競合他社の価格調査を成功させる方法

2025年04月23日

競合他社の価格調査を成功させる方法

競合他社と比較して自社製品やサービスの価格設定は適切なのか…これは常に検討していかなければならない課題です。消費者のニーズや市場環境は日々変化し、価格の決定には原価、競合の状況、市場全体の状況、社会情勢、ターゲットの属性など多様な要素の分析が求められます。特に競争が激しい分野では、価格調査による根拠のある意思決定が売上や利益に直結します。本記事では、価格調査の基礎から応用、実践ポイントまで、丁寧に解説していきます。

本コラムで得られる情報

価格調査の必要性

価格調査に用いられる手法

価格調査を実施するうえでのポイント

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

価格調査とは

価格調査とは、自社の製品やサービスの価格を決定・調整するために、競合他社の価格、消費者の購買動向、市場の価格帯などを詳細に調べ、比較・分析する活動です。近年では、オンラインショップや価格比較サイトの普及により、消費者自身も複数の商品を手軽に比較できる時代となりました。そのため企業側も、競合の価格動向を継続的にモニタリングし、リアルタイムでデータを収集する必要があります

価格調査は「競合価格を把握して適切な販売戦略を立てたい」「新製品のリリース時に市場ニーズとギャップがない価格設定を行いたい」といった場面で実施されます。価格次第で売上や利益は大きく左右されるため、決して適当に決めるべきではありません。正確な調査データに基づいたプライシングは、企業の売上・利益・ブランドイメージを大きく左右する重要な経営判断なのです

価格調査の前に知るべきこと

価格調査を成功させるには、まずプライシングの全体像や影響を与える要素、調査の目的やゴールをしっかり理解することが不可欠です。ただ競合の価格を調べるだけではなく、消費者ニーズや自社の強み、さらには外部環境の変化を総合的に捉える視点が求められます。

価格を決定するプライシング

プライシングとは、製品やサービスの価格をどのように設定するかを決定する活動全般を指します。売上や利益を左右するだけでなく、ターゲット顧客の購買意欲や競合他社との競争力にも直結するため、極めて戦略的な意思決定です。価格を決める際には「原価」「競合」「顧客の属性」「市場ニーズ」など多様な視点から比較検討する必要があります。

プライシングの考え方

プライシングに影響する要素

価格決定に影響を与える要素は多岐にわたり、主に「競合他社の価格」「消費者が感じる価値や価格帯イメージ」「製品・サービスのブランド力」「ターゲット市場のニーズ」「コスト構造」「流通チャネル」「外部環境(法規制・経済情勢)」などがあげられます。価格調査によってこうした多様な要素を客観的に数値化すれば、戦略的なプライシングの根拠となります。

 競合の設定価格の把握

 消費者の価格に対するイメージの把握

 価格変動への対応

競合の設定価格の把握

競合他社がどの価格で同種の製品・サービスを提供しているかは、プライシング戦略を練るうえで不可欠な情報です。競合の価格設定にはその企業のブランド戦略やコスト構造、市場ポジションが反映されているため、自社との比較を通じて価格帯の妥当性を評価できます。

また、競合の価格改定やキャンペーン情報をタイムリーにキャッチし、自社の販売価格に活かすことで競争優位を保つことができます。調査対象の競合範囲も、市場全体からニッチなターゲットまで幅広く設定しましょう。

  

消費者の価格に対するイメージの把握

価格調査では、消費者がその製品やサービスに対して「いくらなら買いたい」と考えているかという“価格感度”の調査も不可欠です。

消費者アンケートや購買データの分析から、どの価格帯が売れ筋なのか、逆に高すぎて購入が敬遠されている価格帯はどこなのかを把握することで、自社の最適価格のヒントが見えてきます。消費者心理は市場やトレンドに左右されやすいため、定期的なリサーチが好ましいです。

  

価格変動への対応

市場の状況は常に変化しており、原材料費や流通コストの上昇、季節要因、為替変動などによって相場が変動することも珍しくありません。そのため、競合価格や市場価格の変動にも素早く対応できる柔軟な価格戦略が求められます。

