海外調査の検討時に役立つ基礎知識を網羅的に解説

2024年05月31日

海外調査の検討時に役立つ基礎知識を網羅的に解説

海外市場にビジネス展開をする際には事前の海外調査が必要不可欠となります。日本と経済や市場の状況、文化や価値観が大きく異なるため、綿密にそれらを調べておかないと、せっかく海外に進出しても失敗してしまうリスクが極めて高くなってしまうでしょう。

この記事ではこれから海外市場へのビジネス展開を考えられている、海外調査を検討されている企業の経営者やご担当者の方向けに、「海外調査とはなにか?」という基礎から海外調査の必要性や具体的な手法、注意点や海外進出に成功するためのポイントについてご紹介します。

本コラムで得られる情報

①海外調査とは

②海外調査の実施における基礎・基本

③海外調査成功のカギ

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

海外調査(海外市場調査)とは?

海外調査(海外市場調査)とは、さまざまな手法を用いて現地国の経済状況やトレンド、消費者の動向、ニーズなど海外の市場の状況に関する情報やデータを収集する調査のことです。また、市場に関する情報・データだけでなく、現地国の文化や価値観、法規制などに関する情報も収集します。

デスクリサーチやインターネット調査、アンケート、フィールド調査、インタビューリサーチなど、調査の手法はさまざまです。詳しくは後述します。

海外調査を行う目的と必要性

海外調査を行う目的と必要性

前述のとおり、海外調査を行うことで市場の状況など現地国のさまざまな情報やデータを入手することができます。ここからは、海外進出を計画している企業が海外調査を行うべき理由について、深堀りして考えていきましょう。

海外調査をすべきタイミング

海外向けにビジネス展開を計画している段階で海外調査を実施しましょう。現地で商品やサービスを提供する場合はもちろん、インバウンド客を対象に国内でビジネスを行う場合、海外にいるユーザー向けにECサイトを通じて商品を提供する場合も海外調査は必須です。

  • 海外進出
  • 訪日インバウンド
  • 越境EC

とはいえ、計画が何もないまま海外調査を行ってもあまり意味がありません。何を売るか?どのようにして売るか?ある程度ビジネスの方向性が決まっている段階で仮説を立てて調査を行うことで精度が上がり、結果を戦略に反映しやすくなります。

なんのために海外調査をするのか

郷に入れば郷に従え」ということわざがあります。市場の状況や価値観、文化が違う海外に日本の方法論をそのまま持ち込んでもなかなか通用しません。日本では売れているものでも、海外ではまったく売れない可能性もあります。

2016年、ソニー株式会社は4,000人もの現地雇用を行っていた中国広東省広州市の工場を売却することを発表しました。売却先の中国企業に引き継がれることとなった従業員は、一斉にストライキを行い、結果、ソニーは1人あたり最大1,000元(約1万6,000円)の補償金を払うことで事態は収縮しました。このように、商品力や組織力が優れている企業でさえ、現地文化の影響を受け、日本ではあまり考えられないような状況に陥ってしまいます。

海外調査を実施して現地国の市場の規模や競合の状況、ユーザーのニーズ、生活習慣、趣味趣向、法規制等、さまざまな事柄を理解して、それらに合わせて戦略を立案することで、失敗するリスクを軽減できて成功確率を高められるのです。

海外調査が必要不可欠な理由

海外進出やインバウンドの取り込み、越境ECなど、海外向けのビジネス展開を考えているのであれば、海外調査は必要不可欠といえます。その理由について以下で考えていきましょう。

需要の特定

競合との差別化戦略

販売戦略

マーケティング戦略

リスクヘッジ

①需要の特定

社会情勢や経済状況、文化や価値観が異なる海外では消費者の動向や需要も大きく異なります。海外調査を行うことで、その商品やサービスが現地国でニーズがあるかどうか、あるとすればどれくらい必要とされているかがわかります

②競合との差別化戦略

良い商品・サービスを提供していたとしても、競合(ライバル)が存在していると販売が難しくなってしまいます。特に海外の場合は情報が入って来にくいため、いざ進出したら思わぬ競合が存在していたという事態もありえます。海外調査を行うことで競合状況が把握でき、他社との差別化戦略の材料となる情報やデータが入手できます

