【消費者庁セミナー解説】No.1表記と改正景表法

2024年10月09日

【消費者庁セミナー解説】No.1表記と改正景表法

セミナー日 2024年9月3日

改正景表法が10月1日よりスタートする。No.1や初等の表記をする事業者にとって大きく関わるものが「確約手続」だ。 確約手続は、消費者庁が行政措置・課徴金納付の行政処分に該当する事業者に対し、表記の取り下げを始めとした条件と引き換えに措置を免除するという制度だ。

実際に確約手続がどのように運用されるかについて2024年9月3日に消費者庁が主催したセミナーを基に解説する。尚後半では、確約手続以外に消費者庁が注目している違反事例(No.1表記、ステマ規制)についての解説も行う。

確約手続の導入経緯

確約制度を取り入れた背景として、消費者庁担当者は次のように説明をしている。

「現行の制度は不当表示を行うと行政処分として措置命令と課徴金納付命令を課すかどうかを判断していた。事業者が指摘を受けて、表記の改善や被害回復を検討しても、それを考慮されず行政処分を淡々とするものであった。これでは自発的に改善をしたいと申し出る事業者にとってメリットがなかったので、行政処分をしないで終了する仕組みを考案した」

確約手続は事業者の自主的な改善を促す仕組みで、表示に問題があり消費者庁が調査に入ったタイミングで事業者は、いつでも確約手続の利用が可能だ。

「極端に言えばこの制度は10月1日以降に利用が出来るので、9月現在、調査対象中となっている事業者も担当者に相談すれば利用可能です」とのこと。

もちろん対象となった事業者が全員気軽に利用出来る制度ではない。消費者庁が認定した事業者のみが利用できる。認定されるためには2つの要件を満たす必要がある。

  • 過去10年以内に措置命令違反がない
  • 計画書を60日以内に提出し、消費者庁に受諾してもらう

計画書は絵に書いた餅ではなく、事業者がこれまでの過ちを正すための説得力のある資料を作らなければならない。過去にインタビューをした弁護士の中には「企業法務に精通していない事業者は計画書の作成で苦戦する」「知見がなければ計画書作成も不可能と思われる」と指摘している。後ほど計画書の作成ポイントを解説するが、簡単に作れるものではない。

確約措置は景表法を軽んじている事業者を救済するものではなく、日頃から真っ当に表記運用を心がけてきた事業者を救う制度であると理解しておくと良いだろう。

確約手続のデメリット

確約手続は救済措置とされているが、デメリットもある。事業者は措置命令を免れる一方で、消費者庁の報道発表資料として掲載されることを知っておかなければならない。

これまで確約手続を利用した事業者の公表方法について、消費者庁から明言されていなかったが、セミナーにて「措置命令等を発表している報道発表資料の中で掲載を考えている」と回答していた。措置命令となった事業者と同様に公表リスクがあると考えておくべきだ。

この資料に情報が掲載されれば、3年間は誰でも閲覧できるようになる。担当者は「確約手続は自主改善を促す制度であるため、措置命令違反をした事業者と同列に考えていない」と強く説明していたが、事業者が制度を利用する前に消費者に不利益を被るような表記を掲載していたという事実は変わらない。

スタートアップ企業やベンチャー企業でM&Aを目指している場合、過去に確約手続を利用したことがある事業者と判明すれば、それだけで企業価値が下がってしまうことも十分考えられるだろう。

事業者は確約手続があるため多少の表示違反をしても良いとポジティブに捉えるのではなく、「措置命令と同等のネガティブな印象を第三者に与える可能性が十分考えられる」という認識が必要だ。

確約手続を利用する事業者が知るべきこと

措置命令や課徴金納付命令を避けるために利用する場合、10年以内に措置事例の対象となっていなければどの事業者でも制度を利用できる。その中でも消費者庁が制度利用を認めないケースもある。

その基準となるものは「管理措置の遵守」と「計画書の要件」だ。10年以内に措置命令の対象となっていない事業者でも、上記2点で問題があると判断されれば、確約手続きを利用出来ず、措置命令に移行することも考えておかなければならない。

