弁護士プロフィール
木村・東谷法律事務所
木村 智博 弁護士
きむら ともひろ
木村・東谷法律事務所
https://www.kh-law-office.com/
<紹介>
埼玉県を事務所に構え、個人から企業案件まで様々な法律相談に2名の精鋭弁護士が対応。所属弁護士の木村弁護士は、景品表示法を中心とする表示の講演を多数担当するだけでなく、訟務検事の経験を活かした専門的な行政訴訟も得意とする。
東谷弁護士は、離婚や相続など家事事件から、刑事、少年事件、さらには破産事件など、様々な身近なトラブルに対応する。
木村智博弁護士(埼玉弁護士会)
https://www.kh-law-office.com/lawyer/
景品表示法を中心とする表示規制について関心を持って研究し、アドバイスや講演を積極的に行う。消費者行政及び訟務検事の経験から行政訴訟等も得意とする。
主な書籍
| 2012年10月 | 「多様化するネット通販と広告表示規制の問題点」 (消費者情報No.435[公益財団法人関西消費者協会]) 「インターネット上の表示及び景品類の提供に関する景品表示法上の考え方について -『口コミサイト』と『カード合わせ』」(公正取引No.744[公益財団法人公正取引協会]) |
|---|---|
| 2016年08月 | 「消費者行政法」 [勁草法律実務シリーズ](勁草書房) |
本文No.1表記に耐えうる景品表示法対策としての管理措置指針について
景品表示法(以下「景表法」という。)は時代と共に消費者庁が対応を変化させることがあるため、その時代のトレンドに沿った対策が必要不可欠だ。不当表示を防止するために定められた法令やガイドラインは、どの事業者にも当て嵌められるよう、抽象的な定めとならざるを得ず、結果として解釈の余地が発生する。そのため、具体的な対策については事業者自ら講じる必要がある。
その中でも消費者庁が事業者に対し義務として課しているものが「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置」であり、その基本的な考え方を示したものがいわゆる「管理措置指針」だ。
管理措置指針で定められている項目は、No.1表記、初表記等を運用する上でも重要な要素となる。事業者は適切に運用するために意識すべき事は何かについて、消費者庁表示対策課課長補佐として活躍した木村・東谷法律事務所の木村智博弁護士にお話を伺った。
管理措置指針とは
管理措置指針は景表法に精通している弁護士が、企業法務として強く推奨する項目だ。消費者庁が事業者への義務として課していることも要因の1つだが、日頃から対策を心がけておくことで事業者自身を守ることができる。
「管理措置指針が事業者を守る理由は「景表法を適切に運用できる」という理由だけではありません。万が一調査対象となった場合、管理上の措置はどのようになっているのかを必ず尋ねられます。事業者が答えられなければ杜撰な運用を日常的に行なっている事業者とみなされ、管理上の措置についても指導や助言の対象となる可能性が十分考えられるでしょう」(木村弁護士)
管理上の措置は、2024年10月より運用開始となる「確約手続」でも重要な考慮事項となる。事業者の自衛にとっては必要不可欠な対策なのだ。
確約手続とは
景表法違反の疑いのある行為をした事業者に対して措置命令・課徴金納付命令を免除する代わりに、事業者が自主的に改善策に取り組む制度。消費者庁からの通知後、60日以内に確約計画を作成し、申請する。確約計画が認定されると、消費者庁により報道発表されるため、公表リスクは避けられない。
管理措置指針には大きく分けて7つの項目が示されている
- (1)景品表示法の考え方の周知啓発
- (2)法令遵守の方針等の明確化
- (3)表示等に関する情報の確認
- (4)表示等の情報の共有
- (5)表示等管理担当者担当者を定める
- (6)根拠となる情報を事後的に確認するための措置を採る
- (7)不当な表示が明らかになった場合は迅速かつ適切に対応する
そして、昨今の事情から別件項目としてアフィリエイトに関する項目も追加された。
- (8)アフィリエイトプログラムを利用した広告時には事業者を表示する
どの項目も事業者にとって重要な項目に変わりはないが、その中でも優先順位をつけて管理上の措置を構築することが重要であると木村弁護士は指摘する。
「消費者庁は管理措置指針を作る際に、漏れがないようイメージして作ったと考えられます。そのためどれも重要な項目ですが、その中でも特に事業者として力を入れるべきものは何かを判断しなければなりません」
では、具体的にどのような基準で管理措置指針を確認すべきなのか。
「具体例として、食品事業者の表示ミスがあります。事業者は適切に景表法に則った運用を行っていましたが、仕入れ先の原材料が変更になったことに気づかず、そのまま誤った表示をしてしまった。このような状況に気づくためには、表示担当者が営業、調達、製造と部門を超えて状況を把握する必要があります」(木村弁護士)
まずは現在事業者が掲載している広告やホームページの表示に問題がないかを確認しておくと良いだろう。部門を超えて1つずつ確認できる体制を構築しておくことで、(3)と(4)をクリア出来る。しかし、ここで注意すべきポイントもある。