③販売戦略

海外では消費者のライフスタイルやトレンド、情報収集の方法などの動向も異なります。海外調査を行うことで、販売場所やチャネル、商品デザインなどの販売戦略を立てるヒントも得られます

④マーケティング戦略

上記のように日本とは消費者の動向が異なるため、とるべきマーケティング戦略も異なります。効果的な媒体やアプローチの方法、広告の内容なども海外調査を実施して現地の消費者の行動や価値観を分析することで見えてきます。

⑤リスクヘッジ

日本と海外では法律や慣習も異なります。国内では問題がないことでも、現地国では違法行為に該当したり大きな批判の対象になってしまったりするおそれもあります。海外調査で現地国の法律や慣習について把握しておくことで、現地でのトラブルが発生するリスクを抑えられます

海外調査の実施における基本

以上で海外調査の必要性や収集できる情報の内容について解説してきました。ここからは海外調査に用いる手法や注意点について解説します。

海外調査の重要な観点

海外調査では主に以下のような事柄に関する情報を収集して分析を行い、その後の戦略立案や施策などに活用します。

市場の分析

顧客ニーズの分析

競合他社の分析

法規制や規格の分析

販売チャネル

SWOT

①市場の分析

日本と海外では社会情勢や経済状況、人口、人々の所得も異なるため、市場の状況も大きく変わってきます。海外調査ではまず現地国における市場の有無や規模、競争率、代替・類似マーケットの有無などの状況を調査・分析します。

これらを把握することで売上の予測が立てられ、その国や地域に進出すべきかどうか、あるいはどのような商品・サービスを提供していくかという判断がつきやすくなります。

②顧客ニーズの分析

海外では消費者の価値観やトレンド、人々が抱えている悩みも異なります。日本でヒットしているからといってその商品やサービスをそのまま海外に持っていっても売れるとは限りません。

海外調査では現地の人々がどのようなニーズを持っているか?その商品やサービスが現地国でニーズがあるかどうか?を調査して商品サービスの開発に活かします。

③競合他社の分析

ビジネスを展開するうえでは競合の状況も大きく成否を左右します。競合がひしめいている、いわゆるレッドオーシャンに参入しても、なかなか成功するのは難しいです。

競合企業や競合商品・サービスの有無、競合企業の売上、生産体制などを調査し、自社の立ち位置などを分析することで、その市場に参入すべきかどうかを判断でき、シェアを伸ばすための戦略を立てられるようになります。

④法規制や規格の分析

前述のとおり、海外では日本と法律や規格も大きく異なります。海外でビジネスを展開する場合、知らず知らずのうちに現地の法律に違反して摘発を受けてしまうというリスクも大きいです。

海外調査では現地国の法律や規格、あるいは現地の習慣や暗黙の了解となっている事柄なども把握します。これによって現地でトラブルに発展するリスクを大幅に低減することが可能です。

⑤販売チャネル

日本と海外では流通の形態や商習慣も異なるため、代理店や販売店、取引先、物流会社などの新しい販売チャネルを開拓する必要があります。

海外調査で現地にどのような物流ルートがあるのか?を調査することで、適切な販売チャネルを見極められるようになります。

⑥SWOT

これは海外のみならず国内でビジネスを展開する場合にも非常に重要となることです。他社と比較した自社の強みを押し出し、弱みを改善することで、競合に打ち勝つことができます。

現地の市場やニーズなどの状況だけでなく、SWOT分析を用いて自社の強みと弱みを分析するのも海外調査では非常に重要です。

SWOT分析とは

SWOT分自社の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4点について分析する手法で、自社の強みと弱み、将来性、自社に及ぼす脅威(新規参入企業の存在や競合企業の新たな商品・サービスのローンチなど)を分析することが可能です。

海外調査手法の例

海外調査ではさまざまな手法を用いて上記のような事柄を調べます。一つの方法だけでなく、複数の手段で多角的な分析を行うことで、より情報やデータの精度を向上させることが可能です。ここからは海外調査の手法について代表的なものを見ていきましょう。

