2024年04月04日
【BtoBの競合調査の重要性】より正確に競合状況を把握する方法
BtoBビジネスにおいて、競合調査は大変重要な意味を持っています。競合調査によって得たデータは他社製品との差別化はもちろんのこと、新規事業参入、新製品開発、プロモーション施策立案など様々な場面で用いられます。
とはいえ、BtoBビジネスはBtoCやDtoCなどと比べて不透明な要素も多く、適切な競合調査を行うためには時間をかけなければなりません。今回は、BtoBビジネスにおける競合調査の重要性や競合調査で行う作業をステップごとに解説します。
・BtoBビジネスにおける「競合調査」の重要性
・「競合調査」の具体的フロー
・BtoBビジネスにおける「競合調査」の注意点
本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
目次
競合調査とは
競合調査とは、企業の目的にあわせて競合にあたる同業界・同業種内の企業情報を収集・分析することです。
競合調査を行う目的としては、
- 他社との差別化を図りたい
- 新製品販売時の戦略立案に役立てたい
- 販売促進の手法を模索したい
- 新規事業立ち上げの際に障壁となる競合を知りたい
- プロモーション方法を最適化したい
などが挙げられます。
しかし、ただ競合他社についての情報を調べていても、情報の整理や分析に時間がかかってしまいます。競合調査を行う前に分析に有効な要素は何か?どのような分析を行うべきか?審査の設計を行い、全体フローを把握した上で作業を開始しましょう。
競合調査の概要や調査フローについては、こちらでも詳しく解説しております。
BtoBビジネスにおける競合調査の重要性
BtoBビジネスで競合調査を行うことは、BtoCビジネスの競合調査に比べ、調査手法から難易度まで、大きな違いがあります。BtoBビジネスにおける競合調査がどれほど重要なのか、ここからは、BtoBビジネスにおいて特に重要な以下の2点について詳しく解説します。
ポイント①:市場シェアの把握
適切な競合調査を行えば「自社製品のサービスや価格は市場平均と比較して高いのか、安いのか」「市場のシェアは分散されているのか、上位ブランドが寡占しているのか」など、市場の状況や自社のポジションについての理解が深まります。
BtoB(企業間取引)はBtoCやDtoCなど直接エンドユーザーに届けるような業態と比較すると、参入障壁が高いと言わざるを得ません。製品やサービスを直接エンドユーザーにアプローチできれば、独自性や目新しさがユーザーの注目を集める可能性もありますが、BtoBでは業界内での実績やサービスとしての信頼性などが重視される傾向にあります。
リスクを抑え他社と差別化するポイントを明確にするためにも、参入する市場や業界について学ぶ競合調査は必須だと言えるでしょう。
ポイント②:体験の可視化
BtoBで取り扱われるのは業界向けのニッチな製品、あるいは人材紹介やコンサル、技術提供など無形商材が多いです。そのため、BtoCやDtoCで取り扱われるような有形商品と比較して口コミやレビューといった評価やユーザーの体験が把握しにくい傾向にあります。
競合調査を行うことで導入企業の体験や評価といった情報収集ができ、自社製品またはサービスの開発や価値の付加などに役立てることができます。
BtoBの競合調査ステップ
競合調査の作業は大まかに、以下の順番で行われます。
① 目的を明確にしてフローを作成する
② 競合となる対象を定義する
③ 調査・分析を行う
特に大切なのが、フローの作成と調査作業です。ただやみくもに調べて情報がたくさんある状態は意味がなく、調査・分析方法は項目に応じて変えなければなりません。これらの工程を適当にしてしまうと、適切な競合調査は行えません。
こちらでは、BtoBの競合調査で行われる分析方法をステップごとにご紹介します。
ステップ①:自社サービスの定義付け
BtoBの競合調査でまず行うべきことは、「自社サービスの定義付け」です。
自社サービスの定義を明らかにすることで、「自社のサービスが市場で今どの位置なのか?」「どんな競合他社があるのか?」「競合他社との違いは何か?」「自社サービスの優位性、弱点は何か?」などの現状分析、戦略立案がしやすくなります。
自社サービスの分析・定義をするためには、社内外からのヒアリング、プラットフォームやコンテンツごとの分析を行う、フレームワークを使用した市場分析などの方法があります。
ステップ②:競合他社の定義・選定
サービスが似ている | A社/C社/D社 |
---|---|
顧客層が似ている/同じ業界 | A社/B社 |
自社サービスに関連する検索ワードで上位に出てくる | B社/C社/D社 |
サービスの価格帯が近い | A社/B社/C社 |
自社サービスが定義できたら、競合となりうる他社の選定を行います。提供するサービスや業界にもよりますが、上表の項目ごとに該当する企業をリストアップします。
たとえば上表のような結果になった場合、共通する項目が多いA社、B社、C社が競合と仮定義できます。
ステップ③:競争性の把握
競合他社の調査を行う際、対象となる企業を直接競合・二次競合・間接競合に分類してリストアップする方法があります。直接競合とは自社とほぼ同じ製品またはサービスを提供している競合のことです。二次競合とは自社製品と同じカテゴリの製品、サービスを提供している競合のことを指します。間接競合とは製品やカテゴリは同じではないが、同価値の製品を提供している企業を指します。
これらの分類には、会社の規模、製品の品質・価格帯・サービス内容、業界または地理的な位置関係などを指標にします。
ステップ④:顧客ヒアリング
顧客ヒアリングは取引がある企業に直接契約前に「どの会社と比較したのか?」を聞いて、競合他社をリストアップするために行われます。
複数の会社のサービスを比較してから契約を決める顧客がほとんどなので、実際に顧客が検討していた企業を知ることができます。また、顧客が検討していた競合他社を知ることで想定していた社内でのイメージとのズレを無くし、より詳細な競合分析が可能です。普段から関係性が構築されていれば、深い部分まで話が聞けることが期待できます。
