石田優一弁護士へのインタビュー「スタートアップ事業者のNo.1表記」

2024年08月28日

弁護士プロフィール

弁護士法人みお綜合法律事務所 神戸支店

石田 優一弁護士

いしだ ゆういち

略歴

弁護士法人みお綜合法律事務所 神戸支店
https://www.mio-kobe.com/

大阪・神戸・京都の3拠点で、個人、法人まで様々なニーズに合わせた法務サービスを展開。弁護士法人みお綜合法律事務所 神戸支店では、登録情報セキュリティスペシャリストや社会保険労務士の資格も持つ石田優一弁護士が、ベンチャー企業をはじめ、事業者に寄り添ったサポートを行う。「かかりつけの弁護士」となれるよう、クライアントのニーズに対応。「Web Lawyers」では、ITスタートアップ・ベンチャーを中心にオンラインで弁護士に相談できる法務サービスを展開。

Web Lawyers
https://web-lawyers.net/

石田優一弁護士(兵庫県弁護士会)
https://www.mio-kobe.com/lawyers/ishida/

弁護士資格だけでなく、社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリスト、応用情報技術者などの資格を持ち、多角的な視野で相談者をサポートする。あらゆる法律問題に対応できる「かかりつけ弁護士」を目指し、法律の⼒を使って全⼒で解決を図る。

関連書籍
「ケーススタディでわかる オンラインサービスのスタート法務」 石田優一著 中央経済社
https://www.amazon.co.jp/dp/4502437816/

本文

スタートアップ事業者ための改正景表法対策〜消費者目線で表記を見る際の考え方〜

改正景品表示法が間もなく施行を迎えることになり、事業者はこれを機にガイドライン等を見直す必要がある。商品・サービスに対しNo.1表記を行う事業者であれば、「No.1に関する実態調査報告書」が新たに発表されたタイミングで検討し直すのが良さそうだ。
景品表示法(以下 景表法)に則った運用は、これから新規ビジネスを始めようとするスタートアップ事業者に対しても求められる。そこで、改正景表法関連でスタートアップ事業者が特に知っておくべきことは何かについて、弁護士法人みお綜合法律事務所神戸支店の石田優一弁護士にお話を伺った。

事業者が陥りやすい「確約手続」の誤解

改正景表法の中で、No.1や初の表記を運用する事業者が関係する新たな制度は確約手続だ。確約手続は、措置命令・課徴金納付を免れる代わりに、事業者は「改善計画」を作成し、60日以内に公正取引委員会に提出しなければならない。
これまで実施したインタビューの中でも、「確約手続によって、消費者庁は措置件数を飛躍的に伸ばせるのではないか」「確約手続は公表リスクがあるため避けた方が良い」と様々な意見を聞くことができた。 石田弁護士によれば、「確約手続の導入によって景表法違反のリスクが低くなった訳ではない」とのことだ。
「確約手続が導入されたことで、『景表法違反のリスクが低くなった」と誤解してはなりません。確約計画の認定を受けるまでのステップは大変ハードルが高く、容易に認定を受けられるものでは全くありません。また、今回の景表法改正では、制裁の強化が図られています。決して、景表法違反が「軽いもの」になる訳ではありませんので、その点に留意が必要です」(石田弁護士)

10月に施行される改正景表法のポイントは、確約手続の導入だけではない。石田弁護士によれば、課徴金制度の強化や、罰則規定の拡充(優良誤認表示・有利誤認表示に対する罰金規定の新設)が図られているため、不当表示の問題については、規制がだんだんと厳しくなっているとのこと。事業者は景表法に則った運用が今後も求められる。

No.1や初の調査サービスを展開する事業者の中には、景表法違反によるペナルティを受けた場合に全額調査費用を返還するサービスを展開しようとしているところもある。しかし、このようなサービスを利用することで、景表法違反のリスクがなくなる訳ではない。

「景表法に違反した場合、措置命令を受けることで、その事実が公表されてしまいます。例え調査費用が返金されたとしても、企業が『信頼』を失う不利益は、それよりもはるかに大きいものです」(石田弁護士)

事業者が知るべき措置命令

No.1表記には他社との差別化を図る目的で、優位な表記をするケースが多い。
十分な根拠がないままにNo.1表記をすれば、優良誤認表示として指摘されるケースが高い。参考に、令和6年4月26日のエステー社に対して出された措置事例も紹介する。
https://www.caa.go.jp/notice/entry/037589/

「花粉をブロックする効果があるように広告をしていたが、実際には、その効果を示すような合理的根拠がないとして、優良誤認表示(不当表示)に該当すると判断された事例です。エステーのような有名企業であっても違反してしまうほど、優良誤認表示の問題は難しいことが分かります。No.1表記においても、「本当にNo.1といえるのか?」「特定の条件のもとではNo.2にならないのか?」「『本当にNo.1なのか?』と疑う人に、No.1の証明ができるのか?」と、多角的な視点で考えることが求められます」(石田弁護士)