デスクリサーチ

アンケート調査

HUT(ホームユーステスト)

フィールドリサーチ(店頭調査、覆面調査)

インタビューリサーチ

①デスクリサーチ

デスクリサーチとは報道資料や統計資料、文献、インターネットなどでその国の情報やデータなどを収集する手法のことを指します。特に最近ではSNSが普及して現地の人の生の声や流行なども把握しやすくなってきました。

日本国内にいながらにしてできる、手間やコストがかからないといったメリットがありますが、必ずしも正確な情報やデータが得られるわけではないというデメリットもあります。

②アンケート調査

現地の消費者にアンケートに回答してもらって情報やデータを収集する手法です。インターネットを用いて行うほか、リサーチ会社に依頼する、現地に赴いて対象者に回答してもらうといった方法があります。

直接消費者に回答してもらうため現地の人々のリアルなニーズや価値観を知ることができるというメリットがありますが、一方で設問や翻訳に手間がかかる、設問によっては回答に偏りがでてしまうといったデメリットもあります。

③HUT(ホームユーステスト)

モニター調査とも呼ばれます。モニター(調査対象者)に商品やサービスを提供し、利用した感想について尋ねるという手法です。

実際に商品・サービスを利用した人から生の声が聞けるため、その商品・サービスに需要があるのか?どのような改善を加えるべきなのか?を把握しやすいといったメリットがあります。一方で商品やサービスを無償で提供しなければならないため費用がかかる、利用してもらう必要があるため調査に時間がかかるといった点がデメリットです。

④フィールドリサーチ(店頭調査、覆面調査)

フィールドリサーチとは競合となる店舗に赴いて商品やサービスの価格や代替商品の有無、あるいは実際に商品やサービスを利用してみて自社との違いを比較する手法です。

競合商品の詳細情報を知れるため、開発戦略や販売戦略の大きなヒントが得られる一方で、店舗に赴き場合によっては商品やサービスを購入しなければならず費用と手間がかかるといったデメリットもあります。

⑤インタビューリサーチ

顧客ターゲットとなりうる人物や現地の市場に詳しいキーマンにインタビューをして現地の市場状況を分析する手法です。

現地の人々と直接対話できるので消費者のニーズやライフスタイル、価値観、トレンドをより深く理解できるといったメリットがある一方で、インタビューを行うためには高いヒアリングスキルや語学力が必要となるといったデメリットもあります。

海外調査の注意点

海外調査を行えば、海外向けのビジネスに進出する上で有益な情報やデータを得られる可能性があります。ただし、やり方を間違えるとかえって調査が無駄になってしまったり、調査の精度が落ちてしまったりするリスクもあります。

ここからは海外調査を行う際に注意しておくべきポイントについて見ていきましょう。

費用と納期

調査時期

統計データの正確性

国民性や地域性

モニターの状態

①費用と納期

海外調査は物理的な距離があり、しかも言語が異なるため、どうしても渡航費用や通訳・翻訳などの費用や結果が出るまでに期間がかかります。

特に海外向けに新しいビジネスを展開する際にはさまざまな経費がかかります。また、立ち上げまでの計画やスケジュールも決まっているはずです。調査費用が予算内に収まり、かつ必要な時期までに調査が完了するよう考慮しましょう

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【海外調査のコスト】費用相場と時間的コストと人的コスト

海外にビジネス展開をするためには、その国の市場の状況やニーズの有無、トレンド、文化などを知っておく必要があり、それらを把握するための調査は必須です。

②調査時期

調査の時期によっても調査結果は大きく変わってきます。たとえば長期休暇中はどうしても浮かれた気分になってしまうため、普段は必要のないものでも欲しくなってしまうという心理が働きます。商品やサービスが季節ものである場合、対象となる季節か否かでも回答は変わってくるでしょう。

商材によって調査を実施する期間を考慮し、なるべく休日ではない平時に調査を実施することが望ましいです

③統計データの正確性

特に統計データを活用する場合は、その正確性にも注意しましょう。たとえばデータが古い場合は現状と乖離が発生している可能性もあります。調査方法や設問、数値の算出のしかたなどによっても大きくデータが変わってしまいます。

