張﨑悦子弁護士インタビュー「適切なNo.1表記」

2024年05月14日

弁護士プロフィール

弁護士法人 直法律事務所

張﨑 悦子 弁護士

はりさき えつこ

略歴

弁護士法人 直法律事務所
張﨑悦子 東京弁護士会

https://nao-lawoffice.jp/lawyer/#a03

インハウスローヤーとしての経験を活かし、依頼者にベストな解決方法を提供。緻密なリサーチを武器にお客様の利益を最大化することを目指し、日々業務に取り組む。景表法だけでなく、企業法務からM&Aまであらゆる領域を柔軟に担当。

主な取り扱い分野

  • ベンチャー企業の法務相談
  • 新規事業の適法性リサーチ(民法、会社法、金融商品取引法、個人情報保護法、景表法、下請法、著作権法、各種業法など)
  • 契約書、利用規約、就業規則など各種規程のレビュー及び作成
  • ベンチャーファンド組成業務(契約書作成、登記、届出、組成に関するリサーチ、その他法的助言)
  • PEファンドに関する法的助言(契約書レビュー、セミナー講師)
  • 訴訟・紛争対応(企業間紛争、労働事件、証券会社における立替金請求事件など)
  • M&A法務(法務デューデリジェンス、各種契約書の作成、その他法的助言など)
本文

特集『弁護士法人 直法律事務所 張﨑悦子弁護士へのインタビュー』措置命令・調査対象リスクを減らすNo.1調査・初調査とは?

消費者庁が不当表示かを調査し、違法行為が認められた場合は措置命令を行う。措置命令措置が下れば課徴金納付、一般消費者の信用失墜等事業者へのペナルティは大きな物となる。このような事態を回避するために事業者は「適切な表記」を常日頃から心がけなければならない。措置命令の対象とならないよう企業法務の見直し・強化が必要だ。

今回は、あらゆる企業法務に精通している弁護士法人 直法律事務所に所属し、数多くの調査対応をしてきた張﨑悦子弁護士に話を聞いた。

1.景品表示法に則った適切な調査方法とは?

No.1、初の表記は消費者の購買行動に影響を与えるものだ。誤解を与えるような表記をすると、景品表示法違反に該当してしまう。そのため正しい表記で記載するためには客観的な事実に基づいた調査が必要だ。

張﨑弁護士によれば、「No.1、初の表記で調査対象となるものは、キャッチーな広告表記が多い。不適切な調査過程がそもそもの原因であることを理解しなければならない」とのこと。ここからは適切な表記のために、どのような点に注意すべきかについて順を追って確認していこう。

1)調査対象

調査を実施するにあたり、どの領域でのNo.1かを明示しておくことが重要だ。

売上高No.1と表記する場合、競合企業のデータを網羅的に照らし合わせ自社が本当に売上で1位かどうかを確認する必要がある。顧客満足度No.1であれば実際に商品を利用したことのある一般消費者対しての調査をしないと誤認が生まれる原因となる。

2)調査方法

「売上No.1」と表記したいのであれば、類似商品・サービスを展開している競合相手全社を対象に売上実績を調査するのが望ましい。しかし、競合相手の全社を対象にした調査は容易ではない。どの程度調べれば客観的に評価できるのか、張﨑弁護士によれば「網羅するために必要なデータは事例によって異なるため、これくらいという数値は存在しない。他の事例でどの程度調べれば良いか見当がつけば良いが、判断が難しい場合は弁護士に相談するのも1つの手」とのこと。

3)サンプル数の考え方

「顧客満足度1位」「◯◯食品No.1」といった表記は、利用者や一般消費者へのアンケート調査(イメージ調査)が必要になる。一定のサンプル数を集めなければ、客観的な調査を基づいた調査結果であるとは言えない。

サンプル数がどの程度あれば客観的に妥当なデータと言えるのか、「サンプル数が重要」「調査過程が重要」「サンプル数、調査過程どちらも重要」と有識者によって見解が異なる。統計学では一般的に400のサンプルがあれば妥当な調査結果であると言われているが、No.1調査でも同様のことが言えるのだろうか。

張﨑弁護士によれば、「No.1調査ではサンプル数よりもどのような属性に対し調査を実施したか根拠を示すことが重要」とのこと。レストランが「カップルが選ぶレストランNo.1」と表記するため、400組のカップルに対しアンケート調査を行ったとしよう。調査対象者が以下の3つのケースの場合、どのような印象を受けるだろうか。

