村田大樹弁護士へのインタビュー「No.1表示規制の今」

2024年12月10日

調査報告書を踏まえたNo.1表示規制の今

インタビュー日 2024年10月31日

「ベンチャー企業や売上規模の小さい事業者であれば、措置命令の対象とならないので多少攻めた広告表示をしても責任を問われる可能性は低い」

これは、景品表示法(以下「景表法」という。)を軽視する弁護士や有識者はこのような見解を事業者に示し、事業者が景表法に違反した表示を行っているケースもある。

しかし、景表法の改正により違反行為に対する規制が強化された今、この見解は大きな誤りだ。景表法は表示を行う全事業者に規制を課すものであり、措置命令の対象は必ずしも事業規模の大小で決まる訳ではない。消費者庁が令和6年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」(以下「調査報告書」という。)を公表するなど、取り締まり強化に向けた動きを見せる中で、小規模事業者も含め全事業者が注意すべきことは何か、今回は景表法に精通している弁護士法人三宅法律事務所の村田弁護士に話を聞いた。

弁護士法人三宅法律事務所
https://www.miyake.gr.jp/

企業法務をはじめ、事業者が対処すべき問題に対し各領域に精通した弁護士が対応する法律事務所。事後処理だけではなく、戦略・予防・臨床等の法務の各面において、依頼者の経営過程において何が問題なのかを発見し、法の理念を活かし、依頼者の長期的利益を考慮して、問題の総合的・根本的解決を目指す。

措置命令の対象は事業規模に関わらない

「そもそも小規模事業者は措置命令の対象外となる」という話は間違っていることについて、村田弁護士に解説して頂いた。

「例えば、令和5年12月7日に措置命令が行われた株式会社ハハハラボの事案は、実際は調査対象者による商品の利用有無等を確認せず、各販売サイトの印象を問う調査を行ったに留まり、客観的な調査を行っていないのにも関わらず、「コスパが良いと思えるダイエットサプリ No.1」などの表示を行った事例ですが、当時の株式会社ハハハラボの資本金は100万円と比較的小規模でした。景表法に違反した表示を行っている事業者は、事業規模や売上に関わらず措置命令が行われ得るため、小規模事業者も景表法対策を蔑ろにできないことを示す良い事例です」

消費者庁は、必ずしも事業規模で措置命令の対象を判断している訳ではなく、一般消費者から情報提供等があれば、小規模事業者であっても調査を実施し措置命令を行うこともあり得ると理解しておく必要があるだろう。また、小規模事業者であるからこそ注意すべき点もあると村田弁護士は指摘する。

「株式会社ハハハラボの事例で注目すべきは、同事業者はアフィリエイトサイトを利用して表示を行っていたところ、消費者庁が同事業者をそのアフィリエイトサイトの表示主体であると認定し措置命令を行った点です。小規模事業者の場合、広告体制が充実していないことから、広告方法をアフィリエイトに依存することがよくありますが、アフィリエイターと共同で表示内容を決定した場合のみならず、アフィリエイターに表示内容の決定を委ねた場合等も、当該事業者は表示行為を行ったと判断され得ますので、アフィリエイターの作成する表示が不当表示に該当しないか必ず確認する必要があります」

アフィリエイターに広告を依頼する場合も、表示に関する全ての責任は事業者にあると考えておかなければならない。

小規模事業者が講ずるべき対策とは

事業者の大小に問わず景表法に則った対策が求められるが、具体的に何をすれば良いのだろうか。その答えが、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年11月14日内閣府告示第276号。以下「管理措置指針」という。)だ。管理措置指針で示された講ずべき具体的措置7項目を事業者が適切に対応をしていれば、措置命令になる可能性のある表示を排除出来る。特にNo.1表示等を行おうとする事業者にとって最も重要なのは、表示等に関する情報を確認することであると村田弁護士は指摘する。

「調査報告書では、不当なNo.1表示が行われる大きな要因は事業者が表示の根拠となる調査の内容に無関心であることだと指摘した上で、第三者機関による調査が実施されていることのみを確認するだけでは不十分であり、自らの責任において当該No.1表示等が合理的な根拠を有しているといえるかを確認することが必要であると特に強調して指摘されています。事業者としては、消費者庁から調査が入った場合、そして最終的には裁判で争った場合に、客観的な調査の過程を示す資料を説得的に提示できるかを常に念頭に置きながら、表示の根拠となる情報を確認することが重要です」

どのような調査がNo.1表示の合理的な根拠といえるのかは、表示の内容、商品等の特性等を踏まえて判断されるが、特に、主観的評価によるNo.1表示は措置命令事案が多いため注意が必要だ。

「調査報告書では、「顧客満足度No.1」のような主観的評価によるNo.1表示を行う場合、調査の結果が合理的な根拠と認められるためには、少なくとも①比較する商品等が適切に選定されていること、②調査対象者が適切に選定されていること、③調査が公平な方法で実施されていること、及び④表示内容と調査結果が適切に対応していることが必要であると指摘されています。「顧客満足度No.1」という表示の根拠として、販売サイトの印象を問うたようなイメージ調査のみが実施されている場合もありますが、合理的な根拠があるとは認められない可能性が高い上、「※サイトイメージ調査による」という注記をしたとしても違法性が解消されるわけではないので、注意が必要です」