管理措置を日頃から遵守しているか

確約手続きを利用するのであれば、前提として消費者庁が定める管理措置(事業者が講ずるべき7つの項目)を遵守する必要がある。

7つの項目は以下の通り。

  • 1. 景品表示法の考え方の周知・啓発
  • 2. 法令遵守の方針等の明確化
  • 3. 表示等に関する情報の確認
  • 4. 表示等に関する情報の共有
  • 5. 表示等を管理するための担当者等を定めること
  • 6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採る
  • 7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

なぜこの7つの項目が重要なのか。セミナーで担当者が次のように解説している。

「もともと管理措置は事業者に課している義務なので、日頃から実行されていないことが分かれば確約手続から外れる可能性もあります」

実際に過去に行ったインタビューで、消費者庁の調査対応をした経験のある柳澤弁護士からも「任意調査時には、必ず管理措置はどうしていますかとヒアリングされます」とインタビューで回答していた。

事業者が表示に対する責任を常日頃から意識していなければ、対象外となると捉えておくと良いだろう。

計画書に織り込むべき「十分性」と「確実性」

消費者庁は事業者の提出した確約計画書を「十分性」と「確実性」の2つのポイントで評価する。では十分性と確実性それぞれどのような評価基準があるかを解説していこう。

「十分性」は次の3つの項目が重要だ。

  • 違反行為の取りやめ
  • 事業者の体制整備の見直し
  • 消費者への周知

措置命令は不当表示を無くし、消費者に誤解を与えないようにするために行われるものだ。そのため事業者が、消費者庁が目指す表示のあり方に対し、どのような取り組みを行うのかを示すことが重要だ。

2つ目の「確実性」は消費者への返金措置が該当する。担当者によれば「有益な措置の中でも返金措置はワンランク上の重要な事情として考慮する」とのこと。事業者が作成する計画書の中には必ず返金対応を織り込まなければならないだろう。

もちろん返金計画をただ提示して終わりではない。具体的な返金計画を提示する必要がある。

  • 必要な資金はどのようにして確保するのか
  • 消費者に対しどのように周知をするのか

この2つを具体的に示さなければ絵に書いた餅とみなされ、計画書として認められないことも考えられる。

例えば1000円以内の安価な商品が措置命令を受けて、返金対応を行うと仮定しよう。その際は、消費者に対して商品と同等の価値のあるクーポンで代用するのか、それともクオカードで対応するのか、といった該当する商品やサービスに合わせて実現性のある返金方法を細かく決めておくべきだ。

確約手続きへの誤解

確約手続きが発表されて以来、「措置命令対象者を淡々と増やし、行政処分がしやすくなるのでは」と捉えている有識者も多い。実際にセミナーに参加した事業者から「これまで行政処分になるケースの中で行政指導や注意公表といった公表まで至らない事案があったが、今後は極端に減るのではないか」といった意見もあった。

これに対し、消費者庁は次のように説明している。

「確約手続き制度が始まったことで、行政指導で終わるケースが激減することはないと消費者庁は考えています。確約手続きで進めようと調査時に思っていたものの、最終的には調査対象外となるケースもあり、行政処分を増やすために取り入れている訳ではありません」とのこと。

確約手続はあくまでこれまでの調査に追加された「救済策」であり、これまで以上に措置命令事例を急増させたり、行政指導のあり方を大幅に変えるものではない。この辺りは改正後の措置命令件数に注目していけば、消費者庁の考え方を捉えられるだろう。

返金制度の多様化

消費者庁は措置違反をしてしまった事業者が、措置命令を受けた場合でも自主的に被害回復する行動を推奨している。返金を自主的にした場合は、課徴金の一部を控除するという制度があるが、4件のみで浸透していないとのこと。

今後は現金だけでなく、クオカードや電子マネーなど、一般消費者に浸透している方法も返金措置としてみなされる。もちろん返金以外の対応は消費者の同意を得て始めて利用出来るものであるため、一方的に返金対応を構築すると消費者庁が認めない可能性もあるので注意が必要だ。