文献やネットのデータを活用する場合はデータの出典元や算出方法を必ず確認しましょう。ご自身で調査を行う場合は、調査対象者や手法、計算のしかたが適切であるかどうかを今一度確認しておくことが重要です

④国民性や地域性

その国や地域に住む人々の価値観や考え方、性質も十分に考慮しておくことが重要です。日本語で作成した設問をそのまま翻訳しても、正確に伝わらないケースもあります。

調査を行うにあたっては、現地の国民性や地域性をしっかりと理解した人が設問や翻訳をし、場合によってはその人に調査を担当してもらうことも検討しましょう

⑤モニターの状態

顧客ターゲットからかけ離れているようなモニターを選定しても有益な情報はなかなか得られません。またモニターが適切であっても、ニーズを満たされている状態とそうでない状態の場合では回答も変わってくるはずです。

HUTを実施する場合、モニターの選定や調査実施時の状態にも注意が必要です。

海外調査を成功させるカギ

以上のような注意点を押さえた上で、以下のようなポイントを意識して海外調査を実施すれば、得たい情報やデータが得られる可能性が高まります。

海外調査を成功させるカギ

市場の把握と理解

ただやみくもに調査を行っても、なかなか戦略立案につながる結果は得られません。特に最近ではネットでも海外の情報をある程度収集することが可能です。まずは可能な範囲でリサーチを行い現地の市場について理解・把握をし、仮説を立てた上で調査に臨みましょう。

適切な調査方法の選択

これまでご紹介したように、海外調査にはさまざまな手法があります。たとえばアンケートなら多くの対象者に調査が行える反面ニーズを深堀りするのは難しい、インタビュー調査なら現地の詳細な情報は入手できても数をこなすのは難しいなど、調査手法にはそれぞれ強みと弱みがあります。

目的の情報が得られるような調査手法を選ぶことこそが海外調査の肝となります。

スケジュール感の想定

前述のとおり、海外調査には時間がかかり、結果が出るまでに数ヶ月を要するといったケースも少なくありません。調査が遅れれば、それだけ立ち上げも遅くなってしまいます。

いつまでに事業を開始するのか?全体のスケジュールを立てた上で調査の期限を逆算してみましょう。

調査内容 納期例
特定5社に関する競合調査 2か月など
競合戦略・市場規模・シェア 3か月など
市場調査~プリセールス 6か月など
海外企業5社へのアポ取り業務 2~3か月など

実績のある調査会社の選定

海外調査はリソースやノウハウが必要となるため、自社だけで行うのはなかなか難しいのが実情です。外部に依頼する場合は慎重に調査会社を選びましょう。会社によって調査のスキルやノウハウ、手法もさまざまです。

特に海外調査の経験や実績が豊富であるかどうかに着目されることをおすすめします

調査結果の適切な活用

海外調査で重要なのは調査結果の活用方法です。せっかく費用と手間をかけて調査を行ったとしても、それが活用できなければ意味がありません。

なんのために調査を行うのか?調査によってどのような結果を得たいのか?どのように戦略立案に活かすのか?を検討しておきましょう

海外調査だけでは不十分の可能性も?!

海外調査は海外で有利にビジネスを展開するための手段でしかありません。しかし、海外調査が目的となってしまっている、あるいは調査を行って満足してしまっているという事例も多いです。

繰り返しになりますが、海外調査の結果はその後の戦略立案や施策などに活かさなければまったく意味を為しません。そのためにもしっかりと目的を決め、計画を立てて調査を実施することが重要です

海外調査を実施するなら

海外調査のことなら未来トレンド研究機構にご相談ください。弊社では57カ国以上の調査実績があり、全世界での調査に対応可能です。現地リサーチャーが各国に常駐しており、適切な方法で現地の生の情報やデータを収集します。

また、弊社では調査だけでなく結果に基づいた戦略立案や事業の立ち上げについてもサポートいたします。無料相談も実施しておりますので、海外調査でお困りごと、お悩みごとがありましたらお気軽にご連絡ください。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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