業界シェアの正しい調べ方とは?

2025年10月14日 更新日:2025年11月21日

ビジネスの現場において業界シェアを把握することは、新規事業や市場参入、マーケティング戦略の立案、競合分析など、あらゆる意思決定の出発点となります。しかし、「どの情報が正しいのか」「自分たちの目的に適したシェアはどうやって調べればいいのか」と悩まれる担当者の方も少なくありません。 この記事では、業界シェアを正確に調査・活用するための基本から、実務で役立つ情報源、AI時代ならではの注意点まで、具体的に解説します。

この記事のポイント

業界シェアの調査は、目的(会議用、新規事業、PRなど)と仮説を明確にすることから始まります。活用目的に応じて、調査会社レポート(高信頼性・高コスト)、シンクタンク資料、公的統計(総務省・経産省)、日経業界地図などの情報源を使い分け・組み合わせることが重要です。
特にPRや重要な意思決定には、出典が明記された信頼性の高いデータを採用し、AI検索結果は必ず一次ソースの確認を行う必要があります。また、同一業界に縛られず、市場全体の需要(マーケットシェア)を捉える視点も不可欠です。

ちょこっと解説

業界シェアとは?

特定の業界や市場における、各企業・製品・サービスの売上高や出荷量などを基準とした占有率です。市場での自社のポジションや競合との力関係を客観的に把握するための指標です。

業界シェアは自分で調べられる?

はい、調べられます。ただし、活用目的によって、無料の公開情報(政府統計、日経業界地図、企業のIRなど)で十分か、専門の調査会社やシンクタンクの有料レポート(高精度・高信頼性)が必要かが異なります。正確性が求められる場合は、複数の信頼できる情報源を組み合わせて調査します。

関連するキーワード

  • ♯市場調査
  • ♯競合調査
  • ♯市場シェア
  • ♯市場調査レポート
  • ♯シェアNo.1

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

業界シェアとは

業界シェアとは、ある特定の業界や市場における各企業・製品・サービスの占有率を指します。たとえば売上高や出荷量、取扱件数などを基準に、「市場全体の中で自社がどれくらいの割合を占めているか」を数値で表現します。

業界シェア率は、企業の市場ポジションを客観的に把握し、競合他社との力関係や成長余地を分析する上で必要不可欠な指標です。特に新規参入や事業拡大を検討する際、客観的なデータとして経営判断に用いられます。

マーケットシェア(市場シェア)との違い

「業界シェア」とよく似た言葉に「マーケットシェア(市場シェア)」があります。厳密にはどちらも市場でのシェア率を示す言葉ですが、「マーケットシェア」は市場全体における自社の占有率、「業界シェア」はより狭い意味で業界やカテゴリ単位での比率という意味合いで使い分けられることがあります

より詳しいマーケットシェアの解説については、下記の記事もご参照ください。

あわせて読みたい

市場占有率とは?データとして有効活用するためのポイントを解説

競合調査で調査したい指標の一つに市場占有率というものがあります。これを把握することでさまざまな戦略立案に役立てることができますが….

活用目的によって調査内容は異なる

業界シェア率の調査方法は、「調べたデータをどう活用したいか?」によって大きく変わります。たとえば、自社の会議や参考情報として大まかなイメージをつかみたいだけなら、インターネット上に公開されている無料データや記事を活用するだけでも十分なケースがあります。しかし、新規事業への本格参入や競合優位性の証明、マーケティング戦略の根拠としたい場合、信頼性・客観性の高い数値が求められます。

特に「業界シェアNo.1」などPR目的で調査したい場合は、調査方法や出典の信憑性が社会的にも問われるため、必ず公的な調査資料や第三者によるレポートが必要です。 調査目的に応じて、どのような情報ソースや手法を選ぶべきか慎重に判断しましょう。

業界シェア率の調べ方

実際に業界シェア率を調査するには、どのような情報源を活用すれば良いのでしょうか?結論から言えば、「手軽さ」「正確性」「コスト」「情報の網羅性」などの観点から、自社の目的に合った調査方法を組み合わせることがポイントです。ここでは主な情報収集の手順と、それぞれの特徴・メリット・注意点について詳しくご紹介します。

