中国市場への進出を検討するとき、多くの担当者がまず「どうやって調べるか」を考えます。しかし本当に成否を分けるのは、調べ方ではありません。「そもそも自社にとって中国とは何なのか」を決めないまま調査を始めてしまうことが、最大の失敗要因です。人件費の上昇や国際情勢を背景に「脱中国」が語られる一方で、中国は安く作る場所から世界最大の売り先へと姿を変えました。この記事では、これから進出を考える企業に向けて、いま押さえるべき変化と、世代・地域・ネット環境という日本とは違う市場の特徴を解説します。調査を始める前に決めるべき要点は次の3つです。
- 自社にとって中国が売る場所か作る場所か競争相手かを決める
- 中国を一つの市場として扱わず世代と地域で分けて調べる
- 日本とはまったく違うネットサービスの勢力図を前提に設計する
世界57カ国以上に100名を超える現地リサーチャーを持ち、数多くの海外調査を手がけてきた未来トレンド研究機構の知見をもとにお伝えします。
この記事のポイント
中国市場調査で最初にやるべきことは、調査手法を選ぶことではありません。「自社にとって中国は何なのか」を決めることです。かつて安く作るための「世界の工場」だった中国は、いまや世界最大の消費地であり、技術力で世界の大手に追いついた競争相手でもあります。この記事では、これから中国進出を検討する企業に向けて、①いま中国で起きている変化、②日本と決定的に違う市場の特徴、という2つの観点から、調査を始める前に押さえておくべきことをまとめます。
ちょこっと解説
Q. 中国市場の調査は、日本と同じやり方ではできないのですか?
できません。中国ではGoogleやLINEが使えず、まったく別のサービスが使われています。さらに地域や世代で消費の感覚が大きく違うため、日本と同じ設計では実態がつかめません。
Q. 「脱中国」と言われる今、進出を検討する意味はありますか?
あります。ただし目的は変わります。安く作る場所としての魅力は薄れましたが、売り先として、また技術を学ぶ相手としての重要性はむしろ増しています。
Q. 何から手をつければいいですか?
「自社にとって中国は、売る場所なのか、作る場所なのか、競争相手なのか」を決めることです。ここが曖昧なまま調査すると、費用をかけても使えないデータしか集まりません。
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本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
これから中国進出を考えるなら最初に決めるべきこと
中国市場調査というと、調査手法やツールの話から入りがちです。しかし順序が逆です。中国はこの10年で、企業ごとにまったく違う意味を持つ国に変わりました。調べ始める前に「自社にとって中国はどれなのか」を決める必要があります。
たとえば、生産コストを下げたい企業と、富裕層向けブランドを売りたい企業では、見るべき数字も、話を聞く相手も、警戒すべきリスクも違います。前者にとっては人件費や規制が中心になりますが、後者にとっては地域別・世代別の消費者の好みが最も重要です。同じ「中国市場調査」でも、目的が違えば設計は180度変わります。
この記事があえて手法の解説を後半に回しているのは、目的が曖昧なまま調査を発注すると、費用をかけても使えないデータしか手に入らないからです。まずは中国市場の変化と特徴を押さえ、自社の立ち位置を決めるところから始めましょう。
海外調査の検討時に役立つ基礎知識を網羅的に解説
海外市場にビジネス展開をする際には事前の海外調査が必要不可欠となります。日本と経済や市場の状況、文化や価値観が大きく異なるため、綿密にそれらを調べておかないと、せっかく海外に進出しても失敗してしまうリスクが極めて高く…
いま中国市場で起きている3つの変化
中国市場を考えるうえで避けて通れないのが、近年の大きな変化です。ここを押さえずに調査を設計すると、数年前の古い前提のまま動いてしまいます。特に「脱中国」「消費市場としての巨大化」「技術力の向上」という3つの動きは、日本企業の中国戦略の前提を変えました。それぞれが調査の目的にどう影響するかを見ていきましょう。
「脱中国」の流れをどう受け止めるか
まず理解すべきは、「脱中国」という言葉が独り歩きしている実態です。人件費上昇への警戒、米中対立に代表される国際情勢の不安定さ、そして「中国だけに頼らず、もう一つ別の国にも生産拠点を持っておく」という動きは確かに存在します。生産地としての中国の圧倒的な優位性が、東南アジアやインドの台頭によって相対的に下がっているのは事実です。
