森正弘弁護士へのインタビュー「機能するコンプライアンス担当者」

2024年07月02日

景表法コンプライアンスに必要な「ブレーキ役」の作り方

インタビュー日 2024年6月14日

事業者が適切に景品表示法(以下景表法)コンプライアンスを運用するには、事業者自身が誤った表記を掲載しないよう、事業者内部でブレーキの仕組みを構築しなければならない。 この時キーパーソンとなるのが企業法務担当者やコンプライアンス担当者だ。

しかし、ブレーキ役となるべき担当者を配置しても、事業者自身のチェック機能を果たすことが出来ず結果として景表法違反に該当してしまうケースもある。なぜ適切に機能しないケースがあるのか。デジタル広告法務に注力している初列法律事務所森正弘弁護士にお話を伺った。

初列法律事務所

https://primary-law.com/

「判断の局面」において「一歩前進」のアドバイスを提供し続ける を使命に、農業法務、データ/プライバシー法務、デジタル広告法務に特化。デジタル広告法務領域では、景品を用いたキャンペーンの設計や、表示規制、ステマ規制等への対応に加えデジタル広告契約に関する法的助言に注力する。
企業法務の最前線で鍛え上げたビジネスへの理解力、事業サイドへの明快かつ丁寧なアドバイス力を武器にクライアントの事業を全力でサポートする。

直近の措置命令で事業者が知るべきこと

事業者の内部に企業法務担当を配置するのであれば、当然に景表法に関する知識の習得が必要だ。最低限知るべき知識として、過去のNo.1表記に関する措置命令・課徴金納付命令の対象となった事業者を見ていくと良いだろう。また、近年では景品表示法務検定試験というものもあり、受験を検討しても良いかもしれない。

消費者庁はNo.1表記の景表法違反に該当する事業者の何を見ているのか。森弁護士によれば「顧客満足度No.1や◯◯部門No.1」といった定量的な評価が難しい調査項目に対して厳しいチェックをしている印象です」とのこと。満足度というキーワードは訴求力が強いものの非常に多義的であり、どのような指標を満たせば「満足度あり」とするのかという点の評価が難しいからだ。

これまで問題となった事例を確認する際に特に注目すべき事例もあると森弁護士は解説する。「健康食品の通販を行う事業者が特定商取引法(以下特商法)違反で約3ヶ月の行政処分を受けましたよね。通信販売を行う事業者は景表法違反だけでなく、特商法違反のリスクも考えければなりません」

特商法とは事業者による違法・悪質な勧誘等を防止するための法律だ。現時点では一事例に過ぎないが、今後同様のケースでNo.1表記に問題のある事業者は特商法違反で業務停止処分となるリスクがあることに気を配る必要があるだろう。

「景表法違反であれば措置命令及び課徴金納付命令になりますが、業務停止命令の業務そのものを停止させるような重いペナルティはありません。しかし、特商法違反に該当すれば業務停止命令となり、その期間営業活動が出来なくなってしまいます。通信販売の領域で「No.1」や「初」の表記を用いる場合、重いペナルティもあり得ることは考えておかなければなりません」(森弁護士)

さらにもう1つ注意点もある。「2024年3月に消費者庁が№1表示の実態調査を行う旨を発表したが、当該調査の結果、悪質な事例が多く、より実効的な取り締まりを行う必要があると判断されれば、特商法違反に加えて景表法違反も適用するという重いペナルティを課すことについて見解の整理が行われる可能性も考えられます」(森弁護士)

景表法は時代や消費者意識の高まりと共に考え方や解釈が変化し、これまで見過ごされてきた表記もNGとなることも考えられるため、本年秋頃に公表される実態調査の結果については注意しておくと良いだろう。

調査視点は客観的な視点を

No.1表記や初表記を適切に運用するためには、No.1表記が客観的な調査に基づいて実施されたことを示す資料が必要だ。No.1表記の裏付けとなる資料作りに参考になる資料が2008年に公正取引委員会が発表した「No.1表示に関する実態調査報告書」や2016年に消費者庁が発表した「比較広告に関する景品表示法上の考え方」などである。

森弁護士によれば「事前調査を適切に実施することは当然のこととして、消費者庁側の視点を事業者が持つことも重要です。どのような形で表記を精査するのか把握しておくことで誤表記を未然に防げるようになります」とのこと。

あくまで想定ではあるが、以下の流れで消費者庁が調査を実施しているのではないかと森弁護士は分析する。

消費者庁は日本に数多ある広告表記1つずつ丁寧に精査している訳ではなく、一般消費者や事業者からの通報などを端緒として調査を開始する。

「消費者庁がどのような基準で調査対象を選定しているかは不明です。ただ、全事業者をしらみつぶしに1つずつ細かくチェックすることは考えにくく、違反疑義申告フォームなどを通じた競合事業者からの指摘など一定の情報源を元に調査が開始している例も多いのではないかと考えます」(森弁護士)

その後消費者庁が潜在的に調査を実施し、問題となる事業者に対し行政処分を下すか、行政指導に留めるかを検討する。

「消費者庁は、万が一行政処分を争われて裁判に移行しても問題がないと言えるレベルの調査を行うかと思いますので、表示の根拠となる資料について徹底的に検証する可能性が高いと考えられます。事業者としては、表示の根拠となる資料がそのような厳しい検証に耐えられる程度のものかを事前に精査する必要があり、その覚悟の下に№1や初表記を行うべきでしょう。」(森弁護士)

