海外市場のネットリサーチを成功させる条件

2025年10月02日 更新日:2025年11月21日

ビジネスのグローバル化が進むいま、海外市場での意思決定には「確かな情報」が欠かせません。現地の競合や消費者ニーズを的確につかむには、ネットリサーチ(オンライン調査)の活用が不可欠です。しかし、海外の場合、日本国内のリサーチ手法とは異なるノウハウやツール選定、データの見極め力が求められます

この記事では、ネットリサーチによる海外調査のポイント、具体的な活用シーンや費用、失敗しない実践法からAI時代の新潮流まで、プロの視点で詳しく解説します。

この記事のポイント

海外ネットリサーチは、低コストかつ迅速に現地の競合分析、消費者ニーズ、サービス受容性、ブランド認知度を把握するために非常に有効です。特に海外進出前は、市場規模、競合、規制、トレンドなどの基礎調査に、進出後はブランド認知度や顧客満足度の検証・改善に役立ちます。成功には目的の明確化、先入観を捨てること、そしてAIなどの最新ツールを活用し、本当に必要な情報を見極めることが不可欠です。

ちょこっと解説

海外のネットリサーチにはどんな手法がある?

公開情報を調べるデスクリサーチやネットアンケート、オンラインインタビューなどがあります。

海外のネットリサーチの費用相場はどれくらい?

調査手法や対象国、サンプル数、複雑性によりますが、一般的なオンラインアンケートの場合、1ヵ国100サンプルあたり10万~30万円前後が目安です。専門的な調査や複数国調査になると、50万~数百万を超えるケースもあります。

関連するキーワード

  • ♯市場調査
  • ♯海外調査
  • ♯アンケート調査
  • ♯オンラインインタビュー
  • ♯デスクリサーチ
  • ♯定量調査

本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

そもそも海外調査とは?

海外調査とは、自社の海外進出や現地事業の戦略立案のために、国外の市場や消費者、競合、業界動向などを体系的に調べる活動全般を指します。特にグローバル展開を目指す企業にとっては、現地のリアルな情報をいかに集めかが事業成功のカギを握ります。近年はデジタル化の進展で、現地訪問やフィールド調査に加え、オンラインで完結する「ネットリサーチ」の重要性が増しています

海外調査の基本については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。

あわせて読みたい

海外調査の検討時に役立つ基礎知識を網羅的に解説

海外市場にビジネス展開をする際には事前の海外調査が必要不可欠となります。日本と経済や市場の状況、文化や価値観が大きく異なるため….

目的に合わせた調査手法を選択する

海外調査と一口に言っても、目的や予算、調査範囲に応じて最適な手法は異なります。現地でのフィールド調査や専門家ヒアリング、従来型の電話・郵送調査も重要ですが、近年は「ネットリサーチ」と呼ばれるWeb公開情報の収集や、オンラインアンケートによる定量・定性調査が一般化しています

 ただし、ネットリサーチは手軽な反面、公開情報の信頼性や、アンケート回答のサンプルバイアスなどのリスクもあるため、「自社にとって本当に必要な情報が得られるか」「調査結果が戦略立案や意思決定に活用できる水準か」を慎重に見極め、目的と予算に最適な手法を選びましょう

以下を考慮したうえで、目的と状況に沿った手法で調査しましょう

  • スピーディーに回答を得られる
  • 回答の偏りや信憑性などの品質担保が難しい
  • コストが安い
  • 調査できる情報に限界がある・深堀ができない
  • 一般消費者の表層的傾向を知るには有効な調査
  • BtoB企業などを対象とした調査には向かない

海外ネットリサーチが有効な場面

海外ネットリサーチは現地の一次情報を迅速・低コストで把握したい場合に特に有効です。ここからは、どのようなビジネス課題・意思決定シーンで役立つのかを具体的に見ていきます。

  • 海外進出における現地の消費者ニーズの把握したい
  • 海外進出においてサービスが受け入れられるかを分析したい
  • 海外展開済みの自社ブランド認知度を測りたい

海外市場における競合の把握・分析したい

新たな市場で勝ち残るには、現地の競合プレーヤーや業界構造に対する理解が不可欠です。ネットリサーチでは、現地企業のWebサイトやプレスリリース、SNSアカウント、ECサイトの品揃え・価格・口コミ、業界団体のレポートなど、公開情報を体系的に収集・比較することで、主要競合の強み・弱み、市場シェア、プロモーション手法まで幅広く把握できます

