海外進出において現地調査が重要な理由とは?

2024年08月08日

海外進出において現地調査が重要な理由とは?

現地調査は海外進出をする際に欠かすことができない工程です。しかし、特に海外市場への参入経験がない企業の経営者の方や担当者の方の中には、「何からすべきか」「どんな方法があるのか」と悩まれている方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、企業が海外進出を成功させるための現地調査の重要性と具体的な方法について詳しく解説します。海外調査の種類、調査を行うメリットを押さえて信頼性の高い情報を収集し、リスクを最小限に抑えた効果的なビジネス戦略の立案に役立てましょう。

本コラムで得られる情報

海外調査の方法

海外進出/展開における現地調査の目的と重要性

海外進出/展開における現地調査のメリット

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

海外調査の種類

国内、海外に関わらず、市場調査は大きく定量調査定性調査に分かれます。

定量調査は数値データの収集を目的とし、大規模なアンケートや統計分析を用います。定性調査は深い洞察を得るために、インタビューやフォーカスグループなどを使用します。市場調査はさらにこの2つのなかでさまざまな手法に細分化され、具体的なニーズや目的に応じて適切な方法を選択する必要があります。

たとえば、新製品の受容性を評価するためのネットリサーチや、消費者の使用感を評価するホームユーステストなどがあります。

信頼できるデータを取得するためには、事前に目的を明確にし、適切な手法を選ぶことが重要です

ネットリサーチ

ネットリサーチは、インターネットを活用してオンラインでアンケートや調査を行う方法です。コストが比較的低く、短期間で大規模なデータを収集することができます。対象者の属性や行動履歴を詳細に把握できるため、ターゲットマーケティングに有効です

会場調査(CLT)

会場調査(CLT)は、特定の場所に参加者を集めて行う調査方法です。新製品の試用や広告の視聴など、実際に体験してもらいながら意見を収集します。対象者の反応を直接観察できるため、深い洞察を得ることができます

ホームユーステスト(HUT)

ホームユーステスト(HUT)は、消費者に自宅で製品を使用してもらい、その感想や意見を収集する方法です。実際の使用環境でのフィードバックを得ることができるため、製品の改良や市場投入前の評価に役立ちます

郵送調査

郵送調査は、アンケート用紙を郵送し、回答を回収する方法です。特定の地域や属性の人々に対して行うことができ、インターネットが普及していない地域でも有効です。回答側の手間がかかるので回答率を高めるためには、報酬やクーポン、商品券等インセンティブの提供が効果的です

街頭調査

街頭調査は、街頭で直接人々にアンケートを行う方法です。幅広い対象者からリアルタイムで意見を収集できるため、市場のリアルな声を反映したデータを得ることができます。特に特定の場所やイベントでの消費者行動を把握するのに適しています

FAX調査

FAX調査はアンケートをFAXで送信し、回答を回収する方法です。一般消費者というよりは主にBtoB市場で利用されることが多く、特定の企業や業界の意見を集めるのに適しています。電子メールが普及している現代でも、老舗企業などFAXを好む層には有効です。

電話調査

電話調査は、電話を通じて直接対象者に質問を行い回答を得る方法です。回答率が高く、詳細な質問を行うことができるため、深い洞察を得ることができます。ただし、時間とコストがかかる点に注意が必要です。

現地調査

現地調査は、実際に現地に赴いて市場や消費者の動向を調査する方法です。地域特有の文化や消費行動を直接観察できるため、現地市場に特化した戦略立案に有効です。対象地域について詳しくない場合は現地パートナーの協力を得ることが成功の鍵となります。

インタビュー調査

インタビュー調査は対象者に対して直接インタビューを行い、詳細な意見や感想を収集する方法です。個別面談やグループインタビューなどがあり、いずれも対象者の深層心理や動機を探るのに適しています。質の高いデータを得るためには、質問内容に工夫する、経験豊富なインタビュアーを起用する、特典等を用意するといった工夫が必要です。

オブザベーション調査

オブザベーション調査は、対象者の行動や環境を観察し、そのデータを収集する方法です。消費者の自然な行動を把握できるため、製品の使用状況や店舗内での行動を分析するのに適しています。現場のリアルなデータを基にした分析が可能です。

海外で行う現地調査とは

上述した通り、現地調査とは、企業が海外市場に進出する際に、現地の市場環境や消費者動向を直接調査することを指します。現地調査で得られたデータは地域特有の消費者のニーズや競合状況を把握し、戦略的な意思決定をする際の判断基準として役立ちます。

