きやすくなる可能性があります。適切な管理措置を講じていれば、万一措置命令を受けたとしても課徴金納付命令は免れられる可能性もあります。管理措置に則った適切な運用を心がけていれば、そもそも消費者庁から不当表示を疑われるリスクを減らすことが出来るでしょう」

調査が入ったタイミングで管理措置を何となく説明すれば良いと考える事業者もいるが、付け焼き刃の対策はすぐに見破られてしまうとのこと。何も対策を実施していないのであれば、早めに管理措置の7つの項目を検討しておくことが重要だ。自社で対策を講じた対策が本当に適しているのか評価してもらいたい場合は意見を聞くと良いだろう。

知識を最優先に構築を

管理措置の項目は7つ。どれもが重要そうに思える。この中でも最も優先すべき項目は何かと柳澤弁護士に尋ねたところ「1.景品表示法の考え方の周知・啓発」と説明する。実は、不当表示を避けるための具体策としては「3.表示等に関する情報の確認」が本来もっとも大切なのだが、情報確認にいたる前の“一丁目一番地”が、景表法という法律を知ることだという。

「事業者による確信犯的なケースもない訳ではないですが、現場の担当者が景表法を正しく理解せずに広告を制作した結果、不当表示として措置命令の対象とされたというケースが多いです。よくみられる誤解が、打消し表示(表示内容の例外要件)は“どこかにチョロっと小さく書けば良い”という広告現場の考え方です。消費者庁は、打消し表示は消費者が理解できなければ記載されていても無意味と考えますので、上記考え方は危険なのです。法務担当以外の担当者も、どんな表示に措置命令が出されるのかという運用を含め、景表法の最低限の知識を身につけておく必要があると思います」

法務などの特定の部署に任せていると、広告制作部門が景表法を無視した違法な広告を提案してしまうケースや、原材料が変わるなど何らかの事情で表示変更をしなければならい状況を見落としてしまうこともある。

「事業者全体で景表法を正しく理解していれば、いわゆる合理的根拠の基準などに沿った運用が可能です。“攻めの広告”を作るためにも、まずは、広告を作る側の担当者が、景表法はどのような法律であり、具体的にどのような運用が求められるかを知る必要がありそうです。」(柳澤弁護士)

事業者が運用方針に悩んでいるのであれば、今回紹介した考え方を参考にしても良いだろう。

まとめ

事業者が適切な広告運用を実施するためには、今回紹介した管理措置指針が重要な対策となる。適切な運用を実施していれば、顧客満足度やステマ規制といった消費者庁が厳しく注目している表記であっても適切な運用が出来るだろう。

もちろん、適切な表記を心がけたとしても消費者の調査が絶対に入らないとは言い切れない。万が一調査が入ったとしても「適切な表記だった」と評価される必要がある。そのためにも柳澤弁護士のような企業法務・広告運用に精通している弁護士や専門家と精通し、管理措置に沿った対策が必要不可欠だ。

柳澤美佳弁護士 
https://wings-law.net/message/

10年の商社勤務を経て2006年より弁護士として活動。2社でのインハウス弁護士として活躍した経験を持つ。「正義の実現の一翼を担う」をモットーに、ビジネス法務の現場で培った経験を活かし、事業者に寄り添った最適なアドバイスを提供する。

(記者 山口 晃平)

㈱未来トレンド研究機構の方針

㈱未来トレンド研究機構では、調査会社(累計25年のキャリア・実績)としての豊富な経験を活かして、今後も「No.1」検証調査、「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査に関する受託業務を本格的に展開していく。クライアント企業のお悩みや課題、不安を一つ一つ解消し、「No.1」検証調査や「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査事業の可能性を広げていく方針である。引き続き、「No.1」検証調査、「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査それぞれで300件/年の受注を目指していく方針である。