さらに、AIやクローラーを活用すれば定期的な競合モニタリングも容易になります。グローバル競争の激しい業界ほど、ネットリサーチで「最新の競合状況」を可視化し、自社のポジショニングや差別化戦略の根拠とすることが重要です。一方で企業・法人は一般に公開されていない情報の方が圧倒的に多いため、ネットリサーチの結果のみで戦略立案を進めることはお勧めしません。

海外進出における現地の消費者ニーズの把握したい

現地消費者が何を求めているのか、どのような価値観や購買傾向を持っているのかを理解せずに、海外で成功することはできません。ネットリサーチでは、現地のSNSやレビューサイト、Q&Aサイト、アンケートパネルを活用して、リアルな消費者の声や生活実態、流行やトレンド、ブランドへの期待や不満などを多角的に把握できます。

また、Web上のクチコミ分析や「バズワード」調査を通じて、短期間で変化する現地ニーズにも迅速に対応可能です。ネットリサーチを活用すれば、現地語での自由回答や画像・動画投稿も解析できるため、深いインサイトの獲得が期待できます

海外進出においてサービスが受け入れられるかを分析したい

新たなサービスや商品を海外市場に導入する際、「現地ユーザーがどのように商品を受け入れるか」は事前に確認しておきたい最大のポイントです。ネットリサーチでは、現地消費者に直接アンケートやインタビューを実施するだけでなく、既存の競合商品・サービスの利用体験レビューや、現地でのSNS反響、βテスト参加者の声などを幅広く調べることが可能です

また、簡易的なプロトタイプを用いたユーザーテストをオンライン上で実施し、「どのような価値が受け入れられやすいのか」「どんな機能が期待外れと感じられるのか」など、具体的な受容性データを獲得し、サービス設計や改善に活かす企業が増えています

海外展開済みの自社ブランド認知度を測りたい

すでに海外市場でブランド展開している場合でも、「本当に現地で認知されているのか」「どの層に強く浸透しているのか」を数値化・可視化することは非常に重要です。ネットリサーチを用いれば、現地のWeb検索回数やSNSでのブランド言及数、ECサイトでの検索頻度、ユーザー投稿の内容分析などから、認知度の変化やブランドイメージの傾向を把握できます

さらに、オンラインパネル調査によって属性別・地域別・年代別のブランド浸透度を明らかにし、「認知から購入・リピートまで」のボトルネックを特定できます。ブランド価値の見える化は、今後のプロモーション投資判断や商品改良の指針としても役立ちます

海外ネットリサーチで調査できる内容

ネットリサーチは「海外進出前」と「進出後」で調査できる内容・目的が異なります。調査設計の段階で、自社のフェーズに合った情報収集を計画することが成功のカギです。

海外進出前

これから海外進出を計画している企業にとって、事前のネットリサーチはリスク回避と戦略精度向上の決定打となります。現地市場の規模や成長性、競合状況、消費者の生活実態、現地の法制度やトレンド、流通チャネルの実態まで、多角的に情報を集めることで「進出する価値があるのか」「勝ち筋がどこにあるのか」を客観的に判断できます

ネットリサーチの強みは、現地入りせずともオンラインで大量の情報を集め、短期間で仮説構築や事業シミュレーションができる点です。

市場規模・市場動向

ネットリサーチでは、各国政府や国際機関が公開する経済統計・産業レポート、業界メディア・調査会社の発表資料をもとに、市場規模や成長率、市場の新規参入障壁、マクロ経済トレンドまで把握できます。世界銀行やOECDのデータベース、経済産業省の海外統計、日経・ロイターなどのニュース配信などを組み合わせて、独自に市場全体の現状や将来性を分析することが可能です

さらに、AIやBIツールを活用すれば、膨大なデータのクロス集計や時系列分析も短時間で行えます。

競合調査

現地でどのような企業が競合として存在し、どのようなサービスや商品を提供しているのかは、ネット上の情報である程度把握できます。公式Webサイトやニュースリリース、SNSでのプロモーション、消費者からのレビュー、オンライン広告の展開内容などを調べることで、競合の強み・弱み、価格戦略、プロモーション手法、流通網などを可視化できます。

さらに、特定キーワードの検索結果や広告出稿量の分析、競合サイトの流入元分析など、デジタルマーケティング視点の競合調査も実施できます。

あわせて読みたい

海外企業を対象とした競合調査で分かる情報とは?

