2024年06月14日
アジア進出を成功させるために市場調査が重要なわけとは
海外での事業展開は国内よりも格段にハードルが高くなります。市場の状況や消費者のニーズ、動向、トレンド、文化などが日本とは大きく異なるからです。そのような状況でビジネスを成功させるためには事前の市場調査が必須といえます。比較的文化が近いアジアにおいても例外ではありません。
この記事では海外進出を検討されている企業の経営者様や事業担当者の方ために、市場調査の重要性について解説。中国やタイ、ベトナム、インドネシアなどアジア各国の経済状況についてもご紹介します。
・企業のアジア市場進出について
・アジア進出にける市場調査の重要性
・アジア諸国の状況
本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
目次
そもそも市場調査とは
市場調査とは特定の市場がどのような状況にあるのか?自社の商品やサービスが市場においてニーズがあるか?競合と比較してどのような立ち位置にあるか?を調査することです。アンケート調査、ネット調査、メール調査、インタビュー調査、フィールド調査などさまざまな手法で調査を行います。
また、ただ調査するだけでは意味がありません。収集したデータや情報を分析して商品開発や販売、マーケティングなどの戦略を立案することで調査が活きてきます。データ・情報の活用も含めてはじめて市場調査の意味があるのです。
海外調査
海外調査では現地の市場の状況や競合の状況、消費者のニーズや動向を調査します。加えて販売チャネルや流通、法規制なども日本とは大きく異なるため調査が必要となります。
調査の手法としては国内の市場調査と同様、アンケート調査、ネット調査、メール調査、インタビュー調査、フィールド調査がメインとなります。ただし、海外は言語も違えば、文化も違います。設問を現地の人に理解できるように翻訳し、アレンジを加える必要があります。フィールド調査により、よりリアルな情報を集めようと思えば、国内での市場調査とは難易度が全く違います。
特に海外調査の場合は手間やコスト、時間がかかるため、国内の市場調査以上に綿密にスケジュールを立てタスクを実行していくことが重要です。
日本企業の海外進出状況
今やグローバルの時代であり、加えて少子高齢化が進んで国内市場はどんどん縮小しているため、海外市場への進出も視野に入れないと生存するのが難しくなってきています。
政府統計のポータルサイト『e-Stat』によると、日本企業の海外現地法人数は2021年度には2万5千社以上となっています。現地法人を設立せずに海外展開している企業も含めると、相当な数の企業が海外と接点を持っていると考えられます。
これまでは円高の影響でコストが安い海外に生産拠点を置くケースが多かったのですが、近年では国内市場の縮小から販路拡大を目的として海外市場に進出している企業が増えてきています。
アジアを中心とした展開
進出先のトップ5は現地法人数が多い順に中国、アメリカ、タイ、ベトナム、インドネシアとなります。経済成長著しい中国が1位、世界一の経済大国であり同盟国であるアメリカが2位となっています。現地法人数を見ると中国は7,000社以上、アメリカは約2,900社で、倍以上の開きがあります。
やはり中国は人口が多く、経済も発展して国民の所得も上がっていることから、生産拠点であると同時に巨大なマーケットとしても捉えられている傾向があります。アメリカに関しては現在中国と首位争いをしていますが、世界一のマーケットであり、アメリカ市場で成功すれば世界各国で信頼性や知名度が得られるという側面もあるため、多くの企業はまず中国とアメリカに進出するケースが多いです。
アジア進出数増加の訳とは
進出先のトップ5のうち4カ国はアジアとなっています。他にもシンガポールや韓国、インドなど、アジアを海外進出先として選んでいる企業は非常に多いです。では、なぜ企業はアジアに進出したがるのでしょうか?
