松田弁護士へのインタビュー「No.1表示における調査会社との向き合い方」

2025年05月12日

弁護士プロフィール

三浦法律事務所

松田 知丈 弁護士

まつだ ともたけ

略歴

松田知丈弁護士(第二東京弁護士会)
https://www.miura-partners.com/lawyers/00040/

2011年〜2014年 消費者庁にて消費者裁判手続特例法、景品表示法改正(課徴金制度)を担当。当時の経験を活かし、景表法だけでなく消費者法関連の法律に精通する。また事業者に有益な情報を発信すべく、外部セミナーの講師として景表法に関する有益な情報について発信活動を行っている。

セミナー

2025 1.24公正取引協会主催 消費者庁の法執行に即した景品表示法コンプライアンス
2024 10.15景品表示法の重要論点フォローアップ ~ステマ規制、確約手続、NO.1表示、直近の調査トレンドなど~
本文

【No.1表示】広告主が知るべき調査会社との向き合い方

2024年9月にNo.1表示に関する実態調査報告書(以下:実態調査報告書)が消費者庁から出され、半年程経過した。消費者庁が措置事例を明示した事になり、事業者はこれに沿って運用しなければならない。
広告主が改めて注意すべき事は何か、今後の留意点は何かについて、三浦法律事務所に所属し、行政側の視点を持つ松田知丈弁護士に話を聞いた。

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No.1表示に関する実態調査報告書について

No.1表示に関する実態調査報告書から、広告主が知るべき事は何か。

「実態報告書には、『広告主は調査会社に任せきりではいけない』と広告主へ強いメッセージとも取れる記載があります。No.1表示の最終的な責任は広告主が取る事になるため、広告主は自分事として考えておく事が重要です」(松田弁護士)

事業者の中には、杜撰なNo.1表示を提示した調査会社に問題があると認識している事業者も多い。まずは、No.1表示の責任は事業者が背負うと考えておいた方が良い。

「実態報告書の中には、『調査会社と密にコミュニケーションを取って、No.1表示の裏付けとなる資料を確認しようとしていないケースも多かった』と触れています。つまり、消費者庁の調査が入った時に『調査は分からないので、調査会社に任せていた』『他社と同じ調査だから大丈夫と任せきり』という姿勢では、消費者庁に対して説明になっていない事を理解しなければなりません」(松田弁護士)

調査の事はよく分からないので、調査会社に全て任せておくと、表示に問題があった場合に広告主が全ての責任を負う必要がある事も覚えておくべきだ。

調査会社との関わり方

広告主がNo.1表示を適切に行うために出来る事は、調査会社の選定だ。実態と大きくかけ離れた調査等、杜撰な調査会社かどうかを見分ける事も重要だ。松田弁護士によれば、以下の2つのポイントで調査会社をチェックする必要があるとの事。

  • 調査料金が廉価でかつあらかじめ決まっている
  • ○○に対するNo.1表示であれば出来ると営業をかける

「No.1表示の裏付けとなる資料を調査する場合は、相応の労力がかかります。実際は作業量を反映した料金設定になるので、その都度価格が決まる方法が適切かと思われます。しかし相応の調査を想定していないような著しく金額が低かったり、あらかじめ調査内容が定められていたりする場合は、注意が必要です」

調査会社を依頼する際に過去の実績に注目する広告主も多くいるが、調査価格、調査方法を固定的に提示する事業者かも確認しておくと良いだろう。調査方法が不明瞭で価格が他社と比べて著しく安価な場合は注意が必要だ。

調査会社への責任追及について

調査会社に依頼をして、万が一「No.1」が消費者庁の目に留まり、措置事例対象となった場合、調査会社への責任追及は可能なのか。調査会社に対して責任を追及する事は難しい。こちらが要求する調査を実施していなかったり、契約書をあらかじめ結び請求する事は出来るかもしれないが、現実的にはかなり難しいように思える。

仮に出来るとしても、調査結果を元に表示した商品・サービスの損害を算出する事は難しいので、未然に調査会社との関わりを見極めなければならない。

「適切な調査を実施する調査会社に依頼をする際も、出来る限り情報を開示する事が重要です。商品・サービス情報を限定的にしてしまうと、競合相手を誤って選定する恐れもある。このようなトラブルを回避するために、商品情報、競合相手、どのようなNo.1表示を実現させたいかを調査前に話し合うべきです」(弁護士)

適切な調査方法を実施する調査会社に任せておけば安心と考えるのではなく、No.1表示の責任を負うのは広告主であり、事業者自身が最終的な責任を負う事を大前提として、対応しておくべきだ。

まとめ

広告主が適切にNo.1表示を行うには、信頼出来る調査会社の選定に加え、どのような調査プロセスで依頼するかの見極めも重要だ。No.1表示に対し、消費者庁が厳しい視点で確認するようになったからこそ、改めて注意すべきポイントは何か整理しておくことを推奨する。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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