神田弁護士へのインタビュー「課徴金の減額方法は?計算・減額方法などを改めて解説」

課徴金の減額方法は?計算・減額方法などを改めて解説

2026年04月09日

弁護士プロフィール

小林・弓削田法律事務所

神田 秀斗 弁護士

かんだ ひでと

略歴

知的財産法務を専門とし、特許・著作権・ブランド保護などの紛争対応や契約交渉を多数経験。
日本法だけでなく英国/欧州GDPRを含む個人情報保護法制に精通し、法的に正しいだけでなく、IPとデータを守りながら、企業の収益と競争優位につなげる法務を提供。
英国SQE合格・香港/中国での実務経験を基盤に、英文契約、海外進出・撤退、M&Aなどの国際案件を一気通貫でサポート。
特に「コンテンツ × 海外展開」を強みとし、中国での模倣品対策や香港での事業支援に注力しています。

本文

イモトのWi-Fiを運営するエクスコムグローバルに対し、約1億7262万円の課徴金納付命令が発出された。No.1表示(優良誤認)に対する課徴金の中で1億円を突破した事例は初めてである。景品表示法上、課徴金額は売上の3%と定められているが(例外的に4.5%となることもある)、改めて確認すべき点も多い。そこで今回は、措置命令の事例と課徴金額について解説する。

課徴金納付命令と措置命令はセットで考える

行政処分には、措置命令で留まるケースと、課徴金納付命令まで進むケースがある。なぜ2つのパターンがあるのか。

「消費者庁は、優良誤認表示か否かの調査の中で、措置命令と課徴金納付命令の双方の発令を想定して合理的な根拠を示す資料の提出を求めます。なぜなら不実証広告規制は措置命令だけでなく課徴金納付命令にも適用されるため、並行させることが効率的だからです。No.1表示の事例か否かを問わず、事業者は消費者庁の資料提出要求日から15日以内に関係資料を提出しなければなりません」

措置命令と課徴金納付命令を別々に捉えている事業者もいるが、実務上、優良誤認表示か否かの文脈においては同時に審査が行われることがある。措置命令発令においては売上の計算という手続がないため、上記の資料提出要求期間(15日)が経過したら直ちに発令することも可能である。他方、課徴金納付命令においては、既に優良誤認表示が確定し、措置命令の公表により消費者の誤認が解けていることを前提としていること、資料提出要求期間後であっても資料の追加提出が可能であることから、措置命令よりも比較的緩やかなスピードで手続が進行する。

今回の事例に当てはめると、令和6年年3月1日に措置命令を発表し、課徴金納付命令が公表されたのは令和8年3月12日。約2年かけて課徴金額の調査が行われた事が分かる。

課徴金の算出方法

課徴金額は、対象表示を掲載していた期間に生じた売上の3%とされている。ここで注意すべきポイントがある。

「売上を上げるためにかかった費用は、経費として算入されません。例えば、イモトのWi-Fiの契約者を増やすために行ったキャンペーンの費用や、広告費用などを経費として計上する事は出来ず、売上額だけで判断されます。その結果、問題のある表示をした事で、事業者が築き上げた利益そのものを大幅に失ってしまう可能性も考えられます」

課徴金額の算出方法も少しずつ見直されている。

「これまでは問題となる表示に対し、どの程度の売上があったかを把握する方法がありませんでした。そのため事業者が帳簿を提出しなければ課徴金を正確に計算する事も難しいと考えられてきました。しかし、令和5年の景品表示法改正により、事業者が帳簿を提出しない場合でも、これくらいの売上があったと推認し、計算する方法が導入されたため、事業者が数値を誤魔化す事も難しくなりました」

課徴金を抑える方法

課徴金は対応次第で減額出来る可能性がある。ここからは減額する方法を紹介していこう。1つ目は自主申告である(景表法9条)。

「自主申告は、事業者自身が消費者庁へ自主的に『課徴金対象行為に該当する事実』を申告する手続です。仮に行政処分となった場合でも、50%減額した状態で課徴金納付命令を受ける事になります」

イモトのWi-Fiが自主申告をしていた場合、1億7262万円の課徴金額が半額となり、事業者としてのダメージも軽減される。

2つ目は、返金措置を行う方法である(景表法10条1項)。

「事業者自身が消費者に対し、返金措置を行う事も課徴金を減額する方法として認められています。この方法では消費者の購入額の3%分以上を返金する事になるので、経済的なインパクトはあります。他方、返金額が課徴金額から減額され、究極的には、返金の結果、課徴金額が1万円未満となる場合には消費者庁より課徴金納付命令が出されないというメリットがあります」

3つ目は、確約計画により免除を受ける方法である。

「確約計画が消費者庁に認められた場合、措置命令、課徴金納付命令を免除してもらう方法です。この方法は、被疑違反行為について一般消費者への周知等を要する一方、事業者として行政執行というダメージを軽減する事も出来ます。ただし、確約計画を提出した事業者において、過去10年以内に法的措置(措置命令等)を受けたことがある場合には、確約手続の対象外となりますので注意が必要です」

措置命令や課徴金納付命令が発表されると、大手メディアに取り上げられ、事業者が築き上げた消費者への信頼関係が一気に損なわれる危険性がある。課徴金額を抑える方法を検討する事も重要だが、日頃から運用体制を見直し構築する事も重要だ。

「もちろん消費者庁の認定に問題があれば争うことも必要ですが、事業者自身が表示に係る問題を受け止め、改善する姿勢を消費者庁にアピールする事も重要です。常日頃から表示の審査体制を見直すこと、有事には迅速に対応する体制を予め構築することが極めて重要です」

適切な表示運用を心掛けていたとしても、消費者の指摘をきっかけに調査が入る事もある。問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きる前にどのような対策が出来るかを改めて学ぶと良い。

未来トレンド研究機構では、表示を適切に運用する方法や景品表示法に関する情報を定期的に発信している。今回を機に確認しておきたい点がある事業者は、下記の記事を一読される事を推奨する。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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