海外でのインタビュー調査を行うメリット

2024年07月02日

海外でのインタビュー調査を行うメリット

市場調査においては消費者や業界をよく知る人へのインタビューも非常に有効です。どのような人が顧客になり得るのか、ユーザーはどのような悩みやニーズを持っているのか、既存商品にどのような課題点があるのかなど、インタビュー調査によってさまざまな情報を得ることができます。

一方でインタビュー対象者の選定や設問、質問のしかたなどを間違えると期待した回答が得られないといったリスクもあります。特に言語や文化、価値観が異なる海外でのインタビューは非常に難易度が高いです。

この記事では海外でインタビュー調査を行う利点や方法、調査を成功させるためのポイントについて解説します。

本コラムで得られる情報

海外インタビューの重要性

海外インタビューを実施する意義

海外インタビューを成功させるポイント

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

インタビュー調査とは

インタビュー調査とは対象者に質問をして、その回答から得られた情報を分析するという調査方法です。対象者の考え方や価値観、行動などをインタビュー調査で深堀りすることができます。

同じく対象者に質問して思考や行動を分析する調査としてアンケート調査があります。アンケート調査は定量調査に分類され、人数や割合を数量によって分析し、全体像を把握するのに向いています。一方、インタビュー調査は定性調査であり、言動や感情など、数値に表すことが難しい情報を把握することができます。

また、インタビュー調査は、オンラインもしくはオフライン、さらには、デプスやグループなど、様々な種類があり、状況にあった調査を行うことで、より正確な情報の収集が可能です。

オンラインインタビュー調査とオフラインインタビュー調査

近年の海外インタビュー調査の需要の高まり

特に海外市場に展開する際には現地のマーケットの状況や消費者の動向を把握しておくことが重要です。また、国内だけではなく現地、あるいは第三国の競合とも戦っていかなければならず、よりシビアな戦略立案が求められるでしょう。

そうした状況下で顧客となりえる人にインタビューを行うことで、現地の消費者の価値観やニーズを深堀りすることが可能です。また、競合となる企業の内部者や関わりが深い人に対して行うキーマンインタビューを実施すれば、市場の状況や競合企業の実情を知ることができます。インタビュー調査によって得た現地のリアルな情報は、海外進出時の差別化戦略やマーケティング戦略などの立案に大きく役立つことでしょう。

海外インタビュー調査の需要の高まり

海外インタビュー調査のメリット

インタビュー調査はインタビューアーと直接対話をする必要があり、インターネットを利用して実施できるアンケート調査と比較すると手間や費用がかかります。そのうえでリソースを割いて海外インタビュー調査を行う必要性はどこにあるのでしょうか?

ここからは海外インタビュー調査を行うことで得られるメリットについて考えていきましょう。

①海外市場理解の深化

②競合との差別化

③成功確率とリスクヘッジ

①海外市場理解の深化

海外では文化や消費者のライフスタイル、価値観、ニーズ、あるいは市場の規模や状況や競合の状況も、日本のそれとは大きく異なります。

現地で生活している消費者、あるいは現地の市況を知り尽くしているキーマンにインタビューすることで、アンケート調査で得られた数値やデータだけではない、リアルな情報を得ることができます

特に文化や考え方、感情や行動原理といった情報はインタビュー調査を行うからこそ得られる情報です。これらは現地の消費者のニーズに合わせた商品戦略や販売戦略、マーケティング戦略などの立案に大きく役立つはずです。

②競合との差別化

消費者にインタビュー調査を行うことで、ダイレクトに消費者のニーズや現状の商品・サービスに対する不満点などを聞くことができます。

特に海外では経済状況や社会情勢、人々の価値観や考え方が大きく異なるため、それらをしっかりと把握しておくことが大切です。また、そのうえで現地の競合企業とは異なる視点で戦略を立案することで、大きな差別化が図れる可能性もあります

③成功確率とリスクヘッジ

海外市場やその国の特徴、国民性への深い理解はより正確な戦略立案に役立つだけでなく、ビジネスの成功にもつながります。

海外へのビジネス展開には大きなリスクがあります。海外進出に失敗した事例も少なくありません。その多くが、その国の地域性や国民性に対する理解不足に起因しています。

「現地だからこそ」の習慣や価値観、流通やトレンドなどを把握することで、失敗するリスクを軽減し海外進出に成功する可能性が高まります。そして、こうした情報を得るためには定量調査だけでは不十分で、インタビュー調査などの定性調査も必要不可欠です。

海外インタビュー調査のやり方

以上で海外インタビュー調査の必要性やメリットについて解説してきました。海外進出をする際には消費者やキーマンにインタビューを実施して現地の事情や状況を詳しく把握することが非常に重要となってきます。