言葉も文化も違う海外。その市場に何も準備がないまま飛び込むのはあまりにも無鉄砲すぎるといえます。海外市場に進出する際、海外に拠点を設ける際などは、入念にその国の状況を調査し….

消費者調査

アンケートパネルやSNS、口コミサイト、フォーラム、Q&Aサービス、ブログ記事など、多様なチャネルから消費者の購買動機・商品選択理由・ブランドイメージ・流行への関心などを集約し、属性別・エリア別の違いも分析できます

調査会社によるオンラインアンケートのほか、自社でSNSを活用したクイックアンケートや、Webスクレイピングによる大規模データなども組み合わせることで、定量と定性の両面から深掘りできます。

規制・法令調査

海外展開時には、現地の法制度や規制、ビジネス慣習を把握しておくことが不可欠です。ネットリサーチでは、各国政府や業界団体の公式Webサイト、国際法データベース、専門家によるブログ・ニュースサイトなどを活用し、進出予定国の規制動向や法改正情報、参入手続きの最新情報まで入手可能です。

ビジネス上重要となる労働法・知的財産権・製品規制・消費者保護・輸出入管理など、幅広い分野の最新情報をオンラインで網羅的にリサーチすることができます

あわせて読みたい

【海外規制調査の重要性】費用をかけてでも調査が必要なわけ

長らく続く円高や国内市場の縮小、ECチャネルやSNSの国際的普及などの要因もあり、中小企業や小規模事業者であっても海外進出する例が増えています….

流通構造調査

現地で商品・サービスをどのように流通させるかも、ネットリサーチで基礎情報を収集できます。たとえば、主要な卸売・小売チャネルや物流業者のWeb情報、流通業界メディア、現地ECモールの出店状況などから、流通網の構造や流通コスト、主要プレーヤーの特徴を分析します

さらに、BtoB・BtoCそれぞれの取引慣行、現地決済インフラ、サプライチェーンの課題なども現地関係者へのオンラインインタビューや事例記事を通じて把握できます。

トレンド・流行調査

ネットリサーチでは、現地で今何が流行っているのか、どんな商品やサービス、広告表現、SNSトレンドが生まれているのかも調査可能です。GoogleトレンドやX(旧:Twitter)、Instagramなどで特定キーワードの言及数・伸び率を分析し、インフルエンサーや人気コンテンツの投稿をモニタリングすることで、「消費者が今本当に関心を持っていること」を可視化できます

また、現地メディアや専門ブログ、動画プラットフォームでの新商品・新サービスへの反響も参考になります。

海外進出後

海外進出後は、現地でのブランド浸透度や顧客満足度、プロモーション効果の測定など、「進出後の現地検証と改善」にネットリサーチが威力を発揮します。リアルタイムでの認知度・口コミ動向の変化や、キャンペーン後の態度変容、競合環境のシフト、現地スタッフやパートナーからのフィードバックまで、継続的なモニタリングで事業のPDCAサイクルを加速できます

ブランド認知度

ブランド認知度は、現地消費者にどれだけ自社ブランド名が知られているかを定量化する指標です。ネットリサーチでは、オンラインパネル調査やWeb検索量・SNSでの言及回数分析、ブランドキーワードのランキング推移などを組み合わせて、ブランドの浸透度・競合との差分を定量的に評価できます。

認知度調査は定点観測的に実施し、プロモーション施策や新商品投入の効果を追跡することで、現地マーケティング戦略の見直しや予算配分にも役立ちます

顧客満足度

現地での顧客満足度を把握することは、リピート購入やブランドロイヤルティの向上に直結します。ネットリサーチを通じて、購入者向けのオンラインアンケートやレビュー分析、SNSでの口コミ内容の解析などにより、サービスの使い勝手や商品品質、カスタマーサポート、配送体験など、ユーザー視点での満足度・不満点を洗い出すことができます