調査会社に依頼する・調査会社資料を調べる

最も信頼性の高い情報を得たい場合は、専門の調査会社への依頼やコンサルティングファームによるレポートやデータベースを活用するのが有効です。弊社をはじめとする市場調査や業界調査を専門とした調査会社に依頼すると自社での活用目的を考慮し、最も目的達成の近道となる調査が可能です。また、富士経済、矢野経済研究所、野村総合研究所、ミック経済研究所などが発行する業界別市場調査レポートは、調査手法や出典が明記されており、根拠となる数値として幅広くビジネス現場で利用されています。

ただし、多くの場合有料であること、最新のデータ入手には一定の費用と時間がかかる点も押さえておきましょう

シンクタンクのレポートを調べる

シンクタンクや大手コンサルティング会社が公開している業界レポートも有力な情報源です。たとえば、三菱総合研究所、野村総合研究所、日経リサーチなどは、各業界の市場規模や主要プレイヤーのシェア構成などを定期的に発表しています。

公的な統計や独自調査の両方を用いたレポートも多く、業界全体のトレンド把握や競合比較の資料として活用しやすいのが特徴です。大規模な業界や先端分野については、英語レポートも視野に入れるとより精度の高い分析が可能です。

その他公開情報を調べる

その他、一般に公開されている情報源もいくつか存在します。ただ、情報の粒度や鮮度はまちまちです。情報を確認し、分析、戦略を立案する際にはその情報の正確性や自社の目的に合っているかどうかなどの観点を意識して確認すると良いでしょう。

総務省・経済産業省の統計データ

政府省庁(総務省統計局、経済産業省など)が提供する統計データも、客観的な業界シェア分析には欠かせません。総務省統計局や経済産業省の公式サイトでは、業種別の売上高・従業員数・出荷量など詳細な統計が公開されています。

無償で利用できる上、信頼性が高く、出典を明記できるのもメリットです。ただし、調査項目によっては膨大なデータとなるため、必要な指標を抽出・整理するスキルと作業が求められます。

総務省統計局 経済産業省統計

日経業界地図ー日経新聞社

日経新聞社が毎年発行している『日経業界地図』は、主要な産業分野ごとに市場規模や各社のシェアを図解・一覧化した人気の書籍です。新入社員研修や営業戦略の立案時に活用されることも多く、業界全体の構造をつかみたい場合に非常に便利です

最新版を購入するか、図書館やビジネス書店で閲覧すると良いでしょう。

日本業界地図(公式サイト)

主要商品・サービスシェア調査ー日経新聞社

同じく日経新聞社が発表している「主要商品・サービスシェア調査」は、消費財やB2B商材など主要カテゴリごとに企業別のシェア率をランキング形式で公開しています。市場の動向や業界再編、リーディングカンパニーの最新動向などをタイムリーに把握できるのが特徴です

主要商品・サービスシェア調査(日本経済新聞)

業界動向ー帝国データバンク

帝国データバンクでは、各業界の動向調査や市場レポートを定期的に発表しています。業界全体の売上高推移、主要企業の動向、新興勢力の台頭など、シェア分析のヒントとなる最新トピックがまとめられており、業界ごとの景気感や課題をつかむのに役立ちます

帝国データバンク業界動向

業界団体・協会の発表資料

特定業界の公式団体や協会が発表する調査報告や年次レポートも有用な情報源です。たとえば、自動車工業会や医薬品工業協会などが挙げられます。統計データや市場シェアのほか、業界のトレンドや課題を解説した資料を定期的に公開しています。信頼性が高く、全体像を俯瞰しやすいのが魅力です

日本自動車工業会 など、業界別に公式サイト検索

各社の情報を調べる

主要企業のIR(投資家向け情報)や決算資料を比較することで、業界内での各社の売上高や出荷量、市場占有率などを自身で分析することも可能です。上場企業は決算短信や有価証券報告書で詳細な事業別売上を公表しており、それらを複数社分ピックアップして集計・比較することで、おおよそのシェア構成を算出できます