その理由としてはまずマーケットの将来性が挙げられます。特に中国、東南アジアは経済成長が著しく、早期に進出して市場内でイニシアチブがとれれば、大きな利益が得られるチャンスがあります。
加えて地理的な要因も大きいです。アジアは比較的距離が近く行き来も欧米に比べると時間も費用もかかりません。また、日本と東アジアや東南アジアの国々とは時差がほとんどなく、現地法人とコミュニケーションがとりやすいです。
経済的、地理的という2つの要因から、まずはアジアに進出して、それから欧米など他の地域に進出しようと考える企業が多いといえます。
アジア進出における市場調査の重要性
新しい事業を行う上で、あるいは新しい市場や地域に参入するうえでは市場調査は必須といえます。前述のとおり、その市場の規模や状況、消費者のニーズ、トレンド、競合の有無などの情報が揃っていて、はじめて適切な商品やサービスの開発、あるいは販売やマーケティングなどの戦略立案が可能になるからです。
海外進出であればなおさらです。今はネットでさまざまな情報が入手できるので、海外の情報も簡単に得ることができます。しかし、市場の状況や消費者のニーズ、トレンドなどの情報は現地で見て・人から話を聞いて、あるいは体感しないとなかなか得ることはできません。
また、以下のような点も海外への進出を難しくしている理由であり、これらをしっかりと押さえておく必要があります。
アジアの国ごとの違いを理解する
アジアと一口に言っても国によって、あるいは地域によって経済状況や市場の状態、消費者の動向はまったく異なります。たとえばタイとベトナムは隣同士の国ですが、タイでの販売戦略やマーケティング戦略がそのままベトナムに適用できるとは限りません。調査によってその国や地域ごとの状況をしっかりと把握しておくことが大切です。
価値観の違いを理解する
アジアは日本と近いため、比較的文化が似通っている部分があります。それでも国によって価値観は大きく異なり、それによって消費者の動向やニーズ、トレンドも変わってきます。日本では大ヒットしている商品をそのままその国に持っていってもなかなか売れない可能性があります。また、国によって当然法律は異なりますが、これにも注意が必要です。たとえば日本で売れるものでも海外では売れなかったり、日本では許されている商売の方法が海外では許されなかったりするケースもあります。その国の価値観や法律も、しっかりと理解しておきましょう。
暗黙の了解を把握する
上記のような価値観や文化、法律の違いに加え、明文化されていない“暗黙の了解”というものも把握しておくことが大切です。
たとえばタイは王国であり、国王がとても大切にされています。国王を侮辱した場合、批判の的になるだけでなく侮辱罪に問われるおそれもあります。また、タイでは子どもの頭に精霊が宿るとされていますので、たとえば子どもの頭を撫でるような広告を出稿したらやはり批判を受けるおそれもあります。
その国の習慣や伝統、宗教などについても把握しておくことが重要です。
アジア主要国の経済市場
以上でアジア進出時における市場調査の重要性についてご説明しました。特にアジアは世界の中でも近年著しい経済発展を遂げている地域ですが、国によって市場や経済の状況も異なります。
最後に中国、タイ、ベトナム、インドネシアというアジア主要国の経済状況について、簡単に見ていきましょう。
【アジア進出候補】中国
14億人もの人口を擁する中国。GDPで見れば2010年には日本を追い越し、アメリカを追随する世界第二位の経済大国に発展しました。新型コロナ禍においても世界各国が軒並み経済停滞している状況にあるなかで、中国だけは成長を遂げていたほどです。
かつては人件費が安く国土も広大であるため世界の工場的な存在でしたが、近年では国民の所得が大きく向上し、世界一大きなマーケットになりつつあります。
【アジア進出候補】タイ
東南アジアの中でも経済成長著しいタイ。特に日本企業が多く進出しています。タイは東南アジアの中心に位置し「ハブ」と呼ばれる位置づけになっているのです。東南アジア各国に進出する礎として、まずタイに進出するという戦略は海外進出の鉄板と言える戦略です。
ヒト・モノ・カネが集まるタイには、タイ人向け、東南アジア諸国の人々向け、そして現地に駐在する日本人向けなど、さまざまなマーケットが存在します。
【アジア進出候補】ベトナム
ベトナムの人口は6億人と、ASEAN諸国の中でも多くの人が住んでいる地域です。特に若い人材が多く、多くのベトナムの若者が日本に働きに来ています。人材と資源が豊富なことから、ベトナムに生産拠点を置いている日本企業も多いです。
特に南部のホーチミンはベトナム最大の経済区域であり、人口も多いことから非常に大きなマーケットとなっています。また、北部に関しても首都であるハノイを中心に経済的な発展を遂げています。中部はまだ発展途上でありエリアによってはインフラも整っていない状態ですが、観光や不動産開発が盛んで、今後発展する余地も十分あります。
【アジア進出候補】インドネシア
インドネシアの人口は2億6,000万人。人材が豊富で国土も広いこと、そして親日感情をもつ人が多いこともあって日本の多くのメーカーが生産拠点をインドネシアに置いています。
やはり近年経済的な発展が著しく、富裕層や中間層が増加しており、生産拠点としてだけではなく、マーケットとしても大きな注目の的となっています。
アジア市場の理解
上記のようにアジアは経済発展著しい国が多いです。欧米やその他の地域と比較すると日本との距離も近く、文化も似通った部分があるため、日本企業が海外に進出するのであれば、まずは東アジアか東南アジアという戦略が現実的といえます。
とはいえ、国や地域が変われば市場の状況や消費者の動向、価値観や考え方は大きく異なります。日本国内の商品やサービス、あるいは販売やマーケティングなどの戦略がそのまま適用できるとは限りません。まずはしっかりと市場調査を行い、その国の状況を正確に把握することこそが海外進出に成功する第一歩です。
アジア展開は市場調査がカギになる
経済成長が著しいアジアに進出すれば大きな利益が得られ、その他の地域への進出の足がかりにもなります。一方で多くの企業が海外進出に失敗してしまったり撤退を余儀なくされてしまったりといった状況に追い込まれているのも事実です。
未来トレンド研究機構は海外実績も豊富で、これまでアジア各国を含め世界57カ国以上の調査実績あり。海外現地リサーチャーが100名以上在籍し、現地の生の情報やデータを収集します。海外進出の肝となる市場調査は、私たちにお任せください。
本コラムの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。