正確な、あるいは戦略立案に役立つ情報を得るためには、調査のやり方が非常に重要となってきます。ここからはインタビュー調査の大まかな流れについて解説します。

海外インタビュー調査のやり方

インタビュー対象者の選定

海外インタビューの調査では対象者の選定が非常に重要となります。まずは調査の目的を明らかにしましょう。

たとえば顧客のニーズや言動を知りたい場合は、顧客ターゲット層に当てはまる人、既存商品のユーザーなどが対象となります。一方、ブランディング戦略や新規顧客開拓戦略の立案を目的とするのであれば、むしろターゲット層とは異なる属性の人にインタビューする必要があるかもしれません。また、現地の市況や競合の状況を把握するということであれば、競合他社の関係者やそれに近しい人を対象とする必要があります。

このように、調査の目的を踏まえたうえで調査対象者を選定しないと、なかなか期待した結果が得られません

インタビュー内容の設計

インタビュー調査においては質問の内容も非常に重要となってきます。こちらに関してもやはり調査目的をしっかりと定めた上で検討していく必要があります。

たとえば顧客のニーズを深堀りするのであれば、競合商品の使用状況や現状において満足している点、不満に感じている点、消費者の行動や価値観、ライフスタイルなどを深堀りできるような設問を設計する必要があります。

特に海外インタビュー調査の場合、対象者は当然ながら言語や文化的な背景が異なる人ということになるため、日本語をそのまま現地語に翻訳したとしてもニュアンスが伝わらない場合もあります。現地の言葉や文化に精通した専門家と連携しながら質問の作成や翻訳を行うことも重要です。

インタビューの実施

インタビューの実施にあたっては事前の計画が非常に大切となります。事前に対象者に対してインタビューの目的や内容を伝えておくことで、より的確な回答が得られる可能性が高くなります。また対象者やインタビュー実施者のスケジュールを調整し、場所や通訳を手配するといった実務も必要でインタビューの最中には対象者に対して極力中立な立場で質問することが重要です。質問者の偏見が入った質問のしかたをする、あるいは特定の回答を誘導するような質問を行うと、回答も偏ってしまうおそれがあります。

データ集計と擦り合わせ

インタビューを実施した後はインタビューデータをテキストなどにまとめ、必要に応じて加工して分析を行います

また、アンケート調査などの定量調査を実施している場合は、その結果も含めてすり合わせしておくことが重要です。たとえばアンケート調査の結果を踏まえ、それを深堀りするような内容をインタビューで聞くことで、定量調査と定性調査の結果がすり合わせしやすくなり、海外調査全体の精度も上がります。

海外インタビュー調査を成功させるポイント

海外インタビュー調査は国内のそれとは大きく勝手が異なるため、以上のようなさまざまな注意点があります。一方で、海外の消費者やキーマンの生の声は海外外進出するにあたっては非常に強力な武器となりえます。

ここからは海外インタビュー調査を成功させるためのポイントについてご紹介します。

海外インタビュー調査を成功させるための3つのポイント

①調査方法を理解する

インタビュー調査といってもさまざまな手法があり、目的に応じて適切なものを選ぶ必要があります。主に「デプスインタビュー」「グループインタビュー」「オンラインインタビュー」という3つがありますので、それぞれの特徴について押さえておきましょう。

デプスインタビュー

デプスインタビューはインタビュアーが対象者と1対1で行う形式のインタビュー調査です。他の人がいないため、対象者が他者の意見に意見に流されにくい、デリケートな内容も質問できて深堀りがしやすいといったメリットがあります。一方で、得られる情報が個人的な見解となるため市場の全体像を把握しにくい、複数人に対して同時にインタビューを行うグループインタビューと比較するとコストがかかるといった点がデメリットです。

グループインタビュー

グループインタビューとは複数人の対象者に対して同時にインタビューを行う方式です。座談会形式で、自由に意見を発言してもらいます。お互いが刺激し合うことで活発に自分の意見を言ってもらえる効果が得られる、デプスインタビューと比較してコストが安くなるといった点がメリットです。しかし、デプスインタビューと比較すると意見を深堀りしにくい、他者の意見に影響を受けやすくなるといった難点もあります。

オンラインインタビュー

オンラインインタビューとはZoomやSkypeなどのオンライン通話システムを使ってインタビューを実施する方式です。遠隔にいる人、多忙でスケジュールが調整しにくいキーマンとも通話できる、会場費や交通費がかからずグループインタビューよりもさらにコストを抑えられるといった点がメリットです。一方で対象者がオンライン通話をできる環境が整備されていることが前提であることと、身振りや手振り、表情などの言葉以外の情報が得られにくいといったデメリットもあります。

②インタビュー後のフォローアップ

インタビューを実施した後には必ず感謝の意を示し、調査結果を共有するなどのフォローアップを行いましょう。たとえばインタビュー調査を行った結果、不明確な点やさらなる疑問点が生じた場合にフォローアップしておけば追加で確認することが可能です

