弁護士プロフィール
北浜法律事務所
薮内 俊輔 弁護士
やぶうち しゅんすけ
公正取引委員会で、2006年から2009年の3年間、任期付き公務員として勤務。公正取引委員会では、独占禁止法、景品表示法などの違反事件の調査、審判手続への対応などを担当。
その経験を活かし、独占禁止法、景品表示法及び下請法に関連する行政機関からの調査への企業に対する助言や代理人としてのサポート、社内調査の実施、M&A案件での届出手続支援、企業からの相談へのアドバイス、コンプライアンス態勢整備の助言や社内研修における講演等を行っている。
本文管理措置指針|事業者に求められる正しい情報の確認とは
一般消費者に誤解を与える広告を予防するために、事業者は広告内容の根拠をあらかじめ確認しておくことが求められる。
例えば「No.1」「日本初」など、他社と比較して自社の優位性を示す表示では、裏付けとなる根拠が必要だ。万が一根拠がないにも関わらず、このような表示をしていれば、優良誤認表示、有利誤認表示と判断され、行政処分の対象となる可能性が高い。
このような問題を未然に防ぐため、消費者庁は管理措置指針において7つの項目を定めている。今回はその中でも、事業者が比較的早く取り組みやすい「情報の確認」について、籔内弁護士に話を聞いた。
適切な情報確認とは
管理措置指針では、情報の確認について次のように説明をしている。
事業者は、
(1)景品類を提供しようとする場合、違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種類・提供の方法等を、
(2)とりわけ、商品又は役務の長所や要点を一般消費者に訴求するために、その内容等について積極的に表示を行う場合には、当該表示の根拠となる情報を確認すること。
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_220629_04.pdf
No.1表示を目指す事業者であれば、「No.1」である旨を表示するために、どのような意味でNo.1である旨を表示するのか、その表示の根拠としてはどのような調査を誰に対して行うべきか、その調査において実際にNo.1といえる結果が出ているのか、その調査結果が広告に表示している「No.1」の内容の根拠となるものといえるかを確認する事などが「情報の確認」の方法として考えられる。
しかし、情報の確認が不十分であったり、誤って行ったりしてしまうと、不当表示となり消費者庁から指摘を受けることもあるという。
では、情報の確認はどのようにすれば良いのか。管理措置指針では「この「確認」がなされたといえるかどうかは、表示等の内容、その検証の容易性、当該事業者が払った注意の内容・方法等によって個別具体的に判断されることとなる」「事業者が当然把握し得る範囲の情報を表示内容等に応じて適切に確認することは通常求められる」と記載されており、ケースバイケースの判断がなされる事になる。
「取引先や、調査会社等の外部の方から提供された情報に基づいて自社の商品やサービスに関する表示を行う場合には、その外部の方に表示の根拠となる情報を確認することが必要です。具体的な確認の方法として、No.1表示を行う場合に、単に口頭で調査会社にNo.1表示の根拠となる情報について「この情報は正しいですか。表示の根拠となりますか。」と聞いて、問題ない旨の回答を得たというだけでは、確認の方法としては不十分であると判断される可能性があります。
過去に景表法違反とされた事例の中には、事業者が情報の確認が不十分であると判断されて、再発防止策を行うことを命じる行政処分を受けたケースもあります。ただ確認をするのではなく、消費者庁が適切と認める形での確認が求められます」
No.1表示の場合、調査会社の担当者に対して、ただ問題無いか聞くだけでなく、以下のような行動をすると良いとの事。
- 調査の具体的な手法、結果の詳細、表示との対応関係について確認し、疑問点が生じた場合等には改めて説明をしてもらう
- 調査結果がNo.1表示の根拠となる理由について確認し、疑問点が生じた場合等には改めて説明をしてもらう
- (上記で疑問が解消されない場合や、慎重を期す必要がある場合)調査の手法、結果、表示との対応関係等について外部専門家に検証してもらう
単に調査会社から提示された結果を鵜呑みにするのでなく、どのような過程で調査が行われたのか等を、まずは調査を依頼した事業者自身において理解、把握する事が重要だ。
