弁護士プロフィール
弁護士法人GVA法律事務所
早崎智久 弁護士
はやさき ともひさ
本文「広告規制の知識 薬機法とステマ」×「化粧品・美容商品事業者向け 口コミ広告に注意すべきこと」
実際は広告や宣伝にも関わらず、その事実を一般消費者に隠す行為は「ステルスマーケティング」と呼ばれている。従来は法律で規制されていなかったこの行為に対し、2024年より消費者庁が「ステマ規制」を定め、その後、複数の違反事例が発生し、公表されている。
ステマ規制に対しては、発信する媒体により具体的な対策は異なるが、特に注意が必要なポイントは以下の2つだ。
- 有利な内容の口コミを投稿するよう事業者が促す
- 過去に依頼したインフルエンサーの投稿をHPに掲載する。
このようなケースでは、投稿内容や掲載に事業者が関わっているため広告になってしまう。それにも関わらず、消費者にそうだと分からない場合はステマになってしまう。対策としては、事業者が関わっていることを消費者に分かりやすく表示することだ。「PR」などの表記を入れて、広告であることを消費者に分かりやすく表示すれば違反にはならない。
これに加え、化粧品や美容品を扱う事業者は、注意しなければならない項目が存在する。それが、「口コミ広告」だ。最近は、口コミを利用したマーケティングが盛んになっているため、特に注意が必要だ。他の業種であれば口コミを使ったマーケティングが自由にできる場合でも、化粧品・美容品を扱う事業者は、そうではない。そこで、ここでは、口コミ広告について考える。
口コミ広告とは
化粧品や美容品の広告をする時は、景品表示法の他、薬機法も適用される。その際、体験談を元に広告をする「口コミ広告」には、特別のルールが存在するため、特に注意が必要だ。口コミ広告の表示としては次のような事例がある。
「この化粧品を使用したら、爪が綺麗になったので、とってもお薦め #PR」
一見すると、体験者の声を基にして発信をしているため問題ないように思える。一体どのような点が問題か。
「厚生労働省が定めた『医薬品等適正広告基準』というガイドラインがあります。ここには、細かなルールがたくさん書かれていますが、そのうちの一つとして禁止されている行為が、このような口コミ広告です」(早崎弁護士)
具体的にどのような表示なのか。ガイドラインに関しては下記のように記載がある。
(5)使用体験談等について
愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以下の場合を除き行ってはならない。なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。
①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせる恐れがあるため行わないこと。
②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合
「簡単に説明をすると、消費者が実際に化粧品などを使用して感じた効能効果や安全性に関することは、それが事実であっても、広告することは禁止されています。」
ステマ規制に注意していても、薬機法が絡む商品はこの点に注意しなければならない。但し、口コミが例外的に認められることもあるという。
「投稿者が事業者に依頼をされたPR投稿をした場合に、その内容が商品の効き目や安全性に関する内容の時は、このガイドラインのルールに該当してしまいます。例外として許されるのは、効能効果や安全性とは無関係な「使用感」である時と、商品内容の説明をする時、つまり、自分が使った感想ではなく、メーカーが公表している商品内容を説明する場合だけです」
具体的にどのような表示であれば良いか。
「そのため事業者は口コミを投稿する場合でも、例えば、商品の見た目や使い勝手の良さなど、商品の効能効果や安全性とは無関係なことを褒めたりしてもらうような内容にしてもらうように工夫する必要があります」
次に、美容品や化粧品以外にも、ダイエット食品など食品をPR投稿する場合も注意が必要となる。例えば、「ダイエット食品を試したら1ヶ月で3kg痩せた」という表示は、「痩せた」という表現が、医薬品にしか認められていない効果になるため、食品ではなく医薬品の広告として扱われることになる。その場合、その食品は医薬品として承認されていないため、未承認医薬品の広告として、薬機法に違反することになる。
このように、口コミ広告を投稿する際も、法律の様々なルールに違反しないか、慎重に注意しなければならない。
事業者に課されるペナルティ
仮に口コミ広告が違反に該当してしまうとどうなるか。優良誤認や有利誤認の表示であれば、景品表示法を管轄している消費者庁が動くことになるが、薬機法違反にも該当する場合は、消費者庁だけではなく厚生労働省(その委託を受けている都道府県)も調査に入る。
「消費者庁だけでなく、厚生労働省から委託を受けている都道府県の担当部署が別途該当する表示をチェックして、問題のある表示を確認することになります。この状況で注意すべき点は、広告主に限らず、関与した事業者が芋づる式でチェックされます。これは、薬機法は景品表示法と異なり、対象が「何人も」とされているためで、違法な広告に関わった人間全員が罰則対象となるためです。最悪の場合は逮捕者が出ることもあります」
実際に2020年7月に、大阪府警が健康食品会社の広告に関し、広告主の従業員だけでなく、広告代理店の社長も含め、計6人を逮捕している。広告業界に大きな衝撃を与えた事件であり、薬機法に関わる表示を軽視していると重いペナルティが課されると思って良いだろう。
「ここ数年の違反事例を見ても、関係者が逮捕されるケースは極限に近いところがあり、まずは行政指導を経るのがほとんどで、これに従わないようなケースで重い罰則を検討されるケースがほとんどです。もっとも、行政指導を受けること自体が問題ですので、まずは、表示の見直しをすることが重要です」
化粧品の宣伝をする際には、景品表示法だけでなく、薬機法のガイドラインと合わせて確認しておくことが重要だ。
まとめ
口コミ広告も、薬機法や医療法の対象でない商品やサービスであれば注意点は限定される。しかし、化粧品のように他の法律違反に該当する可能性のある商品を扱う場合にはより注意が必要だ。
「景品表示法の場合は事業者のみに適用されますが、薬機法や医療法の場合は広告代理店など関わった事業者に対してペナルティが課される可能性があることを改めて注意してください。」
最近では、薬機法に強いと謳う業者でも、不正確な認識で対応していることもある。そのため、万が一表示に疑念を抱いた時は、信頼できる業者に依頼したり、早崎弁護士のように薬機法や広告規制に詳しい弁護士などに意見を求めると良いだろう。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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2025年11月19日






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