しかし、これを「中国から手を引く」と単純に解釈するのは危険です。移転が進んでいるのは、主に人手を多く使う低付加価値の生産です。精密な部品を短納期でそろえられる部品メーカーの層の厚さや、高度な製造能力そのものは、いまも中国に集中しています。
そのうえで、これから進出を考える企業に伝えたい結論があります。いまから「安く作る場所」を求めて中国を選ぶ理由は、ほとんどありません。人件費は上がり続け、規制の先行きも読みにくく、その目的だけなら条件のよい国が他にあります。すでに中国に工場を持つ企業が「どの工程を残すか」を考えるのとは、話がまったく違います。
これから中国を見るなら、「売る場所」または「技術を学び競う相手」として見るべきです。そして調査の目的も、そこに合わせて設計する必要があります。生産コストの調査に予算を割くより、誰に何を売れるのか、誰と戦うことになるのかを調べたほうが、投資に見合う答えが得られます。
「世界の工場」から「世界の消費者」へ
中国市場を考えるうえで最も大きな変化が、売り先としての巨大化です。中国のネット通販市場は2024年時点で約2.99兆ドル(およそ460兆円)に達し、世界のネット通販市場の5割超を占めています。日本のネット通販市場が約26兆円ですから、規模はおよそ18倍です(ジェトロ「世界貿易投資報告」)。
注目すべきは、規模だけでなく買い方そのものが変わっている点です。ブランド名に頼らず価格と品質のバランスを見る「理性消費」、気分の満足を優先する「情緒消費」、自分へのご褒美として買う「悦己消費」といった、成熟した市場ならではの消費の形が同時に生まれています。
そして見逃せないのが、中国の若者が自国ブランドを積極的に選ぶようになったことです。ある調査では、若い消費者の78.5%が「中国ブランドをより好む」と回答しました(人民網日本語版)。「日本製だから売れる」という時代は終わりつつあります。売り先として中国を調べるなら、こうした買い方の変化をつかむことが欠かせません。
技術力で世界に追いついた中国企業
3つ目の変化は、中国企業が「まねをする側」から「競争相手」に変わったことです。電気自動車、スマートフォン、AI関連の分野で、中国企業の技術力は世界の大手に肉薄し、一部では上回っています。かつての「安かろう悪かろう」というイメージは、もう通用しません。
これは、中国市場調査に「競合調査」という軸が必要になったことを意味します。中国で最も手強い相手は、他の日本企業ではなく、地の利と技術力を兼ね備えた中国のローカル企業であることが増えました。彼らの価格戦略、販売ルート、宣伝の打ち方を把握しないままでは、勝負の土俵にすら上がれません。
しかも、製品スペックを並べて比べるだけでは足りません。研究開発にどれだけ投資しているか、どんな企業と組んでいるか、特許をどう押さえているか。そこまで踏み込んで初めて、相手の次の一手が見えてきます。
海外企業を対象とした競合調査で分かる情報とは?
言葉も文化も違う海外。その市場に何も準備がないまま飛び込むのはあまりにも無鉄砲すぎるといえます。海外市場に進出する際、海外に拠点を設ける際などは、入念にその国の状況を調査し、それに合わせて戦略を立てることが大切です。とりわけ…
中国を一つの市場として見てはいけない理由
変化を押さえたら、次は中国という市場の構造を理解します。中国市場調査が難しいと言われる最大の理由は、中国を一つのまとまった市場として扱えない点にあります。世代、地域、そしてネット環境という3つの軸で、まるで複数の国が同居しているような差があるからです。ここを無視した調査は、実態とかけ離れた結論になります。
世代によって消費の価値観がまったく違う
中国では、世代の違いが日本以上に大きく出ます。特に1990年代後半以降に生まれた世代は、それより上の世代とはまったく違う買い方をします。物心ついたときからスマートフォンとキャッシュレス決済に囲まれて育ち、「見つけて、欲しくなって、その場で買う」という流れが当たり前です。
前に触れた「悦己消費」や「情緒消費」の担い手も、多くはこの世代です。一方、経済成長を実際に経験してきた中高年層は、実用性やステータスを重視する傾向が残っています。同じ商品でも、どの世代を狙うかで、伝えるべきメッセージも使うべきサービスも変わります。
調査の設計段階で世代を明確に分けておかないと、せっかくのヒントが平均値に埋もれてしまいます。
地域によって別の国ほどの差がある
世代と並んで重要なのが地域差です。中国では都市を経済規模によって「一線都市」「二線都市」といった階層に分けて考えるのが一般的です。上位の都市と地方都市では、所得も価値観も、情報の集め方も大きく違います。
| 区分 | 代表的な都市 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一線都市 | 北京・上海・広州・深圳 | 所得が高く新しいものへの反応が早い。競争が激しく価格も下がりやすい |