一度設定した価格でも、状況変化に応じて調査結果を再検証し、必要に応じて価格を見直すサイクルを組み込むことが成功の鍵です。競合が大幅な値下げをした際の対応策なども事前に想定しておきましょう。

 

プライシングの戦略

プライシング戦略には、狙う市場シェアやブランドポジション、顧客層ごとにさまざまな型があります。ターゲットとするニーズや自社の強みに合った戦略を選び、価格競争力と利益バランスを両立させることが重要です。

プライシング戦略の比較図

ペネトレーションプライス

ペネトレーションプライスとは、市場参入時にあえて低価格で設定し、短期間でシェアを拡大する手法です。大量販売によるスケールメリットでコストを下げ、競合他社を圧倒する戦略ですが、利益率の低下や価格競争の激化リスクもあるため、撤退タイミングや段階的な価格改定の計画も重要です。特に新規市場や新商品投入時に効果的な戦略として活用されています。

  

スキミングプライス

スキミングプライスは、新商品や独自性の高い製品を市場導入時に高めの価格設定からスタートし、時間の経過や市場拡大にあわせて徐々に価格を下げていく戦略です。最初はイノベーターやアーリーアダプターといった感度の高い顧客をターゲットにし、初期段階で収益を確保する狙いがあります。競合が増えてきた段階で徐々に価格を調整し、シェア拡大を図るのが特徴です

  

コストプラス

コストプラス方式は、製品やサービスの原価に一定の利益率(マージン)を上乗せして価格設定するシンプルかつ基本的なプライシング手法です。コスト構造が明確な場合に効果的ですが、市場ニーズや競合価格とのバランスを無視すると、消費者に選ばれにくくなってしまうというリスクがあります。定期的なコスト見直しと、競合との比較による価格検証が重要となります。

 

プライシングが難しい理由

プライシングが難しい理由は、外部環境の変化・競合の動向・消費者ニーズの多様化など、影響を与える要素が複雑に絡み合うからです。従来の経験則や単純な原価積み上げでは最適解が見つかりにくく、時には自社が気付かないうちに市場とズレが生じてしまいます。
さらに、価格設定は単なる計算結果ではなく、マーケティング戦略やブランディング、販売プロセス全体にも影響するため、幅広いデータの収集・分析と市場の変化に応じた柔軟な意思決定が欠かせません。

プライシングと価格調査の密接性

プライシング(価格決定)と価格調査は切っても切り離せない関係にあります。プライシングの精度を高めるためには、市場全体や競合の価格、消費者の受け止め方、価格に対する許容度や動向データを収集し、徹底的に分析する必要があります。価格調査の質が高ければ高いほど、価格決定の根拠や説得力が増し、経営戦略のリスクを最小限に抑えることができます。

逆に、調査が不十分なままプライシングを行うと、想定外の競合や顧客ニーズの見落としによってシェア喪失や値下げ競争に巻き込まれるリスクが高まります。情報を制する者が市場を制する。現代のビジネスでは、データと分析に基づく価格戦略が求められます。

価格調査の手法

価格調査には多様な手法があり、調査目的やターゲット顧客、製品ジャンルによって最適な方法を選択することが重要です。代表的な方法としては、Webアンケートによる大規模データ収集、対面調査による深堀り、インタビューや街頭調査による生の声の収集などが挙げられます。

Webアンケートは幅広い消費者層から短期間で大量のデータを取得できる、対面調査やインタビューならリアルな消費者心理や購入動機の深掘りができるなど、それぞれの手法に特性があります。自社製品のターゲットや販売チャネルに合わせ、複数手法を組み合わせて精度の高い調査を実施しましょう

価格調査において注目されている分析手法

市場が複雑化する昨今、価格調査の現場では、より高度なデータ分析の手法が求められるようになっています。特に、消費者の価格感度や選好を科学的に把握し、最適な価格帯を導き出すPSM分析・CVM分析・コンジョイント分析といった手法が注目されています。

 

PSM分析

PSM(Price Sensitivity Meter)分析は、消費者が「この価格なら高い」「この価格なら安い」「この価格であれば妥当である」と感じる価格帯を明らかにするためのリサーチ手法です。アンケートで「どの価格までなら買うか」「どの価格なら高すぎるか」といった複数の質問を設定し、回答データから最適な価格帯や価格設定の“許容レンジ”を数値的に把握できます。

