消費者庁インタビュー「No.1調査における景品表示法」

2024年04月09日

景品表示法違反から学ぶ注意点〜行政指導等はどのような経緯で行われるのか

「(広告)表示・表記」事業者が発信した「No.1」「〇〇初」に問題があり、景品表示法違反に該当すると、消費者庁から行政指導等の対象となる。特にNo.1表記に関する行政指導・行政処分は増加傾向にあり、2024年度はさらに増加することが予想される。

企業名 問題とされた表記 実態とかけ離れた調査方法 行政指導内容
(株)バウムクーヘン 「食べさせやすさ」、「愛犬家におすすめ」「初めてでも安心」、「口コミ人気」、「長く続けられる」、 「友人にすすめ 「たい」及び「品質満足度」 の7項目で第1位を表記 各事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、事業者の会員 全員を対象に行われたアンケート 1016万円 課徵金納付命令
ハンザン 「オンライン家庭教師で利用者満足度No.1に選ばれまし た!」「第1位 オンライン家庭教師」 「口コミ人気度」 などの表記 サービスの有無を確認せずの調査/調査会社に登録している会員 全員を対象に設定した回答者数に到達するまで実施した調査等を実施 5346万円 課徴金納付命令
SGエージェント 「口コミ人気」「アフターフォロー満足度」 「コストパフォー マンス満足度」「工事品質満足度」NO.1 利用者・事業者等を把握せずWebサイトの印象を問う調査を実施 措置命令
(株)エスイーライフ 「保証・アフターサポート満足度」 「ネットで安心して蓄電池 の購入ができるショップ」 「口コミ評判」 NO.1 利用者・事業者等の確認をせず任意に選びサイトの印象をもとに 調査 措置命令
飯田グループホールディングスとその他4社 土地情報が豊富な注文住宅会社 No.1」 「高品質なのに ローコストな注文住宅会社 No.1」 「初めて住宅を建てる 方におすすめの注文住宅会社 No.1」 回答者の利用者・事業者等を確認せず、任意に選ばれた事業者の WEBサイトの印象を問う調査 措置命令
エクスコムグローバル(株) 「お客様満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」 「海外 旅行者が選ぶ No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」 「顧客対 応満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」 利用したことがある者かを確認することなく、事業者のウェブサイトの印象を問う調査 措置命令
新日本エネックス 「アフターフォローも充実の太陽光発電・蓄電池販売」、「安 心して導入できる太陽光発電・蓄電池販売」 及び 「知人に紹介 したい蓄電池販売」 実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者かを確認せ ず、新日本エネックス及び特定事業者の印象を問う調査 措置命令
安心頼ホーム 「九州エリアの蓄電池 販売施工会社 口コミ満足度」、「九州 エリアの太陽光発電 販売施工会社 口コミ満足度」 及び 「九州 エリアのエコキュート・電気温水器 販売施工会社 口コミ満足 度」 安心頼ホーム及び特定9事業者を任意に選択して対比し、各事業 者のウェブサイトの印象を問う調査 措置命令
フロンティアジャパン(株) 「北海道エリア 太陽光発電業者 アフターサポート満足度」 及 び「北海道エリア 安心・信頼できる 太陽光発電業者」で1位 を表記 実際に利用したことがある者かを確認することなく、 フロンティ アジャパン及び特定9事業者のみを任意に選択し対比し、各事業 者のウェブサイトの印象を問う調査 措置命令
(株)ハハハハハラボ 「30~60代女性が選ぶダイエットサプリ」、「一番継続し やすいダイエットサプリ」 「コスパが良いと思えるダイエット サプリ」など6項目で1位と表記 実際に利用したことがある者か知見等を有する者かを確認するこ となく当該商品と特定の9商品のみを任意に選択して対比し、各 事業者のウェブサイトの印象を問う調査 措置命令

消費者庁 報道発表資料を元に
(株)未来トレンド研究機構が作成

消費者庁の報道発表資料によれば、今年(2024年)に入り合計10件がNo.1表記に関する行政指導等対象となり、8件が措置命令、2件が課徴金納付の対象となっている。直近での行政処分で言えば、3月26日㈱バウムクーヘンに対して、1016万円の課徴金納付命令を発出した。

仮に上記の措置命令、課徴金納付命令を確認し、「措置命令であれば問題ない」と考えているようであれば間違いだ。措置命令の対象となれば、課徴金納付命令(該当期間の売上3%分)と考えて良い。一部のケースでは措置命令のみで終わることもあり、どのようなケースで課徴金対象となるか不明確と感じる「(広告)表示・表記」事業者もいるだろう。課徴金納付命令の線引きについて消費者庁 表示対策課 指導係へ問い合わせをしたところ、該当商品・サービスの売上金額が大きく関係しているとのことであった。

売上が数万円程度であれば、課徴金納付命令を発出する可能性が低くなるが、一定の売上を得た場合は、課徴金納付命令となるケースが多い。措置命令から課徴金納付命令までの過程を㈱ハンザンのケースで解説する。

㈱ハンザンの措置命令処分が発表されたのは2023年1月12日だ。この時対象となったサービスは、メガスタ高校生 メガスタ医学部 メガスタ中学生 メガスタ私立 メガスタ小学生の5つのサービス。「オンライン家庭教師で利用者満足度No.1に選ばれました!」「第1位 オンライン家庭教師 口コミ人気度」「第1位 AO・推薦入試にお勧め出来るオンライン家庭教師」など、様々なNo.1が客観的な事実に基づいた調査結果ではないことが判明した。
措置命令の段階は「該当した広告の取りやめ、該当の景品提供をやめてください」というものであった。これは一見比較的軽いペナルティのように思われる。措置命令の7ヶ月後、2023年8月1日に5346万円の課徴金納付命令が発出された。措置命令の段階では5つのサービスが該当していたが、課徴金納付命令ではメガスタ高校生(3,602万円)、メガスタ中学生(903万円)、メガスタ私立(841万円)の合計5346万円が課徴金納付対象となった。

上記から分かることは以下の3つである。

措置命令の数ヶ月後に課徴金納付命令が発出される

数ヶ月の間に課徴金納付の有無を精査する

数万円程度のものであれば対象外となる可能性が高い

2024年3月26日に課徴金納付命令が発出された㈱バウムクーヘンの例を見ても、措置命令から一定期間を経て課徴金納付命令となった。一定の売上のある商品・サービスであれば、課徴金納付命令を避けられないと考えておくと良いだろう。

本記事は2024年3月26日に実施した消費者庁 表示対策課 指導係への問い合わせ内容を元に記事を作成した。
消費者庁 表示対策課 指導係 03-3507-8800(代表)

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本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

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