得られたデータをもとに改善施策を講じることで、顧客離れの防止やリピート率向上につながります。

マーケティング効果測定

プロモーションや広告キャンペーンを現地で展開した際、「どの程度効果が出ているか」を測定するのもネットリサーチの大きな役割です。キャンペーン参加者へのオンラインアンケート、Webアクセス解析、SNSのエンゲージメントデータ、購買行動の追跡などを組み合わせることで、マーケティング施策ごとの効果やROI(投資対効果)を可視化できます

データをもとに改善点を抽出し、次回以降の施策設計に活かすことで、持続的なブランド成長につなげましょう。

ポジショニング調査

ポジショニング調査は、「現地市場で自社ブランドや商品がどのように認識されているか」を他社と比較して評価するための調査です。ネットリサーチでは、競合ブランドとの比較調査や、ブランドイメージの自由回答収集、SNS上での評判分析、消費者意識のマッピングなどが可能です。

自社が「高級」「コスパ」「革新性」「信頼性」など、どのような属性で認知されているかを定量・定性データで把握し、市場での最適な立ち位置やメッセージ設計、今後のプロモーション方針の根拠とします

海外ネットリサーチで活用する手法

ネットリサーチは「何を・どのように調べるか」によって手法を使い分けることが重要です。ここでは、代表的な3つの手法を詳しく解説します。

  • デスクリサーチ
  • ネットアンケート
  • オンラインインタビュー

デスクリサーチ

デスクリサーチ(Desk Research)とは、既に公開されている情報・二次データ(Webサイト、政府統計、業界レポート、ニュース記事、専門誌、論文など)をデスク上で体系的に収集・整理する調査手法です。

自社でできるネットリサーチの中心であり、手軽に大量の情報を得られる反面、「情報の新しさ」「信頼性」「出典の明確さ」を見極める力が求められます。特に海外では情報ソースの言語・更新頻度・公式性の違いがあるため、複数ソースのクロスチェックや原典へのアクセスが重要です。主要国の政府・国際機関データ、現地ニュース、企業情報、研究機関レポートなどを幅広く活用しましょう。

ネットアンケート

ネットアンケートは、オンライン上で対象者に直接質問を送り、短期間で多くの回答を収集できる定量調査手法です。海外ではパネルリクルート専門の会社を活用することで、性別・年代・地域・属性ごとにターゲットを絞った調査が可能です。

アンケート設計時には、現地語対応、文化・表現のローカライズ、質問内容の明瞭さが重要であり、サンプルバイアスや虚偽回答を防ぐための設問設計やクロスチェックも欠かせません。設問の流れや設計次第で回答率・データ品質が大きく左右されるため、現地協力会社との連携も推奨されます。

オンラインインタビュー

オンラインインタビューは、Web会議システムやチャットツールを利用して現地の消費者やビジネスパーソン、専門家に直接ヒアリングを行う定性調査手法です。対面調査に比べコストや移動時間を削減でき、世界各国の対象者に短期間でアプローチできます。

リアルな表情・反応を観察しながら深い意見や背景、ニーズの変化を掘り下げられるのが強みです。調査設計では、現地の言語や文化への配慮、信頼関係構築のための進行管理、録音・録画データの正確な整理など、プロのノウハウが求められます

海外ネットリサーチの費用相場

海外ネットリサーチの費用は、調査手法や対象国・サンプル数、設問数、外部委託の有無などによって大きく異なります。一般的なオンラインアンケートの場合、1ヵ国100サンプルあたり10万~30万円前後が目安ですが、専門的な対象者・複雑な設計・複数国調査になると50万~100万円を超えるケースもあります。

(下表の情報は記事執筆時点の情報であり、あくまで目安です)

社名 クロスマーケティング クロスマーケティング GMOリサーチ GMOリサーチ アスマーク アスマーク
テーマ アプリに関する調査 SUVに関する調査 訪日旅行に関する調査 生活実態に関する調査 ソフトウェアに関する調査 化粧品に関する調査
対象 車・タクシー・カーシェア等を利用する方(米国) SUV購入予定者(米・中) 直近3年以内訪日経験者(中・タイ・他) 一般消費者(中・米・独) 20〜60代男女(仏・伊・自動車免許所持) 30〜50代女性(日本・韓国)
手法 Webアンケート オンラインデプスインタビュー Webアンケート Webアンケート Webアンケート ホームユーステスト
サンプル 1,600サンプル(各国400) 15サンプル 4,000サンプル(各国1,000) 1,500サンプル(各国500) 2,000サンプル 200サンプル(各国100)
金額 2,000,000円 4,500,000円 3,000,000円 1,000,000円 3,100,000円 2,900,000円