(1)東京都港区に住む400組のカップル。

(2)千葉、埼玉、港区に住む400組のカップル。

(3)全国47都道府県に住む400組のカップル。

3つの調査はどれも統計学的に妥当とされる400のサンプル数だが、レストランが「カップルが選ぶレストラン全国No.1」と表記するとどうか。

(1)は港区エリアNo.1であれば妥当と判断できるが、全国と表記すると港区のレストランが有利な調査ではないかと感じてしまう。

(2)は、首都圏エリアNo.1であれば妥当と判断できるが、「全国」という表記に違和感を感じてしまう。

(3)は問題のように思えるが、満遍なく調査をした場合、1都道府県あたりのカップルは8組前後。1都道府県あたり100組程度調べていれば説得力がありそうだが、400組がそもそも少ないと感じるかもしれない。

サンプル数が統計学上問題ない場合でも、表記したい内容、エリア、対象者によって適切な数かどうかを判断しなければならないのだ。

サンプル数を適切にするだけでは十分な調査とは言えない。張﨑弁護士によれば、「サンプル数の設定も重要だが、調査時に使用する設問が恣意的な設問になっていないかどうかを判断することも重要」とのこと。

例えば、レストランの印象について質問する場合、質問を利用者に対して設定する場合であっても、「このレストランではSDGsへの取り組みなどを実施しています。Aの、印象は良かったですか?」と設定をすると、SDGsなどの社会的な問題に取り組んでいるAについて、利用した際の印象が悪い場合であっても、「印象が悪い」とは答えにくいため、回答者はどうしても「はい」と答えてしまう。No.1表記をするために恣意的に設定されたと解釈され、客観的な調査とは判断されない可能性がある。その点にも注意して制度設計をしておくと良いだろう。

2.措置命令の調査対象とならないために企業ができること

適切な調査結果を元に作成した広告が、消費者からのクレーム、競合会社が起こした社会問題を発端に消費者庁の調査対象になってしまうこともある。

調査対象にならないために、事業者に何ができるのか。張﨑弁護士に確認をしたところ、「自動車の交通違反と同じで、常に社内で危機意識を持つことが重要」とのことだ。

「他社も行っているのでうちも問題ないと思っていた」という主張は、当然消費者庁には通用しない。万が一調査対象となってしまったら事業者はどのような対策をするべきか。

張﨑弁護士によれば、「消費者庁は広告表示等について継続的な調査を行っているため、調査対象になってからできる対策はほぼ存在しない。日頃の業務から措置命令のリスクを考え、不当表示にならないように改善していくことが重要」とのこと。事業者は日頃の業務でどのような改善を行うべきかについて具体的にまとめてみた。

  • 業界のガイドラインを随時チェック
  • 措置命令が出た時は、報道資料を見て何が問題だったのかを確認
  • 担当者1名で表記を確認するのではなく複数名でチェック
  • 広告表示にNo.1表記を用いる場合は、どのような資料に基づく表記なのか裏付け資料がある

上記で紹介した対策は 、いずれもすぐにできる簡単な対策だ。景品表示法違反に該当するリスクを社内全体で認識し、日々社内で知見を蓄積することが重要だ。

景品表示法は広告のトレンドによって変化する。過去に問題のない表記が社会問題をきっかけに誤表記として解釈されてしまうこともある。

消費者庁の措置命令の傾向を理解すべく、企業法務担当者は日頃から情報をアップデートし続けることが重要だ。

張﨑弁護士によれば、「消費者庁が発表する報道発表資料を定期的にチェックしておくことで、どのような表記に問題あるのかを感覚的に掴むことができる」とのこと。ここで注意すべき点が、報道発表資料は難解な表現が多く登場することだ。理解が難しいと感じた時は消費者庁に問い合わせるか弁護士に意見を聞くと良いだろう。

社内で景品表示法に関するリスク、適切な調査を実施するための制度設計が共有されていれば、調査対象となるような不当表示を行ってしまう可能性を低くすることができる。とはいえ、何から始めて良いかわからない担当者もいるだろう。そのような時は、張﨑弁護士のような企業法務・調査対応に精通している弁護士に相談するのも1つの手だ。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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