表示を行う場合は、管理措置指針の各要件を満たしているかを必ず確認する必要があるが、判断出来ない場合は調査報告書を確認することを推奨する。各要件に関して不適切と考えられる場合の典型例が挙げられているので、全事業者の運用方針の参考となるだろう。

外部の弁護士と連携した確認の重要性

村田弁護士によれば、表示の根拠となる情報の確認を行う際は、外部の弁護士と連携するなど、第三者の目が入るようなチェック体制を構築することが重要であるとの事。

「事業者自身で、不当表示を防止するためのマニュアルやチェックリストを作成し、表示の根拠となる情報を確認することは重要ですが、No.1表示の強い訴求力に魅かれて確認が甘くなる可能性も否定出来ませんので、第三者、特に景表法に精通した弁護士のチェックを受けることが重要です」

最近では、欲しいNo.1表示が必ずできるとして半ば強引な営業をかけ、表示の根拠には到底なり得ない杜撰な調査を行う調査会社も存在する。

「例えば、No.1表示を獲得できなければ全額返金しますと営業をかける調査会社も存在します。このような勧誘が直ちに違法というわけではありませんが、結論ありきで偏った調査手法を用いている可能性が高いため、注意が必要です」

その他にも、「消費者庁の指摘を受けて対応済み」や「業界最安値で調査を実施する」などと真偽が疑わしい謳い文句で事業者を誘う調査会社も存在する。2023年度の一連の措置命令事案を機に、景表法上の条件を満たしていることを強調した勧誘を行う調査会社も現れると考えられるため一層の注意が必要であるが、適切な調査を行う調査会社を見分けるポイントもあるようだ。

「事業者の属する業界に詳しいかどうかや、ガイドラインを遵守しているかどうかも重要ですが、入念な打ち合わせを行った上で、事業者の要望を踏まえ、実施予定の調査手法について詳らかにしてくれる調査会社は、比較的安心できると思います。費用の低廉さを強調したり、根拠を示さないまま景表法への適合性を強調したりする調査会社は疑った方が良さそうです」

適切な調査が行われるのか見抜くのが難しい場合もあるので、調査会社の選定の段階から村田弁護士のような景表法の相談実績がある弁護士に相談することが重要だろう。

「欲しい調査結果が得られたとしても、その調査手法が杜撰であれば表示の根拠となし得ないため、調査会社に依頼する前に、調査会社が提示した調査方法により得られた調査結果が、欲しい表示の根拠となり得るのかについて、あらかじめ弁護士の意見を聞くことが有効です」

いくら調査会社の調査手法が杜撰だといっても、表示の責任を負うのは事業者である。不当表示を防止するために、事業者内でも調査手法への関心を高めると共に、早め早めの相談が重要ということだろう。

まとめ

事業規模の大きさに関わらず、7つの管理措置指針に対応できていない事業者は早急に対策を検討すべきだ。

管理措置指針をどのように構築したら良いか分からない、自分たちがどのような点で見落としがあるのか分からない場合は、弁護士の中でも村田弁護士のような景表法に精通した弁護士に意見を求めると良いだろう。

「景表法はマニアックな法律で、弁護士の中でも全員が精通している領域ではありません。常日頃から景表法に触れている弁護士に話を聞くことで、具体的な対策を提示することができるので、遠慮なく話を聞いて頂けると嬉しいです」

村田弁護士はセミナーを積極的に実施している。顧問弁護士のハードルが高いのであれば、まずは事業者内で勉強会を開き、景表法の基礎を学ぶことからでも遅くはないだろう。

村田大樹弁護士(大阪弁護士会)
https://www.miyake.gr.jp/profile/%E6%9D%91%E7%94%B0%E5%A4%A7%E6%A8%B9/
民事・商事一般を取り扱いとし、様々な事業者の問題と真摯に向き合う。三宅法律事務所では、景表法セミナーも開催しており、事業者に適切な情報を発信するよう日々心がけている。
主な著作
「外国人を被保険者とする生命保険契約における説明義務」保険事例研究会レポート第340号 生命保険文化センター(2021)
「景品表示法改正と金融業務」銀行法務21 No.902(2023)

(記者 山口 晃平)

㈱未来トレンド研究機構の方針

㈱未来トレンド研究機構では、調査会社(累計25年のキャリア・実績)としての豊富な経験を活かして、今後も「No.1」検証調査、「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査に関する受託業務を本格的に展開していく。クライアント企業のお悩みや課題、不安を一つ一つ解消し、「No.1」検証調査や「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査事業の可能性を広げていく方針である。引き続き、「No.1」検証調査、「初(世界・アジア・日本・業界)」検証調査それぞれで300件/年の受注を目指していく方針である。

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株式会社 未来トレンド研究機構 「No.1」検証調査 業務担当

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【会社概要】

会社名 株式会社 未来トレンド研究機構
https://www.espers.co.jp
所在地 東京都千代田区九段南一丁目5番6号 りそな九段ビル5階 KSフロア
設立 1999年8月19日
代表者 代表取締役 村岡 征晃(むらおか まさてる)
事業内容 (世界初、アジア初、日本初、業界初)検証調査、No.1(検証)調査、海外調査、競合調査、未来予測のご用命は”未来トレンド研究機構(略称:未来トレンド)”へ!

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