海外ネットリサーチを成功させるポイント

ネットリサーチの成果を最大化するには、手法やツール選定だけでなく「調査設計の質」が問われます。

  • 目的に合った調査手法を決定する
  • 調査結果を検証する
  • 先入観を捨てる

目的を明確化する

調査の第一歩は「なぜ・何を調べたいのか」を明確にすることです。単なる情報収集ではなく、経営判断や戦略立案、商品開発、現地パートナー選定、投資判断など、具体的な意思決定に直結するテーマを定めましょう

「どの国で何を知りたいのか」「どんな属性の声を集めたいのか」「アウトプットの粒度や分析の切り口」まで具体化すると、調査設計の精度が高まり、不要なコストやデータの無駄取りを防げます。

目的に合った調査手法を決定する

調査の目的や必要な情報量、精度、リソースに応じて、どの手法をどの範囲まで自社で実施し、どこから外部調査会社や現地協力パートナーに任せるのかを決定します。自社で対応可能な情報はデスクリサーチやネットアンケートでカバーし、専門性の高い調査や難易度の高い対象者リクルートは調査会社と連携するなど、柔軟な役割分担が効果的です

外注時には調査設計や分析方法、納品形式や進行管理も含めて事前にすり合わせをしておきましょう。

調査結果を検証する

ネットリサーチの調査結果は、そのまま信じ込むのではなく「自社でも検証・クロスチェック」することが大切です。外部委託の場合でも、得られたデータが実際の事業現場や他ソースと整合性が取れているか、自社で追加調査や再分析ができるかを必ず確認しましょう

また、複数の調査手法・データソースを組み合わせて、クロス集計や再現性チェックを行うことで、より信頼性の高いインサイトを獲得できます。

先入観を捨てる

調査を進める際、「きっとこうなるはず」「こんな結果が出てほしい」という先入観を持ちすぎると、客観的なデータの解釈を誤る危険があります。あくまで調査前に立てた仮説は「仮説」であり、調査結果がそれを裏付けなかった場合にも柔軟に認識を改める姿勢が不可欠です

現地市場やユーザーの反応は自社の想定と全く異なる場合も多く、先入観から自由になることで本質的な課題や新たな発見が得られます。

海外ネットリサーチに使えるツール・サイト

ここからは、グローバル調査を効率化し、精度を高めるための代表的なツール・サイトを紹介します。

ツール

海外ネットリサーチを加速させるには、最新の調査ツールを活用することが不可欠です。日本語で使えるものからグローバル対応のものまで、実務で役立つ主要ツールをピックアップし、それぞれの特徴と活用ポイントを解説します。

Freeasy Global

Freeasy Globalは、国内外200ヵ国以上でネットアンケートが実施できるリサーチツールです。多言語対応パネル、迅速なサンプルリクルート、シンプルなUIで初心者にも使いやすい設計です。日本語での運用も可能なので、初めての海外調査でも安心して導入できます。

Global QiQUMO

Global QiQUMOは、世界各国のパネルリストを持ち、幅広い属性にリーチできるオンライン調査サービスです。現地語設計やローカライズサポートも充実し、国・地域別のカスタマイズ調査が可能です。集計・レポート機能も備えているため、効率的に調査結果を活用できます。

Surveroid

Surveroidは、グローバルパネルに特化したネットアンケートツールです。海外・新興国も含めた広範なリーチを誇り、スマホ最適化やデバイス対応も万全。属性指定やクロス集計など高度な設計ができるため、精度の高い海外定量調査が求められるシーンで活躍します

Qualtrics

Qualtricsは、世界的に利用されている調査プラットフォームです。アンケート設計・配信からデータ分析・ダッシュボードまで一気通貫で実行でき、多言語展開や複数国調査、リアルタイムレポートにも対応しています。大規模・複雑な海外リサーチに最適なツールです。

サイト

一次データの収集・比較分析には、信頼性の高い国際統計サイトや公的データベースの活用が欠かせません。ここからは、経済・産業データから人口動態、マーケットトレンドまで多岐にわたる調査に役立つ主要サイトを紹介します。

