籔内俊輔弁護士へのインタビュー「消費者庁が注視する「二重価格」

薮内弁護士

2025年10月28日

弁護士プロフィール

北浜法律事務所

薮内 俊輔 弁護士

やぶうち しゅんすけ

略歴

公正取引委員会で、2006年から2009年の3年間、任期付き公務員として勤務。
公正取引委員会では、独占禁止法、景品表示法などの違反事件の調査、審判手続への対応などを担当。
その経験を活かし、独占禁止法、景品表示法及び下請法に関連する行政機関からの調査への企業に対する助言や代理人としてのサポート、社内調査の実施、M&A案件での届出手続支援、企業からの相談へのアドバイス、コンプライアンス態勢整備の助言や社内研修における講演等を行っている。

本文

措置命令事例から読み解く二重価格表示と消費者庁のトレンド

事業者は消費者庁が定期的に発表する報道発表資料を読み解くことで、どのような表示に対し注意すべきかを確認出来る。
2025年8月から11月までに出された表示に関する措置命令事例及び確約計画認定事例を確認すると、以下のようになる。

確約計画を含めると、キャンペーン価格と実態のない価格表示を行う「二重価格」に関する事例が多い。
果たして消費者庁は今二重価格に注目をしているのか、今回は籔内弁護士に事業者が注目すべき観点について話を聞いた。

二重価格にまつわる措置命令事例

二重価格表示に関する注意点について解説しよう。
二重価格表示とは、キャンペーン等で今の販売価格が安くなっていることを強調するために、それよりも高い販売価格(例えば直近の過去の販売価格)を比較して、消費者に今の販売価格についてお得感を与えるものだ。
この表示を掲載する際は、注意すべき点もある。

「二重価格表示は取引条件の1つである販売価格に関する表示ですので、景品表示法の中で問題になるのは「有利誤認表示」に該当するというケースが一般的かと思います。
例えば、事業者が過去に販売したことがない高い価格と比較対照する二重価格表示は有利誤認表示に該当します。
二重価格表示は「価格表示ガイドライン」というガイドラインでも特に項目を設けて説明がされている広告宣伝の表示を行う事業者にとって注意が必要な表示であり、改めて自社の表示が誤解を招くおそれのない表示となっているかどうかを確認しておくことが重要です」

二重価格については、消費者庁もどのような表示に問題があるか、表示例を提示して解説している。
担当者は再確認しておくと良いだろう。

措置命令事例のトレンド

直近の措置命令事例を確認すると二重価格表示に関する事例が増えたことから、消費者庁が現在注目しているのだろうか。

「この2~3年の二重価格表示に関する措置事例は確かにそれ以前の年よりも少ないようにも思えますが、消費者庁が調査を行った結果として、措置命令までは行わずに非公表の「指導」で事件処理している事例もあると思います。
また、過去から有利誤認表示の措置命令事例の多くは二重価格表示の事例でした。
そのため、直近の数か月間における措置命令事例が増えたから消費者庁が特に現在二重価格表示に注目して調査を行っているという印象は受けていません」

二重価格表示については、消費者庁が常に注目をしている表示であり、この数年で特に措置命令を積極的に行っていこうというように方針を変えた結果として措置命令が増えている訳ではない。

籔内弁護士に「消費者庁がどのような表示を重点的に調査しようとしているのか、その動向をあらかじめ把握することはできるのか」と聞いてみたが、そのような動向を一般的に探ることは難しいという回答を得た。
例えば、ステマ告示が作られて、従前明確に違法とされていなかった表示が景表法違反となった場合は、新たな規制対象であるステマについて一定程度は優先して調査を行っていくことはあるかもしれない。
また、消費者庁の措置命令をみていると、一定期間に問題点が類似した不当表示を連続して取り上げる例もある。
例えば、飲食店のメニューに表示された食材と実際に提供されている食材が異なる事例、期間限定キャンペーンと称して表示をしていたが同内容のキャンペーンを間断なく長期間継続している事例等があげられる。
消費者庁の措置命令事例の傾向を事業者自ら把握したり、そのような傾向を理解している専門家にアドバイスを求めたりすることで、消費者庁が過去にあまり措置命令の対象にしてなかったが現在進行形で注目している事例のトレンドをいち早く掴むこともできるかもしれない。

事業者がやるべきこと

二重価格表示の措置事例がこの数ヶ月で偶然増えているが、この傾向は新たなものではなく、これまでも措置命令の対象とされてきた典型的な有利誤認表示の事例として取り上げられていたものだ。
そのため、No.1表示と同様にこの先も事業者が注視すべき表示である。

ステマ規制やNo.1表示などの新しい規制や措置命令事例に目が行きがちだが、実態のない価格と比較する二重価格表示も消費者庁が注目している表示と捉え、事業者は改めて表示の見直しを行うと良いだろう。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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