海外進出時には特に重要な調査であり、現地の文化や習慣を理解するために欠かせません。ここからは、海外で現地調査を行う意味や重要性、手に入れられる情報などを詳しくご紹介します。

現地調査の重要性

現地調査の重要性

現地調査は、海外市場に進出する企業にとって極めて重要です。日本企業がまず海外に進出する場合、現地の文化や生活習慣を把握し、それに応じたマーケティング戦略を構築することが求められます。また、競合他社の動向や市場シェアを分析することで、自社の立ち位置を明確にし、競争優位性を高めることが可能です。

さらに、法規制や物流インフラなど、ビジネス運営に関わる重要な情報を入手するためにも現地調査は欠かせません。適切な調査を実施することで、リスクを最小限に抑え、成功確率を高めることができます

海外で現地調査を行う目的

海外で現地調査を行う目的は、現地市場の特性を深く理解し、戦略的な意思決定の材料を収集することです。具体的には、消費者ニーズの把握、競合状況の分析、法規制の確認などがあります。これによりリスクを低減する対策が打て、成功への道筋を明確にすることができます。

予備調査との整合性

予備調査とは、海外進出を検討する際に国内で可能な範囲でターゲット市場を分析・調査する行為のことを指します。

この予備調査では参入を検討しているエリアの

  • 市場の動向や競合企業
  • ユーザーニーズ
  • 経済状況
  • 法規制
  • 税制

など、幅広い情報を収集します。

しかし、予備調査だけでは現地の詳細なニュアンスや文化的な違いを完全に把握することは難しいということも把握しておかなければなりません

たとえば、消費者の微妙な嗜好の違いや現地特有のビジネス慣習などは、実際に現地に赴いて初めて理解できることが多いです。そのため、予備調査の結果を現地調査と照らし合わせ、認識の違いや調査項目の限界を補完し、ビジネスプランをより具体的で実行可能なものに昇華させることが重要です

人・人材の見極め

オンラインでも容易にコミュニケーションできるツールは数多存在しますが、やはり人とのコミュニケーションを取るうえでは対面でしか把握できない情報も多く存在します。現地のパートナーとの関係構築や現地雇用を考える際の労働者の質、取引先や顧客との対等なやり取りの可能性など、調査の時点で確認すべき点は多岐にわたります。

特に現地のビジネスパートナーが信頼できるかどうかは、実際に会って話をすることでしか判断できない場合が多いです。また、現地の労働市場の特性や労働者のスキルレベルを把握するためには、現地での面接や観察が必要です。

事業を指揮し成功に導くのは人である以上、現地調査で現地の人材を深く理解し適切な判断を下すことが求められます

海外で現地調査を行うメリット

海外で現地調査を行うことで現地の社会情勢や治安を正確に把握でき、情報の鮮度を保ちながら、現地特有のルールや慣習について理解を深められます。

現地の労働環境や住環境を直接確認できるため、より精度の高いビジネス戦略を立てることができます。ここからは海外進出前に現地調査を行うことのメリットを5つ詳しくご紹介していきます。

  • 治安や情勢を正確に把握できる
  • 情報の鮮度が高い
  • 暗黙の了解などの現地のルールを把握できる
  • 解像度の高い気付きを得られる
  • 労働環境・住環境の実態を把握できる

治安や情勢を正確に把握できる

海外での現地調査を通じて治安や現地情勢を正確に把握することができます。予備調査だけでは得られない現地の最新情報を直接収集することで、ビジネスのリスクを最小限に抑えることが可能です

たとえば、治安の悪いエリアや政治的な不安定要素を現地で確認することで、進出先のリスクを適切に評価し対策を講じることができます。これによって安全かつスムーズな事業展開が期待できます。

情報の鮮度が高い

アンケートやデスクリサーチなどの調査は、回答を収集しデータ化するまでにタイムラグが生じます。また、回答が過去の記憶をたどって行われる場合や、古い・あいまいなデータが混在する可能性があるため、情報の鮮度を高く保つのは簡単ではありません。

現地調査ではリアルな情報を体験的に収集できるため、情報の鮮度は非常に高いです。たとえば、現地の市場トレンドや消費者の最新の動向を直接観察しリアルタイムで把握することができます。鮮度の良い情報を迅速に集めて分析をおこなうことで、適切なビジネス戦略を立案することが可能となります。

暗黙の了解などの現地のルールを把握できる

法規制や税制などのルールは予備調査で比較的把握できますが、業界独特のルールや地域特有のルールも存在します。現地の人々にとって常識となっているルールが守られないと、信用を損なう可能性があります。