「外部の方から提供された情報に基づき表示を行う場合に、情報の確認で重要な事は、その情報の根拠資料を確認できる場合には、それを確認するということです。No.1表示の場合は、調査会社に対して調査結果の詳細を問い合わせることは容易なので、調査方法に問題がないか、調査結果から本当にNo.1と言えるのか、調査の結果とNo.1表示の内容が対応しているのか、改めて確認する必要があります」
事業者が調査会社から提示された情報を再検証する事で、仮に恣意的な調査結果を提示された場合でも、その不自然さを見抜くことが出来る。
「手間のかかる作業ですが、No.1表示自体は強い訴求力がある広告になることが一般的ですので、なぜそのような訴求が可能であるのかという調査結果(表示の根拠情報)の確認は表示を行う前に行うべきですし、また、その情報は調査会社から取得可能であって内容を確認することもできるため、このような確認は通常求められると考えられます」
なぜ、ここまで根拠を確認する必要があるのか。実際に過去の不当表示の事例では、事業者が表示の根拠となる情報の確認が不十分であったため、実態とは異なる内容の表示がなされ、一般消費者に誤認を与えることになった事例が多数ある為だ。
「情報の確認とは、表示と実態が食い違っていないことを確認して、実態とは異なる内容の表示が行われることを防ぐために行う措置です。No.1表示においては、調査会社に対して説明や資料提出を求めて直接確認することが可能です。調査会社において収集した一次的な資料(例えばアンケート調査における回答票等)を正確に調査結果として取りまとめているか自体を直接確認することは困難かもしれませんが、この点は調査会社において不備がないかを改めて社内確認をしてもらうことを要請して、問題なかったことを書面やメールで回答を得るなどの方法での確認も考えられます」
「調査会社自身が、意図的にデータを捏造、改ざんしたり、十分なデータ管理や確認を怠ったため、誤ったデータに基づきNo.1表示を行ってしまった場合も、No.1表示を行った事業者が不当表示を行ったことにはなりますが、十分な情報の確認を行っていたケースでは、課徴金納付命令の対象にはなりませんし、措置命令に関しても命令までは行わないという判断がなされる可能性は十分にあると考えられます」
調査会社に依頼すれば安心ではなく、一手間を加えた情報の確認方法を社内で検討しておくと良いだろう。
調査結果で注意すべき事
調査結果を確認して終わりではなく、その後の運用方法についても注意が必要だと籔内弁護士は説明する。
「調査結果が適切なものであっても、広告時に攻めた表示を活用してしまうと、誇大広告とみなされる可能性もあります。調査結果をどのような形で表示し、No.1や高評価表示を行うか検討しなければなりません」
消費者庁が最初に注目する点は、一般消費者が目にする広告からどのような認識、印象をうけるかという点だ。No.1表示は調査過程も重要だが、広告の記載方法次第で、例えば調査をしていない点も含めてNo.1と認識されるような表示の場合は、一部根拠がない表示となる誇大広告になってしまう。行き過ぎた表現を用いてしまうと、No.1表示の裏付け調査が適切に行われていた場合でも、不当表示と判断される可能性がある。この点を注意して表示を運用しておくと良いだろう。
まとめ
情報の確認は一見簡単な確認作業のように思えるが、今回紹介した一手間を加えた確認が抜け漏れていると、消費者庁から不当表示として調査や処分を受ける可能性がある。
No.1表示の場合は、一手間を加えることを意識して、表示を確認しておくと良いだろう。
北浜法律事務所
https://www.kitahama.or.jp/
企業法務を中心に国内外の様々な案件を取り扱う総合法律事務所。東京、大阪、福岡の3拠点で事業を展開。M&A、証券、ファイナンス、知的財産、事業再生・倒産、独禁法、国際商取引、訴訟・仲裁をはじめとする各分野のエキスパート弁護士が所属し、ワンストップで包括的なリーガルサービスを提供する。
本インタビューの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
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2025年08月20日





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