| 新一線・二線都市 | 成都・杭州・武漢・西安など | 所得が伸びている成長市場。一線都市よりも参入余地が大きい |
| 三線都市以下・農村部 | 地方の中核都市や県レベルの都市 | 人口のボリュームが最も大きい。地元ブランドが強く知人の口コミが購買を左右する |
一般的には、上位都市の華やかな流行に目が向きがちです。しかし市場の人口ボリュームは地方都市に集中しています。上位都市が成熟して価格競争に入る一方、伸びしろが大きいのはむしろ下位の都市です。
ここには、多くの日本企業が見落としがちなポイントがあります。「中国市場に参入した」という事例のほとんどは沿岸部の大都市に限られ、内陸部や地方都市の実態は驚くほど情報が少ないのです。自社の商品がどの階層の都市に向いているかを見極め、そのエリアに絞って調べることが差につながります。
日本とはまったく違うネットサービスが使われている
中国市場調査を難しくしているもう一つの理由が、ネット環境の違いです。中国では政府による通信規制があり、GoogleもFacebookもYouTubeもLINEも使えません。代わりに中国国内で独自に育ったサービスが、生活のすべてを支えています。
| 用途 | 中国の主要サービス | 日本で近いもの |
|---|---|---|
| 検索 | 百度(バイドゥ) | |
| 連絡・決済 | 微信(ウィーチャット) | LINE+各種スマホ決済 |
| SNS | 微博(ウェイボー) | X(旧Twitter) |
| 口コミ・写真投稿 | 小紅書(シャオホンシュー) | |
| 短い動画・ライブ販売 | 抖音(ドウイン) | TikTok |
| ネット通販 | 天猫・京東・拼多多・抖音 | 楽天・Amazon |
この違いは、調査のやり方そのものを変えます。日本のようにGoogleトレンドやSNS分析ツールで関心を測ることはできません。代わりに、百度の検索データや小紅書の投稿を見ていく必要があります。
買い方の起点も違います。中国では、影響力のある発信者が動画やライブ配信で商品を紹介し、それがそのまま購入につながる流れが定着しています。テレビCMを打つより、こうした発信者を通じて広がるほうが速い場合も少なくありません。誰に、どこで、どう届けるかを設計するには、まずこの勢力図を知る必要があります。
中国市場調査は4つのステップで進める
ここまでで市場の全体像が見えたら、いよいよ調査の進め方です。ただし手法はあくまで道具にすぎません。順番を間違えると、集めたデータが判断に使えないまま終わります。前半で整理した「自社にとって中国は何なのか」を起点に、目的の明確化から始めて、公開情報、調査手法、現地の生の声へと段階的に深めていく流れで見ていきましょう。
STEP1 何を決めるための調査かを一文にする
最初にやるべきは、調査の目的を一文で言い切ることです。「中国市場を知りたい」では調査は設計できません。「自社製品を新一線都市の20代女性に売れるか判断したい」まで絞って初めて、聞く相手も設問も決まります。
ここで効くのが、前半で決めた立ち位置です。売る場所として見るなら消費者の買い方、競争相手として見るなら競合の販路と価格。どちらを選ぶかで、同じ予算でも得られる答えがまったく変わります。目的が二つ以上あるなら、優先順位をつけて片方を主軸に据えてください。
STEP2 公開情報で仮説を立てる
目的が決まったら、いきなり調査を発注せず、公開情報で仮説を作ります。中国に拠点がなくても、ある程度の感覚はつかめます。百度で自社の商品に関するキーワードがどれだけ検索されているか、小紅書でどんな文脈で語られているか。この2つを見るだけでも、仮説の精度は大きく上がります。
このステップの目的は、答えを出すことではなく「確かめるべき問い」を絞ることです。公開情報から読み取れるのは市場の表面だけで、競合が実際にどんな条件で代理店と組んでいるかといった核心は出てきません。だからこそ、ここで問いを研いでおくほど、次のステップの費用対効果が上がります。
STEP3 アンケートとインタビューを使い分ける
仮説が固まったら、それを検証する手法を選びます。アンケートは、市場規模や購入頻度といった「全体を数字でつかむ」ための手法です。中国には大規模なアンケート回答者のネットワークがありますが、前に触れた世代差・地域差を踏まえて回答者の条件を細かく設計しないと、平均値だけを見て判断を誤ります。
インタビューは「なぜそう考えるのか」を掘り下げる手法です。気分や感情が購買を動かす中国市場では、数字の裏にある理由を聞き出す価値が特に高くなります。理想は、アンケートで全体像をつかんだうえで、インタビューでその理由を確かめる二段構えです。