返金計画を検討する際は現金だけでなく、それ以外も活用出来ることを考慮しておくと良いだろう。

確約手続きは真摯な対応が必要不可欠

以上が改正景表法で特に重視している「確約手続」の解説だ。確約手続は真っ当に表記運用を心がけてきた事業者が、万が一措置対象となった時の救済措置だ。日頃から真摯な対応をしなければ、制度の利用を認められない可能性も十分考えられる。

事業者はこの制度を利用すれば措置命令を逃れることができると考えるのではなく、今の法務体制が問題ないかを見直すと良いだろう。

消費者庁が注目している表記を把握しておくことも重要だ。セミナーで取り上げられた「No.1」と「ステマ規制」は、今後も取り扱いに気をつけなければならない表記として注目しなければならない。ここからは、2つの表記に対し、消費者庁がどのようなことに注目しているのかを解説していこう。

消費者庁が問題視するNo.1表記

2024年3月に立て続けに措置命令が出されたことで、No.1表記が問題ある表記として事業者の間でも注目されるようになった。

特に顧客満足度No.1表記で措置事例対象となったものは、客観的な根拠の裏付けがなく、実態とかけ離れた表記だ。調査方法を適切なもので設定していれば、問題はない。この状況に対し、担当者は次のような分析をしている。

「措置命令となった事業者を1つずつ見ていくと、調査機関の杜撰な調査方法を見抜けなかったケースが目立ちます。表記の責任は事業者にあります。「知らなかった」で済ませるのではなく、事業者が表記に対し責任を負う体制を構築してください」とのこと。

また続けて強引な営業をする調査会社への対策も事業者自身が行わなければならないと説明をしていた。

セミナーでは最低限の見解に留めていたが、最新の違反事例や消費者庁の考え方は2024年秋頃に改めて報告書が発表されるとのこと。公開されたタイミングで改めて確認しておくと良いだろう。

ステマ規制に対して厳しい目を向けている

No.1表記と合わせて消費者庁が注目している事例が、ステルスマーケティングによる表記だ。ステマ規制に該当する表記といえば、事業者がインフルエンサーに委託をして潜在的にPRをしてもらうものであるが、これだけが問題ではない。

直近で措置命令事例となったchocozapの事例もステマ規制の違反に該当する。

chocozapの措置命令とは?

インフルエンサーに依頼したPR案件(タイアップ案件)を、後日自社のホームページで一般体験者の口コミとして流用。あたかも一般人の口コミを装う表記として指摘を受けた。

この他にも利用者の割引サービスと引き換えに、Googleの口コミに投稿してもらうケースも「利用者に意図的に高評価を促す行為」としてステマ規制の措置命令対象となった事例もある。口コミと引き換えにサービスを提供する手法は控えた方が良さそうだ。

PR案件であるかくことを隠してインフルエンサーが投稿するものがステマ規制に当てはまると思われているが、ステマ規制の解釈はそれだけに留まらないと担当者は説明する。

「業界の中でもトップランナーである事業者、消費者から一定の知名度がある社員が自社の商品を賞賛する投稿をする場合は、投稿自体に影響力があることを考慮しなければなりません。一般消費者がその投稿に対し、どのように捉えるかが重要なので、客観的な判断が必要になります」

もちろん状況に応じてという制約があるが、どこまでがステマ規制に該当するかは判定が難しい。事業者のトップや影響力のある人間が発信する場合は、ステマ規制に該当する可能性も十分に考えておくと良いだろう。

また投稿自体に問題がない場合でも、chocozapのように投稿を別資料で活用するとステマ規制に該当する恐れがある。ステマ規制の対策を考えるだけでなく、どのような表記運用を行うべきかを話し合う必要がありそうだ。

日々情報をアップデートする

セミナーを受講したことで、改正景表法について消費者庁がどのように考えているのかを理解できた。確約手続は消費者庁の肝入りと言っても良い制度であるため、今後の動向に注目しても良いだろう。当コラムでは今後も事業者にとって有益な情報を継続的に発信していく予定だ。

(記者 山口 晃平)

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