経済産業省統計

日本政府が提供する海外ビジネス向け統計データベースです。各国の産業動向、貿易額、投資動向、主要セクターの市場規模などが無償で閲覧できます。最新の業界動向を把握する基礎情報として最適です。

The World Bank (世界銀行)

世界銀行は、世界各国の経済指標・社会データを網羅するグローバルデータベースです。国別・分野別にGDPや産業別データ、貧困率などが収録され、信頼性の高いベンチマーク調査に活用できます

The World Bank インジケーター

The World Bankのインジケーターでは、人口、経済成長、インフラ、教育、保健医療など、グローバルビジネスに不可欠な多様な指標が簡単に検索・ダウンロードできます。トレンド分析や市場ポテンシャル評価にも有用です。

OECD iLibrary

OECD iLibraryは、OECD加盟国を中心とした各種政策・経済・産業・教育・環境データを網羅する国際機関のデータベースです。国際比較や先進国市場の分析、政策トレンドの把握に役立ちます

Worldometer

Worldometerは、世界人口や経済・エネルギー・健康・社会データをリアルタイムで可視化する統計サイトです。グローバルな市場規模や最新トレンドを直感的に把握できる、実務派に人気の情報源です

【最新情報】海外ネットリサーチはAIの出現で変わるのか?

近年、AI技術の進化は海外ネットリサーチの現場にも劇的な変化をもたらしています。従来は人力で行っていた膨大なデータの収集・クリーニング・集計作業が、AIクローラーや自然言語処理、画像解析技術の普及により自動化・高速化しました

さらに、AIによるアンケート設計やサンプリング、自由回答の自動コーディング、トレンド抽出まで、効率・品質の両面で大幅な進歩が見られます。

また、多言語テキストや画像・動画データもAI翻訳や解析によってワンクリックで分析可能となり、世界中の現地データをリアルタイムで俯瞰することが実現しつつあります。

一方で、AIが生み出すバイアスや、アルゴリズムの透明性確保、データ品質管理といった新課題も指摘されており、リサーチ設計や人の判断とのバランスが今後のポイントとなります。

本当に必要な情報を見極めましょう

ネットリサーチで得られるデータは膨大ですが、「意思決定に本当に必要な情報は何か」を常に見極める姿勢が大切です。目的や課題が曖昧なまま調査を始めると、膨大なデータの中で本質を見失いかねません。

事前に課題を整理し、「誰のための、どんな判断材料がほしいのか」を明確化したうえで調査設計・実施・分析を進めることで、海外ビジネスでの失敗リスクを最小限に抑えることができます。

よくある質問

海外調査とは何か?

海外調査(海外市場調査)とは、海外市場への事業の展開や参入、具体的には商品やサービスの提供を行う際に、成功確率を最大化することを目的とし、海外現地のマーケット、動向、競合、価格、チャネル・流通など様々な観点から調査・分析することを指します。

海外進出前のリサーチはネットリサーチで十分ですか?

業界や対象国にもよりますが、ネットリサーチだけでは不十分な場合が多いです。海外市場は現地調査を実施しないと分からないことが本当に多く存在し、場合によってはどんなネット上のデータよりも現地のリアルな声とその場所の雰囲気や習慣などを正確に把握できることの方が価値が大きいのです。

マーケティング戦略のための
市場調査・競合調査にお悩みなら

本コラムの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

関連コラム

  • 競合他社との差別化は本当に必要?差別化の本質を捉えるには
  • 競合他社の情報収集方法7選
  • 【競合他社の見つけ方】闇雲に同業者をリストアップしても意味はない
  • 企業が海外市場を開拓するための方法とポイント
  • 市場占有率とは?データとして有効活用するためのポイントを解説
カテゴリー
おすすめ記事
  • 競合他社との差別化は本当に必要?差別化の本質を捉えるには
  • 競合他社の情報収集方法7選
  • 【競合他社の見つけ方】闇雲に同業者をリストアップしても意味はない
  • 企業が海外市場を開拓するための方法とポイント
  • 市場占有率とは?データとして有効活用するためのポイントを解説
Pick Up!
  • マーケティング戦略のための市場調査・競合調査にお悩みなら
  • 完全独自インタビュー
  • 最先端市場の市場調査レポート