なお、日本語の設問をそのまま翻訳して使うのは避けてください。聞き方ひとつで回答は偏ります。現地の言葉と文化を理解した人が設問を作れるかどうかが、調査の質を決めます。
STEP4 現地のキーマンから非公開の情報を取る
最後が、現地のキーマンへの直接取材です。私たちがネットに頼らない調査を重視するのは、中国市場で本当に価値のある情報の多くが、公開されていない領域にあるからです。競合の販売ルート、代理店に支払われている手数料の水準、地方の流通の実態。こうした情報は、現地の人脈を通じてしか手に入りません。
業界に詳しい人物への直接ヒアリングは、市場の空気感、規制が実際にどう運用されているか、競合が次に何をしようとしているかといった、数字には表れない情報をもたらします。ここが、机の上の調査と現地調査の決定的な差です。
もちろん、言葉の壁も文化の壁も人脈の壁もあります。だからこそ、現地に精通したリサーチャーのネットワークを持つ専門機関に価値があります。
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中国ならではの調査ルールと3つの注意点
中国市場調査を進めるうえで見落とされがちなのが、法律とルールのリスクです。中国には独自の規制があり、知らずに踏み込むと大きなトラブルになりかねません。特に注意すべき3点を、調査設計の段階で確認しておいてください。
集めた個人データを国外に持ち出せるか
最も注意すべきは、個人情報の取り扱いです。中国には日本の個人情報保護法にあたる法律があり、中国国内で集めた個人データを国外に持ち出す際には厳しいルールが定められています。違反すれば高額な罰金や事業停止のリスクを負います。
アンケートで消費者データを集めるなら、そのデータをどこのサーバーに保管し、誰がどう扱うかを発注前に確認してください。「データは日本に送ってもらう」という前提が、そもそも成立しない場合があります。
設問が敏感な領域に触れていないか
調査のテーマや設問が、政治的・社会的に敏感な領域に触れないよう配慮することも重要です。日本では何の問題もない表現が、現地では回答を歪めたり、調査そのものが止まったりする原因になります。
歴史認識や政治体制に関わる話題はもちろん、所得や居住地の聞き方にも配慮が要ります。設問を作る段階で現地の感覚を持つ人にチェックしてもらうのが、最も確実な予防策です。
日本にはない手続きが発生しないか
中国国内向けにウェブサイトを公開する場合、当局への届け出が必要になるなど、日本にはない手続きが発生します。調査の一環でランディングページを立てる、現地でモニターを募集するといった場面で、思わぬところに手続きが挟まります。
こうしたルールを理解したうえで調査を設計できるかどうかが、リスクを避ける分かれ目になります。スケジュールを引く際は、手続きに要する期間もあらかじめ見込んでおきましょう。
中国市場調査の費用と期間はどれくらいかかるか
進め方が見えたところで、気になるのが費用と期間です。結論から言えば、調査手法・対象地域・サンプル数によって大きく変わるため、一律の相場を示すことはできません。ただし、どのステップまで踏み込むかで金額の桁が変わるという傾向ははっきりしています。
調査の深さごとの費用と期間の目安
先ほどのSTEPと対応させると、費用感はつかみやすくなります。あくまで目安として捉えてください。
| 調査の深さ | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| STEP2まで(公開情報の収集のみ) | 数十万円〜 | 2〜4週間 |
| STEP3まで(簡易なネットアンケート) | 数十万円〜100万円前後 | 3〜6週間 |
| STEP3を精緻化(世代・地域を細かく分けたアンケート) | 100万円前後〜 | 1〜2ヶ月 |
| STEP4まで(現地インタビューや訪問調査を含む本格調査) | 数百万円規模 | 2〜3ヶ月以上 |
中国特有の事情として、期間は日本国内の調査より長めに見ておく必要があります。翻訳と設問のチェックが挟まること、そして前章で触れた当局への届け出などの手続きが発生する場合があるためです。スケジュールには2週間ほどの余裕を持たせておくと安全です。
金額だけで比べると判断を誤る理由
ここで注意したいのは、費用を外注費の金額だけで判断してはいけないという点です。自社で調査を行えば外注費はかかりませんが、担当者が中国市場を学び、現地とやり取りし、データを分析する時間と人手が必要になります。この人件費を数えると、外注のほうが安く済むケースは珍しくありません。
安さだけで判断せず、その調査が経営判断にどれだけ役立つかという視点で見極めることが重要です。