PSM分析は特に新製品や価格改定時、競合との価格差を消費者がどう評価しているかを客観的に比較するのに有効です。この手法を活用することで、競合他社の設定価格との差別化や、市場全体の価格感度を反映した戦略が実現できます。

PSM分析の図解

CVM分析

CVM(Contingent Valuation Method)分析は、消費者が新しいサービスや製品に対して「どの程度の価格なら価値を感じるか」という“支払意思額”を測定する調査手法です。主にアンケートやインタビューを通じて、「このサービスに月額いくらまでなら支払うか」「この製品を購入する際に適正だと感じる価格はいくらか」などの設問を設け、仮想的な市場評価を行います。

CVM分析によって消費者が潜在的に求めている価値と価格のバランスを把握でき、価格設定の説得力や顧客満足度向上に寄与します。競合他社や既存サービスと比較しながら新規サービスのニーズや受容性を検証する際にも効果的です。

CVM分析の図解

コンジョイント分析

コンジョイント分析は、製品やサービスの複数要素(スペックや特徴)ごとに消費者がどの程度の価値を感じているかを明らかにする調査手法です。複数の属性(価格、機能、デザイン、ブランド名など)を組み合わせた商品プランを提示し、どの組み合わせが最も選ばれるかを分析します。

どの機能や特徴がターゲット顧客にとって“購入決定の決め手”となるのかを明らかにでき、競合と自社の強みを比較しながら最適な価格帯や商品企画に活かせます。新商品の開発やリニューアル、差別化ポイントの特定にも活用される現代的な手法です。

コンジョイント分析の表

価格調査の流れ

価格調査は目的の明確化から始まり、調査手法・分析方法の選定、実際のデータ収集、分析、意思決定という一連のプロセスで進行します。各フェーズで「誰を対象に、何を知りたいのか」「どの競合・市場を比較するか」「どのデータやツールを使うか」を具体的に計画し、調査結果に基づいた戦略立案を行うことが重要です。

 目的の明確化

 分析方法の決定

 調査方法の決定

 調査を行い分析する

 意思決定

 

目的の明確化

まずは価格調査を行う目的をはっきりさせます。新製品の適正価格決定、既存商品の価格改定、市場の価格動向把握など、目的によって必要なデータや分析の深度が変わります。

 

分析方法の決定

目的達成に必要な分析方法を選定します。PSM・CVM・コンジョイント分析など、手法ごとの特性やメリット・デメリットを理解し、ターゲットや調査項目に合った方法を選びます。

 

調査方法の決定

分析方法に基づき、Webアンケート・対面調査・グループインタビュー・POSデータ分析など、具体的な調査手段を決定します。コストや時間、調査対象の規模も考慮します。

 

調査を行い分析する

実際に調査を実施し、収集したデータを集計・解析します。競合他社の価格、消費者の価格認知、販売動向など多角的な視点で検証を行います。

 

意思決定

調査分析の結果をもとに、最適な価格設定や販売戦略を策定します。意思決定には市場動向や競合の対応も織り込む必要があります。

価格調査の情報収集方法

価格調査の情報収集は自前での手動調査・ツール活用・調査会社への委託といった複数の方法があります。それぞれコストや精度、タイムリーさ、客観性など特徴が異なるため、目的や自社リソース、必要なデータ量に応じて使い分けることが重要です。

 

自前、手動で行う

店舗やECサイトを直接チェックしたり、競合他社のカタログやチラシ、公式Webサイトを目視で調査したりする方法です。小規模・短期間の調査にはコストを抑えつつ細かな情報を得ることができますが、調査範囲やタイムリーさには限界があります。頻繁な価格改定や多品種展開の市場では、手作業だと時間と労力がかかり、網羅性やデータ精度にバラつきが出るリスクもあります。

 