会社の規模やサービス内容にもよりますが、競合他社をピックアップする目的であれば10社程度の顧客にヒアリングすると良いでしょう。未来トレンド研究機構では、競合企業のリストアップ作業からご依頼いただくことも可能です。
ステップ⑤:営業ヒアリング
営業ヒアリングは、自社の営業担当にヒアリング調査を行って競合他社をピックアップする方法です。営業担当は日々直接顧客とやりとりをしていたり、コンペなどで他社と比較される機会が多いため、ヒアリングを行うことで有益な情報を収集できる可能性が高いです。
営業担当へのヒアリングで確認したいポイントの例として、以下の5点が挙げられます。
- 比較されることが多い企業やサービス
- どんな部分が他社と比較されているのか
- 自社の評判や評価されている点
- 顧客のニーズ
- 取引される額
- 値引きの有無
これらの情報は競合調査だけでなく、マーケティングにおいても重要なので日ごろから営業部とマーケティング部が情報共有できるようフィードバック体制を整えておきましょう。
ステップ⑥:Webサイト分析
Webサイト分析は、自社と競合他社のWebサイトを比較分析します。対象となるサイトとして、企業の公式サイト、サービスページ、IR情報、レビューサイトや利用者の声など顧客の声(VOC)が分かるページ、サービス比較をしているWebサイトなどがあります。
Webサイト分析では、以下のような項目を精査します。
- タグライン(経営コンサル、クラウドビジネスアプリ、会計システムなどサービスの一般名称)
- ホームページや企業理念のページなどで訴求されるメッセージ
- サービスの詳細(機能・価格・サポート等)
- 他のサービスや製品との連携があるか
- 導入数と主要な取引企業
- トラフィックデータ(ユーザー数・PV・主な流入キーワード等)
- 口コミ分析(レビューサイトやSNSでの口コミ)
ステップ⑦:SNS分析
SNS分析は、Instaglam、X(旧Twitter)、facebook、LINE、TikTokなどの企業公式アカウントを競合他社がどのように運営しているかを調査・分析することを指します。
- 各SNSのフォロワー数
- アカウントの細分化(代表者や広報、キャンペーン専用のアカウントがあるか)
- 投稿内容
- プラットフォームの使い分け方
- インフルエンサーマーケティングの有無や方法
- サブスクリプションの有無
などの項目を調査することが多いです。
ステップ⑧:プロモーション・広告分析
プロモーション・広告分析は、競合他社がどのような広報活動を行っているかを調査するための分析方法です。同じ製品に興味を持っている人でもその度合には差があるため、ターゲット層ごとに適したプロモーションを行う必要があります。
ターゲット層ごとの特徴と、一般的に用いられることの多いプロモーション施策を表にまとめました。
ターゲット | 特徴 | プロモーション施策 |
---|---|---|
明確層 |
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顕在層 |
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準顕在層 |
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潜在層 |
|
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競合調査を行うためには、それぞれの施策の内容・頻度・規模を調査します。
ステップ⑨:事例・実績確認
競合他社の公式サイトやサービスページには、そのサービスを導入した事例が紹介されています。 導入実績だけではなく「導入前にどんな悩みがあったのか?」「どのような製品を求めていたのか?」「なぜ導入しようと決めたのか?」など、競合調査やマーケティングに役立つ情報が掲載されているため顧客のインタビューもしっかりと確認しましょう。
競合企業の不透明性
以上でBtoBの競合調査の方法についてご紹介しました。今回ご紹介したWebサイトやSNSなど分析ツールや目視での調査も大切ですが、会社の情報は全てオープンになっているわけではない事にも留意しましょう。
オープンソース
- WEBサイト
- SNS
- 口コミ
- IR情報
- 有価証券報告書
- 決算情報 など
競合調査は目に見える情報以外にも、専門的な要素を分析する必要があります。これらの作業を全て自社で行うには、かなりのコストと時間がかかるため、専門部署が設置されていない場合は通常業務に支障をきたす可能性もあります。 また、競合他社は必ずしも国内企業とは限りません。ニッチな分野においては、日本法人のない海外メーカーが競合他社となることもあり、自社だけでは調査・分析が難しいことも往々にしてあります。
調査会社は競合調査を専門的に行っているため、ベンチマークした企業の人員・生産・販売体制など様々な項目の詳細な調査・分析が可能です。確かな経験とメソッドに基づいて市場調査・競合調査を行うため、自社よりも短期間で解決できるのが強みなので、競合調査は外部への依頼も検討してみましょう。
効率的な競合調査実施のために
BtoBビジネスにおける競合調査について解説しました。前述のとおり、競合調査は調査前の設計、項目ごとの詳細な分析などが重要なため「思ったよりも工程が多い」「実施するためには専門的な知識が必要」だと感じた方も多いかもしれません。
競合調査を行いたいけど日々あらゆる業務に追われる中で、競合調査のためのリソースがなかなか割けないという場合には、専門の調査会社へ依頼するというのもひとつの方法です。マーケティング施策についてお悩みのご担当者様は、ぜひご検討ください。
【即活用】競合調査とは?実用的な進め方とフレームワーク
事業の各戦略を立てるためには競合の取っている戦略を分析する競合調査が必要不可欠です。競合調査の意味や重要性、項目や流れ、調査のフレームワークについて、プロがわかりやすく解説します。新規事業を立ち上げられる方、ビジネスの改善に悩まれている方必見です。
本コラムの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。