【海外調査のコスト】費用相場と時間的コストと人的コスト
海外にビジネス展開をするためには、その国の市場の状況やニーズの有無、トレンド、文化などを知っておく必要があり、それらを把握するための調査は必須です。自社で海外調査を行えない場合は海外調査をアウトソーシングするという方法があり…
どこまで自社でやり、どこから任せるか
費用の話になると、多くの企業が「自社でやるか、調査会社に頼むか」の二択で考えます。しかし中国市場調査では、この分け方自体が実態に合っていません。現実的な答えは、STEP1〜4のどこまでを自社で担い、どこから外部の手を借りるかという線引きです。
前半のステップほど自社で対応しやすく、後半に進むほど現地の人脈と専門知識が必要になります。目的の明確化は外注できませんし、逆に現地キーマンへの取材を社内でこなすのは現実的ではありません。
| ステップ | 自社対応 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| STEP1 目的の明確化 | ほぼ自社 | 経営判断そのもの。外注できない領域 |
| STEP2 公開情報の収集 | 自社で可能 | 中国語が読める人材がいるかで難易度が変わる |
| STEP3 調査手法の決定と実施 | 一部自社 | 簡易アンケートは自社でも可。世代・地域を細かく分けるなら外部 |
| STEP4 現地の一次情報 | 外注が現実的 | 人脈と言語の壁が高く、社内での再現が難しい |
判断の軸は金額ではなく、その調査が何を決めるためのものかです。市場の感触をつかむ段階なら自社で十分ですが、進出の可否や投資額を左右する判断の根拠にするなら、専門家に任せるほうが結果的に確実です。個人情報の規制対応を誤れば、費用を抑えるどころか大きな損失につながります。
まとめ
これから中国市場に進出するなら、調査手法を選ぶ前に「自社にとって中国とは何なのか」を決めてください。安く作る場所としての魅力はすでに薄れており、いま中国を見るべき理由は、世界最大の売り先としてか、技術で競う相手としてかのどちらかです。目的が決まれば、調べるべきことは自然に絞られます。
そして、中国を一つの市場として扱わないことです。世代によって買い方が違い、地域によって所得も価値観も違い、使われているネットサービスも日本とはまったく別物です。「中国の消費者はこうだ」というひとまとめの理解が、最大の落とし穴になります。
中国市場は複雑で、変化も速く、法律面のリスクも伴います。だからこそ、現地を知る専門家の存在が意味を持ちます。未来トレンド研究機構は、世界57カ国以上に100名を超える現地リサーチャーのネットワークを持ち、市場の深いところまで踏み込んだ調査から、戦略の立案、現地キーマンへのアポイント獲得、商談への同行までを一貫してご支援しています。中国市場調査でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。無料相談も承っております。
記事に関連するQ&A
Q. 中国に拠点がなくても市場調査はできますか?
できます。百度の検索データや小紅書の投稿を見れば、拠点がなくても関心の動きや口コミの傾向はつかめます。ただし、これで分かるのは市場の表面だけです。競合の販売条件や地方の流通実態、現地キーマンの生の声といった情報を得るには、現地にネットワークを持つ専門機関の力が必要になります。目的に応じて、自社で調べる部分と外注する部分を分けるのがおすすめです。
Q. 中国市場調査で日本と最も違う点は何ですか?
市場が一つにまとまっていない点と、使われているネットサービスがまったく違う点です。中国では世代と地域で消費の価値観が大きく分かれており、「中国の消費者」とひとくくりにできません。またGoogleやLINEが使えず、百度・微信・小紅書・抖音といった独自のサービスが生活を支えているため、日本の調査手法やツールがそのまま使えません。この2点を前提に調査を組み立てる必要があります。
Q. 進出の目的が「安く作ること」でも中国は選択肢になりますか?
いまから新たに参入する場合、その目的だけで中国を選ぶ理由は薄いと考えられます。人件費は上昇を続けており、規制の先行きも読みにくいためです。ただし、精密な部品を短納期でそろえられる部品メーカーの層の厚さは、いまも中国が突出しています。求める品質や納期の水準によっては十分に選択肢になりますので、他国と条件を並べて比較したうえで判断してください。

本コラムの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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