事業者としては消費者庁の調査担当者の目線で、この表記が万が一調査対象となったとして間違ったものではないと言い切れるか考えると良い。事業者自身で検討する際は、調査に必要なサンプル数、設問の設定、得られた各種のデータから訴求したい文言を断定できるのかなど、色々な視点で調査過程を精査しておくと、自ずと適切な調査資料が作成出来るはずだ。

広告運用時の注意点

消費者庁から指摘が入っても問題がないレベルの調査を実施し、問題なく表記出来る場合でも、広告出稿時に注意しなければならないこともある。断定的な表記を記載する際は、根拠となった調査の手法も合わせて提示することだ。

インパクトを与えることを優先し、調査内容と異なる表記をしてしまえば消費者に誤解を与えてしまう恐れがある。自社製品やサービスのお客様から「№1」や「初」という表示について聞かれた際に、その表記の根拠となった調査手法や証拠についてクリアに説明ができるかを検討する必要がある。もしできなければ控えるべきだ。

問題ない表記か否かをどのような視点で判断すれば良いか。森弁護士によれば「社内の人間が広告の表示内容を判断すると、そもそも自社商品の優位性にバイアスがかかっていたり、どうしても優位性を示すために主観的な甘い評価をしてしまう恐れがあります。できる限り第三者の目線でその広告を見てどのように感じるかを評価できる担当を配置しておくことも重要です」

調査会社のコンサル担当、弁護士、社内で該当プロジェクトや該当部門から最も遠い立場にいる社員など、第三者の立場で評価できる人を配置し適切に運用を実施しておくと良いだろう。

景表法コンプライアンスの考え方

景表法の運用では、客観的な立場に立って意見を述べる法務部門やコンプライアンス部門の役割が重要となるが、うまく機能していないこともある。機能していない場合は法務やコンプライアンス担当に強い権限が与えられていないことや、個々のクリエイティブをチェックするフローや業務自体が存在しないこと、フローは存在するものの適切に機能していないことが問題と森弁護士は分析する。

「表示をチェックする担当や部門に権限がある程度必要な理由は、ブレーキ役としてしっかり機能を果たすためです。チェックする部門や担当の力が弱ければ、営業担当や広告の責任者の声が押し通ってしまい、問題の表記にストップをかけられないこともあります。また、表示に関する問題意識が社内に希薄で、クリエイティブを審査するという業務自体が存在しない場合や、法務担当やコンプライアンス担当が通常業務で忙殺されてしまい個々のクリエイティブを見ることができないケースもあるのではないかと思います」(森弁護士)

クリエイティブをチェックする担当者は若手社員のような社内でも影響力が小さい人間を配置するのではなく、きちんと「ノー」や「危ない」を伝えることのできる人間をブレーキ役として配置するのが望ましい。

「広告の表記をチェックする担当者は出来る限り一般消費者(会社の外の人間)の目線でチェックを行う必要があります。その意味ではクリエイティブ領域を担当する人物がチェックをするべきではなく、クリエイティブを制作する人間とチェックする人間のレポートラインは本来分けておく必要があります。」(森弁護士)

No.1や初を自分事に置き換え考えよう

SNSが浸透したことで、ネット広告で「No.1」や「初」の表記は当たり前のように目にするようになったが、森弁護士は「No.1」や「初」の表記は本来それなりに難しい表記であり、単にアンケートを取ったからどうとなるものでもないことを理解することも重要だと言う。

「自分事に置き換えれば分かると思いますが、テスト、スポーツ、趣味など何かのNo.1を取るにはそれ相応の努力が必要ですよね。ビジネスにおいても、同様にNo.1を取ることはそれなりにハードルが高いものであることを知れば、簡単に表記として扱えないものであることも理解できるのではないでしょうか。また仮に№1が取れなくても、競合との比較の過程で、思ってもみなかった自社の強みが明らかになることもあるかと思われ、その強みに注力した訴求方法を検討することも可能なはずです。」

確かに何かのNo.1になるためにはそれ相応の努力が必要だ。このような意識を事業者が持つだけで、調査会社が提案する「◯◯であればNo.1と言える」と簡単に提案する営業が怪しいことにも気づけるだろう。

No.1や初を表記する前に、どの項目で№1や初を取りたいのか、その項目で一番を取るために必要なKPIは何で、どのような活動に注力すべきかきちんと検討し、必要な努力に労を惜しまない正攻法で行く意識が事業者には必要かもしれない。

弁護士プロフィール

森正弘弁護士(東京弁護士会)

https://primary-law.com/attorney/
事業会社の企業内弁護士として企業法務の最前線で、あらゆる法務領域を走り回ってきた経験を活かし、ビジネスの現場と法律の境界線に存在する「最適解」を分かりやすくガイドし、アドバイスすることを得意とする。

(記者 山口 晃平)

㈱未来トレンド研究機構の方針

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株式会社 未来トレンド研究機構 「No.1」検証調査 業務担当

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会社名 株式会社 未来トレンド研究機構
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所在地 東京都千代田区九段南一丁目5番6号 りそな九段ビル5階 KSフロア
設立 1999年8月19日
代表者 代表取締役 村岡 征晃(むらおか まさてる)
事業内容 (世界初、アジア初、日本初、業界初)検証調査、No.1(検証)調査、海外調査、競合調査、未来予測のご用命は”未来トレンド研究機構(略称:未来トレンド)”へ!

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