弁護士プロフィール
小林・弓削田法律事務所
神田 秀斗 弁護士
かんだ ひでと
知的財産法務を専門とし、特許・著作権・ブランド保護などの紛争対応や契約交渉を多数経験。
日本法だけでなく英国/欧州GDPRを含む個人情報保護法制に精通し、法的に正しいだけでなく、IPとデータを守りながら、企業の収益と競争優位につなげる法務を提供。
英国SQE合格・香港/中国での実務経験を基盤に、英文契約、海外進出・撤退、M&Aなどの国際案件を一気通貫でサポート。
特に「コンテンツ × 海外展開」を強みとし、中国での模倣品対策や香港での事業支援に注力しています。
本文消費者庁は問題のある表示を掲載した事業者に対し調査を実施する。
その際、どのような流れで措置事例まで至るのか。
今回は消費者庁との対応にあたった経験のある神田弁護士に話をお伺いした。
措置事例までのプロセス
消費者庁が措置事例を発出するまでの過程において、ポイントは以下の3つだ。
- 調査前
- 調査開始
- 調査実施後
調査前の段階には、大きく分けて2つのパターンがある。
消費者庁の調査官がネットパトロールをした際に不当表示を発見し調査を実施するもの。
もう一つは、消費者のクレームを受けて調査を実施するものだ。
「措置事例の対象となるものは、多くの一般消費者が利用している商品やサービスがほとんどです。
なぜなら、消費者庁は、消費者からの一定数のクレームを受けて動くからです。
消費者庁の調査を避けるという観点でいえば、消費者からのクレームをうまく捌く体制構築も重要です」
その後、消費者庁が調査対象となる事業者を選定した後は、実際に調査へと移行する。
「消費者庁はまず事業者に対して問題となる表示に関する報告を要求します。
報告内容としては、商品の効果、効能といった優良誤認表示か否かを判断するのに重要となる情報はもちろんのこと、その他商品の開発経緯、製造過程など周辺情報も徴求されます。
また、景品表示法第22条に規定する表示の管理措置内容の報告も要請します。
消費者庁はこれらの報告内容を精査した後、事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を要求します。
事業者は、同要求があった日から15日以内に表示について裏付けとなる資料を提出しなければなりません。
期日までに資料を提出しなかった場合(又は合理的な根拠を示す資料とは認められないものを提出した場合)、当該表示は措置命令との関係では優良誤認表示に該当するものとみなされ、課徴金納付命令手続との関係では優良誤認表示に該当するものと推定されます」
景品表示法では、事業者に一般消費者を守るための7つの管理措置指針を定めている。
管理措置指針は、表示の根拠となる資料を保管すること、表示をどのように確認するかなど、一つずつ細かく対策方法を指定している。
資料を提出しない場合、「管理措置指針どおりに事業者が対策をしていない」とみなされ、消費者庁に対する心証は良くないだろう。
そもそも、果たして15日間に必要な資料は提出出来るのだろうか。
「仮に調査が入った段階で景品表示法に強い弁護士に依頼したとしても、15日間で必要な資料を提出するのは至難の業です。
日頃から景品表示法に強い弁護士と連携しておく必要があります」
調査前から景品表示法に強い弁護士と連携していくと、「適切に対策をしている」と消費者庁にアピールすることも出来る。
「管理措置指針には、事業者の表示に関する取組みを具体的に記載する必要があり、書き方次第で消費者庁に対して自分たちが如何に適切に対応しているのかをアピールすることが出来ます。
例えば、景品表示法に強い弁護士と連携していれば、表示に対するコンプライアンス体制があるとアピール出来ます。
また過去にNo.1や初表示などの裏付け調査で措置事例の対象となっていない調査会社を選んでいるなど、具体的な根拠を提示することも可能です」
適切な運用に沿って掲載した表示でも、消費者の捉え方によってはクレームを受けることがある。
そのような状況で調査が入っても、適切な資料と「消費者庁が求めている対策を日頃から実施しています」旨を示すことが出来れば、事業者の身の潔白を証明することが可能だ。
「消費者庁は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に関して、本当に商品の効果・効能に関する客観的な調査を実施したのか、その調査内容が適切か等細かく確認を行います。
表示の最終的な責任は事業者が負うため、調査会社に丸投げをしていたという回答では消費者庁を納得させることが出来ません。
調査結果をただ提出する調査会社ではなく、納得出来る資料を提示する調査会社に依頼することをおススメします」
措置事例のリスク
企業法務に精通している弁護士の中には、「中小企業の事業者は多少リスクを背負ってでも攻めた広告を掲載すべき」と推奨するケースもある。
しかし、神田弁護士はこのような主張に対して真っ向から反対する。
「措置命令に後続する課徴金額は売上の3%なので、軽視する事業者もいるかもしれません。
しかし、消費者庁が措置命令を発令したということは、それだけ多くの消費者からクレームがあったということを意味し、従って当該商品は相当程度売り上げがあるということになります。
そうすると、措置命令の対象となった商品は販売企業にとって枢要なものである可能性が高く、その売上の3%を納付するとなると、事業者の事業の根幹を揺るがす可能性もあります。
また、措置命令は消費者庁のウェブサイトで公開され、その結果、ネット記事等で拡散されるため、クレーム対応やメディア対応など、本来やらなくても良かった業務が増大します。
また、企業のレピュテーションリスクに多大なダメージを与えかねません」
景品表示法に強い弁護士と連携する場合、月に一定程度の弁護士費用を支出しなければならない。
中小の事業者にとってはコンスタントに弁護士費用を支出することは痛いかもしれない。
しかし、上記のようなリスクを踏まえて「事業の安全をお金で買う」と捉えれば、投資価値はあるのではないだろうか。
まとめ
日頃から対策している事業者でも、油断は出来ない。
最終的な確認ミスなどで措置命令の対象となる可能性があるためだ。
例えばNo.1表示を、適切な調査を元に実施したとしても、その表示に関する投稿がステマ規制に該当してしまったら、ステマ規制に沿って措置命令が発令される可能性がある。
広告は、その表示を消費者がどのように受け止めるか、という視点で見極めることが求められるだろう。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
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2025年12月29日





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