また、インタビュー対象者は事業を展開した後に顧客やビジネスパートナーになり得ます。信頼性を高めておくことで、海外展開が有利になる可能性もあります。また、再度別のテーマで調査が必要になった際にも、協力を得られやすくなるといった点もメリットです。

③国内でのインタビューとの違いを理解する

海外インタビュー調査と国内インタビュー調査の違いをしっかりと把握して、それに対応・対策しておくことで、円滑なインタビューが可能となり、調査の精度を高めることにもつながります。特に以下のような違いを意識しておきましょう。

  • 現地生活への認識(風習・宗教・時間感覚)
  • 帯同者の存在(現地スタッフ・同時通訳者)
  • 対象者の呼集
  • スケジュール調整
  • インタビュー環境の状態

現地生活への認識(風習・宗教・時間感覚)

まずは現地の風習や宗教、時間感覚などについてしっかりと把握しておきましょう。日本では良しとされていることが、海外ではタブーにもなり得ます。逆に日本ではタブーなことでも、相手国では当たり前であるケースも少なくありません

たとえば契約社会である欧米では、インタビューの時間がオーバーする事態は非常に嫌われる傾向があるため、しっかりと時間内に収める必要があります。また、日本人は約束の時間をきっちりと守り、遅刻を許さない傾向がありますが、国によっては約束の時間に遅れてインタビュー対象者が到着するといったケースもあります。

帯同者の存在(現地スタッフ・同時通訳者)

海外インタビュー調査においては帯同者の存在が非常に大きいです。インタビュー対象者はインタビューに対して不安を持っています。インタビューを実施するスタッフが現地の事情を熟知していて取材スキルや情報整理力、コミュニケーション能力が高ければ、インタビュー対象者からの信頼も得られ、有益な回答を引き出すことができるようになります

また、通訳が帯同する場合は通訳のスキルにも着目してみましょう。前述のとおり、国によって文化や価値観も異なるため、単純に日本語を現地語に訳しても、逆に現地語をそのまま日本語に訳しても、細かいニュアンスなどが伝わらない可能性があります。少しでも通訳の言語スキルに不安を覚えた場合は交代してもらったほうがベターです

対象者の呼集

インタビュー調査は可能な限り多くの対象者を集めましょう。対象者の都合など想定外の事態で調査が実施できないこともしばしばあります。

サンプル数が少ないと、調査の精度が下がってしまいます。必要なサンプル数よりも多くの人数を招集されることをおすすめします。調査期間中に対象者が不足するよりも、むしろオーバーするくらいのほうが理想です

スケジュール調整

スケジュール調整もインタビュー調査の肝です。調査期間中は1日に複数の対象者に対してインタビューを実施するケースも多いのですが、なるべく余裕をもって1日のスケジュールを組みましょう。過密すぎると1件遅れるとその後のスケジュールがすべて狂ってしまいかねません。

また、前述のとおり時間に対する感覚は国によって異なり、遅刻が当たり前となっている国や地域もあります。それも考慮した上でスケジュールを組まれることをおすすめします。

インタビュー環境の状態

インタビューを実施する場所や環境にも配慮しましょう。たとえばガヤガヤしたような場所ではお互いの声が聞き取りにくい、周囲が気になって落ち着いて話せないなどの弊害が生じる可能性があります。対面でインタビュー調査を行う場合は、対象者が落ち着いて、本音で話せるような場所を確保しましょう

オンラインであれば対象者のデバイスの状態やOS、使用するオンライン通話システム、回線の状況などを確認しておくことが大切です。特に海外ではネット環境の整備が遅れているケースもあり、途中で切断されてしまうといったケースもありえます。可能であれば事前に接続テストなどを行いましょう。

確実に現地の声を集めるには

海外インタビュー調査を実施すれば、現地の消費者やキーマンの生の声が聴け、それが今後の商品戦略や販売、マーケティング戦略の大きなヒントになり得ます。ビジネスを海外に展開される際には必ずインタビュー調査を実施されることをおすすめします。

しかし、言語や文化、価値観、社会情勢などが異なる海外でインタビュー調査を行うのは容易ではありません。そこで、調査のプロに任せることをおすすめします。

未来トレンド研究機構は海外調査の実績も豊富で、インタビュー調査をはじめアンケート調査や文献・オンライン調査など、幅広い手法に対応しています。これまで57カ国以上の調査実績があり、世界各国に100名以上の現地リサーチャーが滞在しているため、その国や地域に合わせた適切な調査が可能です。調査の計画から準備、実施、データの活用、戦略の立案まで、すべてサポートいたします。

無料相談も実施しておりますので、海外インタビュー調査でお悩みごと、課題点がございましたらお気軽にご相談ください。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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