㈱未来トレンド研究機構における「No.1」検証調査 受託業務の強み・ポイント

1)累計1000件(テーマ)以上、年間平均100件(テーマ)/年 の受託件数
2)No.1(検証)調査は、30年以上のキャリアを持つベテラン・リサーチャを中心に徹底調査 ※シェアNo.1、販売数量実績No.1など
3)レポート体制
・インタビュー・ヒアリングチーム
・アシスタント
・テープ起こしスタッフ
・レポート・スタッフ
4)プロのコンシェルジュが無料相談!
5)徹底した事前相談対応(無料)!
6)丁寧な調査・ヒアリング!
7)記録技術(会話速記)/テープ起こし(レポート
8)レポート品質UPに対する強い意識!
9)フォロー・サポートはエンドレスに!
10)ご依頼頂いた内容の守秘義務は徹底致します!
11)累計25年以上の豊富な調査キャリア
12)「No.1調査」×B2B分野(メガトレンド分野)では業界No.1
13)常に調査記録をバックアップ・テープ起こし(会話速記を徹底化)

㈱未来トレンド研究機構における「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査 受託業務の強み・ポイント

1)累計700件(テーマ)以上、年間平均100件(テーマ)/年 の受託件数
2)初(世界・アジア・日本・業界)検証調査は、30年以上のキャリアを持つベテラン・リサーチャを中心に徹底調査 ※世界初、アジア初、日本初、業界初など
3)レポート体制
・インタビュー・ヒアリングチーム
・アシスタント
・テープ起こしスタッフ
・レポート・スタッフ
・知財専門スタッフ
4)プロのコンシェルジュが無料相談!
5)徹底した事前相談対応(無料)!
6)丁寧な調査・ヒアリング!
7)記録技術(会話速記)/テープ起こし(レポート
8)レポート品質UPに対する強い意識!
9)フォロー・サポートはエンドレスに!
10)ご依頼頂いた内容の守秘義務は徹底致します!
11)累計25年以上の豊富な調査キャリア
12)「初(世界・アジア・日本・業界)調査」×B2B分野(メガトレンド分野)では業界No.1
13)常に調査記録をバックアップ・テープ起こし(会話速記を徹底化)

(個別相談窓口)

株式会社 未来トレンド研究機構 「No.1」検証調査 業務担当

問い合わせ・相談先 E-mail info@miraitrend.com
問い合わせ・相談先 TEL 03-6801-6836

【会社概要】

会社名 株式会社 未来トレンド研究機構
https://www.espers.co.jp
所在地 東京都千代田区九段南一丁目5番6号 りそな九段ビル5階 KSフロア
設立 1999年8月19日
代表者 代表取締役 村岡 征晃(むらおか まさてる)
事業内容 (世界初、アジア初、日本初、業界初)検証調査、No.1(検証)調査、海外調査、競合調査、未来予測のご用命は”未来トレンド研究機構(略称:未来トレンド)”へ!

【未来トレンド研究機構 中核サービス】以下5つのサービス↓↓↓

  • No.1<検証>調査Ⓡ<商標登録 第6763351号> ※No.1調査、ナンバーワン調査(年間売上・販売数量実績<累計or年間>・シェア・伸び率など)
    https://espers.co.jp/no-1/
  • 初(世界・アジア・日本・業界)<検証>調査Ⓡ<商標登録 第6763352号> ※世界初調査、アジア初調査、日本初調査、業界初調査
    https://espers.co.jp/first-research/
    (競合調査・公開調査・知財調査など)
  • 競合調査Ⓡ<商標登録 第6763354号>
    https://espers.co.jp/competitor/
    (SWOT分析・競合戦略分析・4P&3C分析など)
  • 海外調査Ⓡ<商標登録 第6763353号>
    https://espers.co.jp/global-research/
    (グローバル調査:主要プレイヤー・ベンダへのヒアリング調査/顕在&潜在ユーザーへのアンケート調査:パネルヒアリングなど)
  • %(パーセンテージ)調査、シェア調査、市場占有率調査Ⓡ<商標登録 第6800111号>
    (%調査、パーセンテージ調査、シェア調査、市場占有率調査など)

本件に関する報道関係からのお問い合わせ先

窓口 株式会社 未来トレンド研究機構 「No.1」検証調査 担当部門
TEL 03-6801-6836  FAX : 03-6801-6066
E-mail info@miraitrend.com

カテゴリー

その他のインタビュー

Pick Up!

  • マーケティング戦略のための市場調査・競合調査にお悩みなら
  • 完全独自インタビュー
  • 最先端市場の市場調査レポート