現地調査を実施すれば実際に現地でビジネスを行う際の暗黙の了解や非公式なルールを理解し、適切な対応を準備することができます。こうした言外のルールや空気感などを知ることは、現地のビジネス環境にスムーズに適応し、信頼関係を築くことに繋がります。

解像度の高い気付きを得られる

予備調査の調査報告書やその過程では気づけなかった細かな情報を得ることができます。実際に現地に赴き、状況を把握することで、実際に海外に展開した時のイメージとの擦り合わせを行うことができます

現地の店舗やオフィスの雰囲気、消費者の表情や行動などは、オンラインやレポートではなかなか把握しづらいですが、ビジネスにおいては非常に重要な要素です。

現地の細かい部分まで解像度高く観察することで事前に注意すべき点や新たな発見が得られ、より実践的なビジネス戦略を立てることができます。

労働環境・住環境の実態を把握できる

現地調査を通じて労働環境や住環境の実態を直接確認することができます。たとえば、現地のオフィス環境や労働条件、住居の状況などを実際に視察することで、従業員の生活や働きやすさを理解することができます。

現地での雇用計画や従業員の福利厚生に適切な対策を講じることが可能となり、現地での事業運営が円滑に進むでしょう

海外で現地調査を行うには?

海外での現地調査を成功させるためには、まず自社の状況を正確に把握し現地の協力者や支援機関を活用することが重要です。また、民間調査会社の活用も有効な手段となります。これにより、現地の最新情報を効率的に収集でき、ビジネス戦略の精度の向上につながります。

こちらでは、海外で現地調査を行う際の方法を4つご紹介します。

自社分析

自社で海外市場の調査分析を行う方法です。インターネットで対象地域の人に対して調査したり、自社で調査チームを組んで現地に派遣したりといった方法が一般的です。

自社で現地調査を行う際、参入前であれば現地に詳しいコーディネーターやビジネスパートナーに帯同を依頼することを強くおすすめします。自社の強みや弱み、ターゲット市場におけるポジションを把握してから現地で調査することで、進出先でどのように競争力を発揮できるかが明確になります

たとえば、技術力が強みである場合、その技術が現地市場でどのように受け入れられるか、対象地域のニーズに合っているかを分析します。

現地在住者にオンラインで依頼

現地在住者にオンラインで調査を依頼する方法は現地の最新情報を迅速かつ低コストで入手できるため多くの企業で活用されています。信憑性の高い情報を得るために現地の文化や市場動向に詳しい人々から直接情報を収集しましょう

たとえば、現地の消費者トレンドや競合他社の動向を直接インタビューすることで、予備調査では得られない詳細な情報を収集できます。オンラインでの調査は新規事業の検討段階、あるいは現地に足を運ぶ前の初期段階で非常に有効です

支援機関の利用

日本貿易振興機構(JETRO)や地方自治体の支援機関を利用することで、専門的なアドバイスや現地情報を得ることができます。これらの機関は企業の海外進出をサポートするために豊富なデータベースやネットワークを持っており、コストも比較的抑えめであるというメリットがあります

たとえばJETROの現地事務所を訪れれば、現地市場の動向や競合分析、法規制の最新情報を得ることができます。他にも、中小企業基盤整備機構、各自治体の商工会・商工会議所、政府系金融機関といった機関が支援を行っています。

民間調査会社を利用

民間の調査会社に調査を依頼することで、専門的かつ詳細な現地調査を実施することができます。これらの会社は企業の海外進出のサポート経験も豊富で、現地に精通したスタッフを抱えており、深い市場分析や消費者調査を行うことが可能です

現地の市場調査や消費者行動分析を依頼すれば、ターゲット市場の詳細なデータを入手できます。他の方法と比べると費用はかかりますが、正確で信頼性の高いデータを得ることで進出後のリスクを大幅に軽減することができ、より具体的なミッション立案に役立つでしょう。

価値ある現地調査で海外進出を成功させよう

海外進出を成功させるためには、現地調査が欠かせません。自社分析や現地在住者へのオンライン調査、支援機関や民間調査会社の利用を通じて、最新かつ正確な情報を収集しましょう。

事前調査を綿密に行うことでリスクを最小限に抑え、現地の市場環境に適応したビジネス戦略を立てることが可能です。自社で調査のリソースがない、海外調査のノウハウがないという場合は、専門の調査会社活用がおすすめです

未来トレンド研究機構では世界各国に海外リサーチャーが在籍しており、57カ国以上の調査に対応可能です。現地調査もサポートし、実りあるデータ収集と的確な戦略立案を実現いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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