早崎弁護士へのインタビュー「【薬機法】広告リスクは景表法だけではない」

早崎弁護士

2025年11月19日

弁護士プロフィール

弁護士法人GVA法律事務所

早崎智久 弁護士

はやさき ともひさ

略歴

弁護士法人GVA法律事務所(東京)
早崎智久弁護士

スタートアップの創業時からIPO以降までの全般のサポート、大手企業の新規事業のアドバイスまでの幅広い分野で、これまでに多数の対応経験。 特に、GVA法律事務所において、医療·美容·ヘルスケアチームのリーダーとして、レギュレーションを踏まえた新規ビジネスのデザイン、景表法·薬機法·健康増進法などの各種広告規制への対応、医療情報に関する体制の整備などが専門。

関連著書

Q&Aでわかる 医薬品·美容·健康商品の「正しい」広告·EC販売表示
弁護士法人GVA法律事務所 弁護士 早崎 智久 (著), 五反田 美彩 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4297136511

本文

「薬機法」の罠と正しい対処法」

広告運用において、多くの事業者が「景品表示法(景表法)」には細心の注意を払う。しかし、取り扱う商品によっては、それ以上に警戒しなければならない法律が存在する。それが「薬機法(旧薬事法)」である。 今回は、景品表示法と並んで問題となりやすいこの法律について、早崎弁護士の知見を元に、その適用範囲と実務的なリスク、対策を解説する。

薬機法の適用範囲と「入り口」の誤解

早崎弁護士によれば、まず事業者が把握すべきは「自社商品が薬機法の適用対象か否か」という点であるとの事だ。適用されるカテゴリーは大きく以下の5つに分類される。

  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 医療機器
  • 再生医療等製品(細胞、遺伝子など)

これらは人命や健康に関わるため、規制は厳格である。しかし、市場参入のハードルと広告規制の厳しさは必ずしも比例しない。市場参入がしやすい場合でも広告規制が厳しい。早崎氏は次のように指摘する。

「医薬品や医療機器にはが医療機関で取り扱われるものも多く、その場合は、効果のエビデンスがあり、認可、いわゆる薬事承認が降りなければそもそも販売出来ないものばかりです。一方で、この中で参入ハードルが低いものが、化粧品です。医薬品や医療機器と比較すると効果が弱いため、厚生労働省の認可なしでも販売出来ますが、広告を表示する際には薬機法が適用となるので注意が必要です」

手軽に参入出来る「化粧品」であっても、広告表現においては医薬品と同等の厳しい監視下に置かれるという事だ。参入の容易さに油断し、法規制への意識が希薄なままプロモーションを行う事は極めて危険である。

薬機法で注意すべき「何人規制」

薬機法には、景品表示法と決定的に異なる「何人(なんびと)規制」という概念がある。 景表法で責任を負うのは原則「広告主」だが、薬機法ではその広告に関わった「すべての人間」が処罰対象となり得る。

「過去の事例では、販売会社だけでなく、広告代理店の担当者も罪に問われ逮捕者が出てしまった事例もありました。軽視していると、重いペナルティが事業者に課されるため注意が必要な法律です」

制作を請け負った代理店やアフィリエイターであっても、違法な広告に関与すれば法的責任を免れない。この構造的リスクの理解は必須である。

「化粧品」における表現の限界と訴求力

では、どこまでの表現が許されるのか。ここでは広告量に比例して違反事例も多い「化粧品」に絞って解説する。
例えば、化粧品の広告では、厚生労働省のガイドラインにより「表現して良い効能効果」が56種類に限定されている。

つまり、この56種類に含まれないもの、例えば、「シミが消える」「若返る」といった表現は認められていない。

「大まかに言えば、この表示から逸脱している表示は、景品表示法だけでなく薬機法違反にも該当し、厚生労働省から指摘が入る可能性があると考えておくと良いでしょう」

そのため、化粧品の効能効果を広告する時は、まずはこの「56種類の表示」を遵守する事が大前提となる。しかし、定型文だけでは広告としての訴求力が弱まる懸念がある。そのような場合はどうすべきか。

「ガイドラインに表示されている表現と同様の意味であれば、言い換えが可能です。これをうまく駆使して運用しておくと良いでしょう」

規定の範囲内で、いかに消費者に響く言葉を紡ぎ出すか。それが安全な運用の鍵となる。しかし、「お肌」と「肌」のように、意味が同じ場合に限られるため、言い換えの範囲は広くない。

最大のリスクは「未承認医薬品」とみなされる事

事業者の掲載した広告が悪質性の高いものと判断されれば、悪質なケースでは「営業停止処分」等の行政処分や刑事罰が下される。その点で、特に注意が必要なのは、単なる誇大広告ではなく「無許可での医薬品販売」として扱われるケースだ。

「注意すべき事例は、薬機法違反に該当する表示のうちでも、未承認の医薬品を販売したと判断をする事例です。この場合は、広告規制違反の薬機法第66条などではなく、第24条違反となります。この違反は、広告規制違反よりもより厳しい罰則となります」

実は、先ほど効能効果のところで紹介した表現がこれにあたる。「シミが消える」「若返る」といった表現だ。広告で「シミが消える」「若返る」や「治る」等の効果を謳ってしまうと、これらの効果は通常は医薬品にしか認められない効果であるため、化粧品として販売していても、医薬品の広告になってしまう。そして、その場合、実際の商品は化粧品であって、医薬品としての承認を受けていないことから、当局はそれを「未承認の医薬品」とみなす事になる。つまり、違法な広告であることを超えて、未承認の医薬品を販売していることになってしまうのだ。そうなれば、事業の存続そのものが危ぶまれる事態に陥るかもしれない。

専門家選びにおける「監修」の落とし穴

薬機法対応には専門家との連携が不可欠だ。早崎氏は「専門にしている人にアドバイスを受けるべきだ」と話す。

「調査会社やウェブマーケティングの専門会社に依頼をする場合も、薬機法に詳しい担当者がいる会社はありますが、すべての会社が詳しい訳ではありません。薬機法が適用される場合、万が一表示に問題があった場合は、調査会社や広告代理店も責任が問われる可能性がありますが、表示の最終的な責任を負うのは事業者です。担当者は広告規制に詳しいのか、その会社に広告審査を行う専門部署があるのか、専門的な弁護士などの外部の相談窓口があるのか、など、事業者として確認をする必要があります。」

真に安全な広告運用を目指すのであれば、そのような信頼できる事業者に依頼をした上で、場合によっては、薬機法に強い弁護士などに相談できるようにし、不明瞭な事案では、最終的に法的な裏付けを採る事は、違反を回避するために重要である

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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