No.1表記の裏付けとなる根拠を示すことが出来たとしても、発信方法に対して注意すべきことがある。ここ最近はステマ規制といわれるものが措置命令として指摘されているのだ。
「インスタグラマーに依頼したchocoZAPに関する投稿を、顧客の体験談であるように消費者が誤認する形で自社サイトに転載していたことが、ステルスマーケティングに該当すると判断されたケースがあります。ステルスマーケティングについては、昨年10月から景表法違反に問われることになりましたので、注意が必要です」(石田弁護士)

景表法の問題はNo.1表記だけではない。ステルスマーケティングや、「通常価格」表示の問題など、様々な問題がある。何よりも「消費者が納得できる広告になっているか?」を意識して、様々なことに配慮する姿勢が求められる。

スタートアップ事業者がやるべきアクションとは

改正景表法の施行に向けてスタートアップ事業者が意識すべきポイントは、大きく分けて3つだ。

  • 法令遵守の観点で対策を考える
  • 消費者目線で表示をチェックする
  • 第三者調査機関の選び方

この3つを意識していれば、スタートアップ事業者であっても適切な運用が期待できるだろう。

法令遵守の観点で対策を考える

スタートアップ事業者は大手事業者と異なり、企業法務でできる対策も限られる。スタートアップ事業者が措置命令の対象になってしまう可能性は低いと言われているが、景表法対策は事業者にとって将来的にプラスになると石田弁護士は指摘する。

「スタートアップ事業者の中にはM&Aを目指すケースも多く見られます。このような事業者が法令遵守を怠ると、M&Aを進める上で支障になってしまうことも考えられます。スタートアップの段階から法令遵守の精神を養っておかなければ、その精神が将来にわたって企業風土として培われてしまい、そのままアップデートできない状況に陥ってしまいます」

スタートアップ段階であったとしても、売上重視という短期的な視点ではなく、措置命令の対象になる可能性が低いといえど、景表法の遵守を意識した適切な対応が求められる。

消費者目線で表示をチェックする

どのような表記が不当表示に該当するのか。不当表示に対して分からない時は、消費者の立場に立って考えることが重要だ。
「『何が不当表示に該当するか?』を考える上では、「自分が消費者の立場になったとして、この表示で誤解しないかな?」と考える姿勢が何より重要です。また、1人だけで判断するのではなく、複数人で議論を交わすことも大切です。人によって、『誤解する恐れがある』、あるいは、『誤解する恐れはない』という判断には、少しずつズレがあるためです。私も、実際、景表法について検討する際、「消費者の気持ちを想像する」ことを心がけています」(石田弁護士)

特に、スタートアップ事業者の場合、景表法の教科書には載っていない「斬新なサービス」を展開しているケースが多いため、景表法に違反するかどうかを判断することが難しい。石田弁護士が、そのようなサービスについて相談を受けた際は、「景表法は消費者を守るルールである」という大前提に立ち返って、消費者の視点をいっそう大切にしている、という。
「自分が利用者になった時に嫌な思いをしないかを、意識してください。そのような意識を持てれば、景表法についての判断ミスは、大きくのケースで防げると思います」
景表法違反は、商品・サービス開発担当者と広告担当者の連携が図れておらず、広告担当者が商品・サービスのことをよく理解していないために起きるケースも多い。社内の「縦割り」を解消し、密に連携を図る姿勢も大切であると、石田弁護士は指摘する。

第三者調査機関の選び方

No.1表記に問題がないかの調査を第三者調査機関に求めるケースがある。その場合、自社の業界事情に精通している調査会社を選ぶと良いと、石田弁護士はいう。
「実際に担当者とミーティングをして、自社の業界について調査実績はあるか、十分に知識・理解があるかを確認する姿勢が大切であると思います。同業の方に、お薦めの調査会社を聞いて頂くことも、1つです。実際に依頼してみないと、その調査会社にどれほどのノウハウがあり、適切な調査をして頂けるか、見抜きづらいところがあります。実際に依頼をしたことのある方からの情報は、有益です」(石田弁護士)

また、新製品情報など、機密性の高い情報を提供しなければならない場合は、情報セキュリティ水準についても確認をしておくべきであると、石田弁護士は指摘する。

「調査会社に調査を委ねる際には、新製品・新サービス情報などをお渡ししないといけないことも多く、情報漏えい等のリスクを避けたいところです。できる限り、情報セキュリティ体制に問題はないかを確認して、安心して大切な情報を提供できるかを見極めることが重要です」(石田優一)

セキュリティチェックまで行き届いている第三者機関であれば、一般に、事業者に寄り添った対応が期待できる。大事な商品やサービスの情報を預かっているという認識を持つ調査会社を数社ピックアップして選定すると良いだろう。

まとめ

改正景表法の施行前に事業者が講じるべき対策はまだ多く存在する。本サイトで取り上げる記事のほか、消費者庁の公表する情報、景表法問題に精通した法律事務所サイトのコラムなどから、情報を収集しておくことをお薦めする。また、景表法違反かどうか判断がつかない場合は、弁護士への相談も検討して頂きたい。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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