その他、特定業界やニッチ分野の場合、公式サイトのニュースリリースやプレス発表も参考になります。

AIで調べる業界シェア率

近年、ChatGPTなどAI検索サービスを活用して業界シェア率を調べるケースも増えています。しかし、AIによる自動検索結果にはいくつか注意点があります

たとえば、「検索エンジンの国内シェア」をAIに質問した際、信頼性の高い公式データではなく、個人のブログや「note」記事などを根拠として挙げてしまう場合もあり得ます。たとえ「信頼性の高い数値を引用してください」と指示しても、AI側がどの情報を一次ソースとみなしているかを見極める必要があります。

AIは情報の収集や整理には便利ですが、公式なビジネス資料として用いるには、出典元の確認とクロスチェックが必須です

業界シェアを調べる際の注意点

簡易的な情報を知りたいだけの場合は別として、企業が業界シェアを求める際には、必ず「目的と仮説の明確化」と「”同一業界”に縛られない」の2点を抑えましょう。調査会社だからこそ言えることとして、漠然とした市場調査ほど意味のないものはありません。

目的と仮説の明確化

業界シェアを調べる前に必ず目的と仮説を明確にしてください。算出されたデータの中で、なんの数値を中心に何を分析し、どう生かしたいのかをはっきりさせることが重要です。中には「コンサルの指示で調べた方がいいといわれ…」というご相談をいただくこともありますが、目的を追求すると明確なものを持たないことも多く、調査を断念されるお客様もいらっしゃいます。調査はあくまで手段であり目的ではないことを認識しましょう

”同一業界”に縛られない

同一業界とは同様のサービス群であり、市場における需要に対しては別業界の参入が起こり得ます。写真を撮りたいという需要に対するカメラ業界のシェアはほとんどがスマホに奪われました。テレビでさえ、SNSに市場をとられかけています。

明確な目的と仮説を前提に、調査するべき対象を正確にとらえることが目的達成の一番のカギとなります。その意味でも業界シェア以上にマーケットシェア、市場船体を把握することの方が重要度が高いといえるかもしれません。

正しい業界シェア率を把握するには

業界シェア率の調査には、目的に応じた情報源選びと、データの信頼性・客観性のチェックが欠かせません。ネット上の簡易情報から有料レポート、公式統計や調査会社による調査まで、複数の手法を組み合わせることで、より正確な全体像が見えてきます。

特にビジネスの意思決定やPR、対外説明に活用する場合は、「どの調査会社・機関のデータか」「出典が明示できるか」を必ず確認し、裏付けのある数字を根拠として採用しましょう

よくある質問

自社の業界シェアを自分で計算する方法は?

「自社の売上高÷ 業界全体の売上高× 100」で計算できます。計算方法が正しくても、正確な数値を引用しないと結果がずれるので注意が必要です。

業界シェア1位なのが分かったらPRに活用できますか?

1位の場合はPRが可能です。ただ、自社調べでの1位は客観的根拠がないものと判断され、ほぼ間違いなく消費者庁から指摘を受けるでしょう。ホームページや広告などに1位やNo.1を表したい場合は必ず第三者機関による調査・証明が必要です。

自社は関係なく、特定の業界シェアのランキングを見るにはどうしたらいいですか?

本記事で紹介しているような公開レポートを確認することをおすすめします。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

関連コラム

  • 競合他社との差別化は本当に必要?差別化の本質を捉えるには
  • 競合他社の情報収集方法7選
  • 【競合他社の見つけ方】闇雲に同業者をリストアップしても意味はない
  • 企業が海外市場を開拓するための方法とポイント
  • 市場占有率とは?データとして有効活用するためのポイントを解説
カテゴリー
おすすめ記事
  • 競合他社との差別化は本当に必要?差別化の本質を捉えるには
  • 競合他社の情報収集方法7選
  • 【競合他社の見つけ方】闇雲に同業者をリストアップしても意味はない
  • 企業が海外市場を開拓するための方法とポイント
  • 市場占有率とは?データとして有効活用するためのポイントを解説
Pick Up!
  • マーケティング戦略のための市場調査・競合調査にお悩みなら
  • 完全独自インタビュー
  • 最先端市場の市場調査レポート