弁護士プロフィール
弁護士法人GVA法律事務所
早崎智久 弁護士
はやさき ともひさ
本文薬用シャンプーなどは、化粧品と医薬品の間の商品「医薬部外品」に該当し、景品表示法だけではなく薬機法にも注意しなければならない。このような商品に対し、「初」「No.1」表示は可能なのか、今回は薬用シャンプーをテーマにして、医薬部外品のNo.1表示について対策を検討する。
本テーマについて、薬機法に精通している早崎弁護士に見解を求めた。
薬機法でNGなNo.1と良いNo.1
薬用シャンプーなどにおいて、No.1や初の表示を掲載する場合は注意が必要だ。
「No.1表示の場合、薬機法上、商品やサービスの内容・効果について、実際とは異なる嘘(虚偽)や、事実を大げさにした表現(誇大)を用いて消費者を誤認させる広告や表示「虚偽誇大表示」に該当してしまう恐れがあります。さらに、薬機法では景品表示法よりも強く虚偽誇大表示に対して厳しく規制をされているため注意が必要です」
原則として、医薬品だけでなく、医薬部外品の効能効果と安全性を強調するために、No.1表示をする事は禁止されているが、すべての事項についてNo.1の表示が禁止されている訳ではない。売上No.1や満足度No.1のように、効能効果、安全性ではない事項に関する表示が根拠に沿って掲載されていれば問題なく表示が可能だ。
「但し、禁止されていないとはいえ、合理的な根拠を持って表現をしなければ、薬機法違反に該当してしまう恐れがあります。事業者は、適切な根拠を持って表示の裏付け調査を実施しなければなりません」
例えば薬用シャンプーの顧客満足度を調査する場合でも、そのシャンプーがどの属性に使われているかを確認し、それに沿って調査する必要がある。
「男性向けの薬用シャンプーであれば、調査対象を「その商品を継続的に使用したユーザー」に絞ってアンケートを実施しなければ、合理的な調査とはいえず、意味がありません。特に、対象も決めず、使用したかどうかの確認もせず、単なる印象の良さだけをアンケートするようなイメージ調査をしただけでは、「顧客満足度」の表示を裏付ける調査とは言えません。」
また、適切な調査対象者を元に調査を実施しても、情報が古ければ他の商品が優位に立っている可能性も考えられる。調査結果が出て終了ではなく、そのような広告を続けるのであれば、合理的な表示になるように1年に1度の継続的な調査が望ましい。
薬機法と国内初、世界初の関係性
No.1表示への対策がおおよそ見えてきたところで、国内初や世界初の表示はどうか。国内初と世界初それぞれの考え方についても早崎弁護士に伺った。
国内初の表示で注意すべき事
「「国内初」の表示は、国内での唯一無二を示すものなので、No.1以上に根拠が必要となります。仮に、公開された情報で国内初を示すものが出来たとしても、データを公開していない事業者が存在する事も考えられます。そのため、どのような調査を実施しての「初」なのかを示す必要があります。根拠によって範囲を示さなければ、一般消費者はどの範囲での「国内初」表示か分からず、結果として虚偽表示としてみなされてしまう可能性があります」
適切な根拠は重要だが、さらに注意点もあるという。
「国内初!〇〇成分配合の薬用シャンプー」
という表示を掲載したいと考える場合、どのような注意点が必要なのか。
「含有する成分が一般的に認知されているようなものであれば、掲載する事で訴求効果があるとは考えられます。しかし、そのような成分を含有する事が「初」というのは通常あり得ないため、「初」表示を狙ってあえて珍しい成分を訴求しようとする事も想定されます。しかし、その成分が専門的なものすぎると、消費者には優位性が判断できないという問題が生じます。さらには、医薬部外品として承認された効能効果とは無関係な成分の表示となり、薬機法に違反する恐れがあります」
訴求力が期待出来ない上に、薬機法に違反するような「初」表示は調査をしてもあまり効果がないと考えられる。調査前に、本当に効果のある表現になるのか、そもそも薬機法に違反する可能性があるのかを検討する事も重要だ。
世界初表示で注意すべき事
ランディングページなどで目にする「世界初」という表示についてはどうか。こちらは国内初以上に表示の根拠を調べるために苦労するという。
「世界初と表示をしたい場合ですが、合理的な根拠となる資料を用意するのが不可能な可能性があります。例えば、一定の調査結果を元に世界初と謳ったとしても、実際には、世界での唯一無比とは言えない事がほとんどだと思われます。というのは、一般的に行える調査は特定の言語圏からの情報に拠る事がほとんどです。しかし、「世界初」とするには、特定の言語圏に限らず、世界のあらゆる言語圏での調査が必要になります。例えば、実は中国語圏に別の技術が存在し、世界初ではなかったと指摘される可能性があります。特許を取得していても、特許は属地主義であり、各国ごとに異なりますので、それだけで「世界初」といえる根拠になりません。基本的に合理的な根拠を取得するための調査は難しいと言えるでしょう」
では、「英語圏での世界初」という表現ではどうか。
「「世界初」の注釈に「英語圏での調査」と記載をすれば、確かに表示として問題ないと捉えられるかもしれません。しかし、注釈に「英語圏」と書いても一般消費者が目にするものは「世界初」ですし、そもそも英語圏限定なのに「世界初」というのは表現自体が矛盾しており、適切ではありません」
世界初という表示はNo.1や国内初と異なり調査範囲が広がり、根拠となる資料を適切に示すためのハードルは極めて高い。それでも「世界初」と表示したい時は、このようなリスクを考慮した慎重な調査を検討する事が求められる。
安全な表示を心掛けよ
No.1、国内初、世界初とそれぞれの表示に分けて、どのような考え方をすべきかについて紹介した。確実に、リスクを少なく商品の訴求力をアピールする方法としては、自社製品との比較も選択肢に入れるべきだと早崎弁護士は説明する。
「自社商品と比較する場合、根拠となるものは自社の製品に関するものとなるため、事業者内には十分な資料がある事が通常で、調査も比較的簡単でかつ表示のハードルも下がります。看板商品などをリニューアルする際に、自社製品との比較をしたNo.1表示を検討するのはリスクが少なく良い方法です。表現を工夫すれば、フックの利いた広告に出来るでしょう」
いずれにせよ、薬機法が関係する商品は他の商品に比べ、より適切かつ根拠の明確な調査が必要不可欠となる。安全な表示を心掛けるために、自社で慎重に検討する事が重要だ。それでも判断がつかなければ、広告規制に精通している弁護士の中でも薬機法に精通する弁護士に話を聞くと良いだろう。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
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2026年06月09日






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