早崎智久弁護士へのインタビュー「消費者庁の措置事例研究」

2025年07月09日

弁護士プロフィール

弁護士法人GVA法律事務所

早崎智久 弁護士

はやさき ともひさ

略歴

弁護士法人GVA法律事務所(東京)
早崎智久弁護士

スタートアップの創業時からIPO以降までの全般のサポート、大手企業の新規事業のアドバイスまでの幅広い分野で、これまでに多数の対応経験。 特に、GVA法律事務所において、医療·美容·ヘルスケアチームのリーダーとして、レギュレーションを踏まえた新規ビジネスのデザイン、景表法·薬機法·健康増進法などの各種広告規制への対応、医療情報に関する体制の整備などが専門。

関連著書

Q&Aでわかる 医薬品·美容·健康商品の「正しい」広告·EC販売表示
弁護士法人GVA法律事務所 弁護士 早崎 智久 (著), 五反田 美彩 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4297136511

本文

措置事例研究「ハハハラボ課徴金納付命令からわかること」

LPサイトやSNSで商品をストーリー仕立てで魅力的に紹介する手法は、機能性表示食品や特定保健用食品を扱う事業者も積極的に活用している。特に「No.1」や「高評価◯%獲得」といった差別化を図る表示をする際は、食品の広告でも問題になるため注意深く運用する必要がある。

機能性表示食品関連の事例では、2025年6月6日、株式会社ハハハラボに対し課徴金納付命令が発出され、金額も1086万円と高額となり、事業者としては手痛い結果となってしまった。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/042845/

ハハハラボは健康食品や美容品を扱う事業者で、WEBサイトでのプロモーションを主体として行う事業者だ。今回の違反事例からどのようなことに注意すべきかについて、機能性表示食品・特定保健用食品等の食品の広告にも精通している早崎弁護士にお話をお伺いした。

ハハハラボの措置事例が読み取る「優良誤認表示」

ハハハラボの事例は、これまでに多く摘発されている痩身効果を謳ったことと、No.1表示に関するものだ。そして、早崎弁護士によれば、No.1表示に関する違反は機能性表示食品に特有の問題ではなく、広告にNo.1表示をする事業者であれば、誰にもありがちな問題と指摘している。

「今回も問題になった優良誤認表示は、商品やサービスの内容・性質に関して、著しく優れている、つまり大袈裟な表示をすることを禁止するもので、このような表示は景品表示法の優良誤認表示になる可能性が高いです」

ハハハラボで実際に問題となった表示は、

「30~60代女性が選ぶダイエットサプリ No.1」

といったもので、6つの項目に関して調査した結果、ハハハラボが販売している商品がそれぞれ第1位であるかのように表示していた。ところが、実際は、回答者に対して、ハハハラボが販売する商品と他の事業者が販売する同種の商品について実際に利用したことがあるかどうか、その商品に関する知識があるのかどうかも確認せず、ハハハラボの商品と特定の9つの商品のみを任意に選択して対比し、その商品を販売する各事業者のウェブサイトの印象を問うものであって、消費者庁は客観的な調査に基づくものではないと判断した。

また、ハハハラボの広告は、この調査結果を正確、適正に引用していないことも指摘した。

つまり、ハハハラボの広告では、実際に調査した内容と、広告で表示された内容が大きくかけ離れていたのである。これでは、優良誤認表示と判定されるのも当然だろう。

「ハハハラボの措置事例対象となった表示は、調査情報を利用する広告に共通する問題です。本件で、例えば、「30~60代女性が選ぶダイエットサプリ No.1。」という表示を提示するためには、30〜60代の女性で、実際にダイエットサプリを愛用している人にアンケートを取る必要がありますし、対比させるのであれば、複数のサプリを使用した経験があったり、それらに関する知識がある人を対象にしなければ、客観的な調査とは言えないでしょう。そのため、調査では、その回答者が商品を利用したことがあるかを確認しなければなりません。」

このように、『〇〇が選ぶNo.1』という表示を行う場合は、調査において、アンケート対象者が商品を実際に利用したことがあるか、他の商品をどのように選定するかを必ず確認しなければならない。

調査会社に調査を依頼する時は、その前に、どのような調査をするのか、その調査のためにはどのような人を対象にするべきなのかなどの確認が必要になる。もし、アンケート対象者も確認せずに調査を行い、安易に表示をすれば、ハハハラボのような事例に該当してしまうかもしれない。

機能性食品を扱う事業者が意識すべきこと

今回のハハハラボのNo.1表示に関する点は、食品の事業者だけでなく、他の事業者も注視すべき表示であった。しかし、もう1点の痩身効果に関する意表表示についても、これまでに摘発され続けている類型の表示であり、改めて注意すべきだと早崎弁護士は指摘する。

「機能性表示食品に関わる表示でも、痩せる、や、若返る、といった、消費者に強く遡及出来そうな言葉が多用されていますが、いずれも許されない表示であり、過去にも多くの摘発された事例があります。このような表示が優良誤認に該当することを改めて認識することが重要でしょう」

このような表示の事例としては、株式会社アリュールが手がける「スリムサポ」に対して措置命令が行われたものがあるだろう。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/035547/

LPサイトでは、スリムサポを利用するとダイエットに効果があると表示されている。さらに、「消費者庁が認めた商品」のような表記もあり、「あたかも国が認めている商品」のような問題も優良誤認表示として該当をした。何故、このような表示が行われてしまうのか。その理由は、法務部との連携不足と早崎弁護士は指摘をする。

「機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)とは異なり、国の認可はいりません。その意味で、トクホよりは参入ハードルが低いので、想定的に、会社の規模が小さくチェック体制に不備がある事業者も多いかと思います。また事業者が注意をして顧問弁護士などに相談をしても、相談を受けた側が表示に精通していないときは外部チェックが甘くなってしまうこともあります」

景品表示法は弁護士の中にも精通している弁護士とそうでない弁護士が存在する。早崎弁護士のような、様々な薬機法に関わる事業者に対し厳格に確認をしていれば良いが、そうでない場合は注意が必要だ。

薬機法の観点で注意すべきこと

機能性表示食品等を扱う場合、No.1表示だけでなく、健康増進法や薬機法の観点からも表示内容を注意しなければならないとの事。

「健康増進法や薬機法の観点からは、「痩せる」「筋力がつく」「若返る」といった身体の機能や構造に影響を与えるものは、医薬品などそのような効果が認められる商品の広告でしか表示できないため、注意が必要です」

食品広告の中には、痩身効果を期待させるような表記をしているものも多く見受けられるが、このような表示は薬機法に違反するのである。精通している事業者であれば、薬機法に強い弁護士と連携をして事業を進める。一方、そうでない場合は、薬機法でどのような表示が問題とされているかを改めて確認しておくことを推奨する。

まとめ

ハハハラボのような事業者の中には、LPサイトにてNo.1表示を行う際は、きちんと必要な調査を設計し、設計内容に問題ないかを確認して、適切な広告になるように努力をすることが必要だ。
またNo.1表示が不当表示にあたる場合でも、健康増進法や薬機法上の別の問題が生じる可能性がある。色々な広告ルールを確認し、様々な視点から確認しておくと良いだろう。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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