「事業者が適切な対策を講じたとしても、時間経過と共に緊張感が薄れてしまいます。そのため、継続的に緊張感を持たせるための工夫も必要です。そのためには表示の責任者となる担当者を配置しておく必要があります」(木村弁護士)
共有方法を考えずに場当たり的に構築すると、時間経過と共に必ずミスが生じしてしまう。大手企業が措置命令の対象となるケースは、このようなケースも十分考えられるだろう。
担当者の配置を決めれば、(5)もクリアとなり、7つの項目のうち3つの対策を検討したことになる。しかし、ここで勘違いをしてしまう事業者も多いとのこと。
「表示の責任者は法務部で全て対処するなど偏った配置をすると、商品を売りたい営業部門の意向を抑えられず、その結果として景表法を遵守する運用が後回しになってしまいます。その結果として措置命令対象となるような表示をしてしまうことも考えられます。このようなミスを防ぐために、営業部門も含め、表示に携わる部署の担当者全員で取り組む体制を構築することが重要です」(木村弁護士)
景表法を適切に運用している事業者は、法務部に全て一任するのではなく、各セクションが連携して理解していることが多い。部門を超えて表示に関わる担当者は、日頃から意見交換しておくことが重要だ。
知見を増やすためにできること
事業者が常に危機意識を持って運用するためには、定期的な知識・情報のアップデートが必要不可欠だ。弁護士主催の勉強会やセミナーに参加する方法もあるが、自社で簡単に出来る方法は措置命令が出された事例を確認しアップデートさせる方法だ。
同業者の措置命令の事例をチェックしておくことで、自社が仮に措置命令対象となった場合、どのようなデメリットがあるのかを把握出来る。
例えば「顧客満足度1位」といったNo.1表記を日頃から運用している事業者であれば、措置命令事例をチェックしておくことで自分たちの表示は問題ない表示なのか、それとも改善点が必要な表示なのかを判断出来る。
「措置命令事例はただ照らし合わせていくだけでなく、消費者庁がどのような表示を問題視しているかを見ることが重要です。No.1表記で言えば、イメージ調査と呼ばれる手法での表示が問題視されているため、今後も厳しい目で調査が実施されると予想されます。その他にも過去の措置命令事例を見ていくと、優良誤認表示、有利誤認表示、ステマ規制と景表法上問題とされる表示がたくさん上がっています。これらを確認しておくことで、どのような表示が問題なのかを把握できるようになるでしょう」
措置事例
全ての措置命令事例を確認しておく必要はないが、木村弁護士が特に注目している措置命令事例を紹介する
・大幸薬品株式会社に対する措置命令
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028385/
・株式会社キャリカレに対する措置命令
https://www.caa.go.jp/notice/entry/038627/
「No.1表記の場合、調査過程や調査結果に目がいきがちですが、客観的な調査がなされていても、最終的な表示や広告表示の仕方に問題があって指摘されるケースもあります。消費者庁が問題視している表示の仕方に着目しながら、色々な措置命令事例を見ておくと良いでしょう」(木村弁護士)
No.1を正しく調査しても最終的な表示で指摘を受けることは十分考えられる。このことを肝に命じて対策を検討しておくと良いだろう。
また、昨年から、ステマが規制対象になった。SNSで事業者が事業者であることを明らかにせずに、何気なく投稿したものも、景表法違反となる可能性がある。これまでに事業者が投稿した内容を一度精査し、ステマ規制に引っかかるものが無いかを確認しておくと良いだろう。飲食店等で利用者に対し、口コミの投稿をした方に割引キャンペーン等を実施しているのであれば、ステマ規制に該当する。事業者が問題のある表記を行っていないか改めて確認しておくと推奨する。
まとめ
管理措置指針を中心に解説をした。基本的な対策であるが、No.1表記や初表記を始めとした表示を目指す事業者にとって必要不可欠なものだ。景表法を適切に運用する際にどのようなアクションを行えば良いかわからない時は、今回紹介した手順に沿って対策を講じると良いだろう。
尚、2024年9月26日にNo.1表記に関する実態報告書が発表された。こちらに関しては別記事で解説をしているので、目を通して欲しい。
表記チェックは自社で行うと何らかの見落としも十分考えられる。そのような場合は第三者のチェックが必要不可欠だ。その際、厳しめのチェックが必要であれば、消費者庁の目線でもアドバイスが出来る木村弁護士のような弁護士に相談して見るのが良いだろう。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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info@miraitrend.com


2024年09月09日





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