価格調査ツールを使用する

IT化が進む中で、Webスクレイピングや価格自動収集ツールの活用が拡大しています。主要な競合他社や複数ECサイトの価格変動データをリアルタイムで取得・可視化できるため、膨大なデータを短時間で比較できるのが特徴です。ツールの選定時は「どのサイトに対応しているか」「分析機能の有無」「費用対効果」なども検討しましょう。

社名 ホームページ 特徴
プライスサーチ https://pricesearch.jp/ ・細かな検索設定による高いデータ精度
・自社のプライシング戦略に合わせた提案
らくらく最安更新 https://saiyasu.greenwich.co.jp/ ・情報収集から調整、反映まで自動化
・様々なオプション機能付き
価格調査のミカタ https://www.kakaku-mikata.jp/ ・月額料金1万円からと低価格
・提供している会社自身が販促品ECサイトを運営している
Pricewalker https://www.keywalker.co.jp/web-crawler/price-crawler.html ・ShtockDataによる高精度なクローリング
・40,000SKU以上のデータ抽出も可能
prisync https://prisync.com/ ・情報管理がしやすいダッシュボード
・手厚いカスタマーサクセス
Price2Spy https://www.price2spy.com/ ・価格以外のデータも取得可能
・複数通貨の管理
Skuuudle https://skuuudle.com/pricing-intelligence ・高性能なスクレイピング
・効率的なデータ取得
Minderest https://www.minderest.com/competitor-price-monitoring ・各管理ツールと連携可能
・無制限のアラート設定が活用できる
価格・料金 調査  

調査会社に発注

専門の調査会社に委託する方法は、社外の第三者から客観的かつ信頼性の高いデータを得られるのが強みです。競合調査や消費者リサーチと組み合わせて分析の幅を広げられるだけでなく、専門家による分析やレポーティングも期待できます。コストはかかりますが、社内リソースやノウハウが足りない場合や、意思決定の根拠を客観的に提示したい場合に最適です

価格調査のポイント

価格調査を効果的に行うためには、調査目的・競合の正確な選定・適切な分析手法・最新データの収集・価格変動への柔軟な対応が不可欠です。特に「誰と比較するか」を慎重に見極めることが、調査の成功可否を分けます。

 競合の正確な選定

 目的に合わせた戦略、分析手法の選択

 戦略、分析手法に合わせた調査手法の選択

 価格は常に変動する

 

競合の正確な選定

調査対象となる競合他社の選び方次第で、調査結果の意味合いは大きく変わります。消費者にとって明確に「選択肢」になっている競合を正確に定義し、自社と比較したいポイント(価格帯・機能・ブランド・流通チャネルなど)を明確にしましょう。業界に精通した第三者の視点や消費者調査も活用し、的外れな比較を避けることが大切です。

 

目的に合わせた戦略、分析手法の選択

「どんな判断を下すための調査なのか」を明確にし、目的に応じて戦略や分析手法を選択します。新商品の最適価格の発見、価格改定のインパクト検証、競合への対応など、ケースごとに最適な分析が異なります。調査結果を有効に活用するためにも、社内のマーケティング戦略と一体で計画しましょう。

 

戦略、分析手法に合わせた調査手法の選択

分析手法が決まったら、調査方法もそれに合わせて選定します。大量の定量データが必要ならWeb調査やPOSデータ、深いインサイトを得たい場合はグループインタビューやエスノグラフィ調査(行動観察)など、多角的に手法を組み合わせることで調査精度を高められます

 

価格は常に変動する

市場相場は競合や市場環境、季節要因、消費者のトレンドなどにより日々変化しています。一度の調査で満足せず、定期的にリサーチと分析を重ねて最新の情報を経営判断に活かしましょう

競合調査の中でも重要性が高い価格調査

競合調査の中でも特に価格調査は、販売戦略の要ともいえる重要な位置づけです。消費者の購買行動は「価格」と直結しており、とりわけ競合との比較が瞬時にできる現代では、リアルタイムでの価格調査と迅速な対応力が求められます。

他社との価格差を把握し、どの価格帯にニーズが集中しているかを的確に捉えることで、無理な値下げ競争を避けつつ自社の利益を最大化する戦略を立てることが可能です。顧客からの信頼やブランドイメージ向上にも直結しますので、ぜひデータに基づいたプライシングを意識しましょう。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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