石川弁護士へのインタビュー「調査会社の選び方」

2025年06月18日

弁護士プロフィール

牛島総合法律事務所

石川 拓哉 弁護士

いしかわ たくや

略歴

石川拓哉弁護士(第二東京弁護士会所属)
https://www.ushijima-law.gr.jp/attorney/takuya-ishikawa/

企業(上場・非上場)のガバナンス・コンプライアンスに関する対応や、海外関連の事案など、幅広い企業法務を担当する。相談者に対し、きめ細かいヒアリングを実施するだけでなく、難しい案件を分かりやすく説明する。

一般企業法務
企業(上場・非上場)における法律問題に関するアドバイス
企業のガバナンス・コンプライアンスに関するアドバイス
M&A・組織再編(会社分割・株式交換・事業譲渡等)に関するアドバイス
医薬品・医療機器の法規制に関するアドバイス

セミナー実績
【法改正ステーション#31】No.1表示に関する実態調査報告書の企業への影響(LegalOn Technologies)

本文

調査会社に依頼する前に確認しておくべきこと

「No.1」、「高評価」、「専門家100名が支持」などの表示の多くは、調査会社に依頼をして裏付け資料を用意する必要がある。景品表示法(以下:景表法)違反で行政処分の対象となるのは、調査会社ではなく広告を掲載した事業者自身だ。

当メディアでは様々な弁護士に調査会社の選び方をヒアリングして、トラブルに巻き込まれない方法を模索している。今回は、初めて調査会社に依頼をする事業者が行うべき行動について解説する。

牛島総合法律事務所
https://www.ushijima-law.gr.jp/

会社法、M&A、不動産取引、建築、環境法、IT、情報管理、労働法等の各領域で専門性を有する弁護士が数多く在籍。企業の社会的責任(CSR)を見据え、企業の事業の特性によるリスクに応じ、適切なコンプライアンス体制の構築の支援、様々なリスクに対応したコンプライアンス社内研修・セミナーの実施、内部統制システムの構築に関する提案、コンプライアンスマニュアル・内部通報マニュアルその他各種内部組織の規則等の作成などを行う。現在、Multilaw、ELAおよびLAW の日本における唯一のメンバーファームとなり、クロスボーダー案件を扱うにあたって、これらグローバルネットワークも駆使して、現地の法律実務に精通した、トップレベルの現地法律事務所と連携して、グローバル内部通報制度の設計・運用を進めていくなど、グローバル企業のコンプライアンス体制の構築にも対応。最高のクオリティのリーガル・サービスを、適正な価格で速やかに、ワンストップで提供できる体制を整えている。

調査会社を見分けるための2つのポイント

調査会社に依頼した調査によって事業者が景表法違反をした場合でも、責任を負うのは調査会社ではなく事業者だ。No.1表示が合理的な根拠に基づくものと言えるかどうかを、事業者、広告主の方が自らの責任で確認するということが重要になる。

「調査会社に依頼する場合に注意すべき点は、大きく分けると「調査会社の選定」と「自ら責任を持ってチェックをする」の2つのポイントがあります。1つ目の調査会社の選定ですが、これまでの処分例を見ていくと杜撰な調査を実施している調査会社がいくつか存在していることが分かると思います。

1フレーズで10万円といった極めて安価な金額を提示している場合や、No.1という結果ありきで強引な調査を持ちかける調査会社は、後から問題となる可能性が高く注意が必要です。また、過去の処分事例をチェックしておけば、どの調査会社が、どのような調査を行った場合に問題となるかを具体的に知ることができます。

直近でも、令和7年6月5日に合理的根拠のないNo.1表示について1億円弱の課徴金納付命令が出ましたが、その調査会社は、過去の複数の処分事例に関与した会社でした。」(石川弁護士)

調査会社の選定

調査会社の選定をするために、どのような視点を持つべきか。石川弁護士によれば、強引な手法の調査会社は次々と新しい調査方法を考案するため警戒が必要とのこと。

「消費者庁も注意喚起をしているように、「結果が悪ければ返金します」、「1位が取れるまで追加費用なしで再調査します」という調査会社も存在します。またNo.1に対する規制が厳しくなると、これに変わる新しい調査方法を調査会社が考案しているため、No.1表示を得意とする調査会社以外にも注意しておく必要があります。

例えば「高評価パーセント表示」がNo.1表示と同様に注意すべき表示です。「医師の何パーセントが推奨しました」という表示をするために調査する場合でも、調査過程が不明確であれば警戒する必要があります」(石川弁護士)

調査会社に依頼をする際に、「10万円であれば、このNo.1という結果が出せます」と言ったセールストークや、強引な調査を実施する調査会社には注意しておくと良いだろう。

事業者自身が情報を確認する

適切な調査を行っていると思われる調査会社に依頼をした場合でも、絶対に消費者庁の調査対象外になる訳ではない。事業者自身が情報を確認することも重要だ。

「調査会社に任せきりにせずに、事業者の方ご自身で調査内容、表示の根拠をしっかりチェックする必要があります。仮に事業者が調査対象となった場合、消費者庁への説明として「調査会社が適法と言っているから、自社では全くチェックしていない」「競合他社も同じ調査会社を起用している」という言い訳が通用する訳ではありません」

さらに、調査会社に依頼をする際に事業者が適切に情報を提示することも重要とのこと。

「例えば比較対象となる競合他社の商品、サービスの選定で漏れがないかは調査会社よりも事業者ご自身の方がよく分かっているはずです。情報提供が不十分で強力な競合商品が比較対象から漏れていたとか、商品の利用者でない者が調査対象者に含まれていたということであれば、どれだけ調査の方法が適切でも表示として問題となる可能性があります」

調査会社と打ち合わせをする際は、事業者自身も偏りのないよう網羅的に情報を提示しておくように心掛けておくと良いだろう。更に、調査資料の確認も重要だ。

「調査会社の調査結果が出て終わりではなく、その根拠となった資料をしっかり確認しておく必要があります。管理措置指針の中で事業者が表示の根拠となる情報を確認することを求めており、これは法令上の義務になっています。調査会社の行った調査内容が表示内容と適切に対応しているか、事業者自身の責任で確認する必要があります。怠れば事業者自身の責任になるので注意が必要です」

まとめ

適切な調査会社を選び、情報が正しいものかを自社で検証する。事業者はNo.1表示をはじめ調査会社に裏付け資料の調査を依頼する際には、本内容を理解しておくことが重要である。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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