大谷拓己弁護士へのインタビュー「No.1表記の基礎知識」

2024年05月27日

弁護士プロフィール

弁護士法人咲くやこの花法律事務所

大谷 拓己弁護士

おおたに たくみ

略歴

参考情報:実績豊富な顧問弁護士をお探しなら大阪の咲くやこの花法律事務所

大谷拓己弁護士(大阪弁護士会)
https://kigyobengo.com/profile/otani
労働事件を中心に様々な企業に関する法務を得意とする。会社一般法務を担当し、依頼者に寄り添った親切・丁寧で分かりやすい説明が得意。「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」をモットーに、咲くやこの花法律事務所の若手弁護士として期待されている。

<経歴>
令和2年神戸大学法学部卒業
令和4年京都大学法科大学院修了
令和4年司法試験合格、最高裁判所司法修習生(第76期)
令和5年大阪弁護士会登録
本文

『弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 大谷拓己弁護士 へのインタビュー』No.1や初に関する事業者向けの基礎知識 

1から学ぶNo.1と初表記〜事業者が知るべき基礎知識と2つのアプローチ〜

「売上本数No.1」「顧客満足度No.1」等の表記について、これまで「自社調べ」を元に作成していた事業者は、これまで以上に危機意識を持たなければならない。

2024年3月に消費者庁が発表し2024年秋頃に発表が予定される「No.1表示に関する実態調査」の結果次第では、これまで問題視されなかった表記も景品表示法(以下 景表法)違反の措置対象になる可能性が高い。事業者が最低限知らなければならない景表法の考え方について、今回は企業法務に精通する弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の大谷弁護士に話を聞いた。

弁護士法人咲くやこの花法律事務所

顧問先500社以上。景品表示法その他広告規制の相談・IT関連・知的財産関連など、様々な法律相談から、多種多様な業界の顧問先サポートの経験まで、企業法務における実績豊富な弁護士が多く在籍している。

1.措置命令対象から見えてきたNo.1表記を行う事業者が注意すべき点

直近の措置命令や課徴金納付命令対象となったNo.1に関する措置命令を整理すると、事業者が3つのポイントにおいて注意すべき項目があると大谷弁護士は分析する。

ポイント1. 主観を尋ねる質問かどうか?

問題のある事業者の事例を照らし合わせると、アンケート内容が回答者の主観を尋ねているものが多い。例えばアンケート用紙に各事業者のWebサイトを羅列し、印象に残る物はどのサイトかを問うものだ。大谷弁護士によれば「単に回答者の主観を尋ねる質問は、恣意的な調査と判断される傾向があります。たとえば、特定のサービスの印象を尋ねる場合です。客観性に欠けた調査は表示の根拠資料として不適切です」とのこと。調査で活用するアンケートが主観的になっていないかを事業者は正しく見極めなければならない。

ポイント2. 質問事項が恣意的かどうか。

主観的な設問を避けるだけでなく、自社がNo.1に選ばれるような恣意的な設問を作成してはなりません。どのようなアンケートが恣意的な設問と判断されるのか。大谷弁護士によれば「数ある事業者や商品の中から一部をピックアップして比較させる質問は恣意的と判断される可能性があります」「消費者庁の指針によると、自社製品と他社製品を比較する場合に必要になるサンプル数は、対象商品の特性や、広告の影響の範囲・程度などを考慮して判断すると説明していますが、判断が難しいところです」とのこと。

事業者がNo.1表記をする際に、数ある事業者の中から10社の事業者のみでアンケートを実施する場合は、何故数ある競合他社の中からその10社を事業者は選定したのかの根拠を明確に示さなければなりません。

事業者が作成した質問事項が恣意的なものかを判断できない場合は、一般消費者の感覚に近い関係者か景表法に精通している弁護士から意見を聞いても良いだろう。

ポイント3.回答者の属性が特定できるかどうか?

アンケート項目だけでなく、アンケート回答者を誰に(選定)するのかも客観的な調査に基づいたNo.1表記では忘れてはならない視点だ。過去の措置事案では、事業者が実際の表示と乖離した属性の者にアンケートを実施していた事案がありました。調査をする場合、回答者の属性をはっきりさせる必要があります」(大谷弁護士)

例えば自動車メーカーが自社製品のAという車に対して利用満足度を調査するアンケートを実施する場合、Aを運転したことのあるドライバーにアンケートを実施しなければ利用満足度を測定できない。

アンケートの中身だけでなく、事業者が求めているNo.1表記に適したアンケート対象者かどうかも調査前にしっかり確認しておくと良いだろう。

初調査で注意すべきこと

No.1では3つのポイントを意識した調査を実施することで、景表法違反のリスクを下げることが可能だが、初調査はどうか。大谷弁護士によれば、「『初』表示を見た一般消費者は、その商品等についてまだ取り扱う会社が存在していないという印象を持ちます。一般消費者にこのような印象を与える以上、これを裏付ける合理的な根拠資料が必要です」初調査を実施する事業者は、何に対しての初かを明確にした上で調査を実施しておくと良いだろう。

「消費者庁は事業者に対し完璧な情報を求めている訳ではありません。何に対する初かを明確にし、逆算して調査を実施すれば客観的に初表記に必要な資料を見つけることができるのではないかと考えています」(大谷弁護士)

初調査はどこまで調査をすれば良いか、表記内容次第では判断が難しい場合がある。初に関する知見が無く事業者だけで判断出来なければ調査会社や弁護士に意見を聞くと良いだろう。

「過去の指針を読む限り、消費者庁は事業者に対して常に完璧な調査を求めているわけではないと考えます。あくまでも、調査結果を適切に引用せず、調査内容と実際の表示に乖離がある場合に問題になります。さしあたり、最初に表示したい内容を明確に決めて、その表示をするために必要な調査の範囲や期間を逆算して設定すれば、初表示に必要な根拠資料が見えてくると考えます」(大谷弁護士)

No.1表記における2つのアプローチ

2024年は新たなNo.1に関する実態調査が発表され、改正景表法が施行される転換期となる1年だ。No.1や初表記へのチェックはこれまで以上に厳しいものとなるだろう。事業者は表記を検討する際、「他社と比較する形式で満足度等の調査を実施するケース」か「自社の製品を利用している人を対象にしたアンケート調査を実施するケース」の2つの選択肢を用意すべきだと大谷弁護士は説明する。

他社との比較を行う形でNo.1や初を表記する場合は、客観的な資料を元に自社が優れていることを証明しなければならない。調査結果が実態とかけ離れた調査資料と判断されれば景表法違反に該当し、措置命令・課徴金納付命令対象となってしまう。

「消費者庁は『事業者が講ずべき措置』として事業者内で景表法上の不当表示をしないように一定の措置を要求しています。もし、このような措置をとることが難しい場合には、そもそもNo.1表示をしないという選択肢も考えられます。たとえば、自社の製品を利用している人のみを対象に、自社製品のみの満足度等を尋ねる手法です。この場合、他社と比較するわけではないため、不当表示だと指摘されるリスクを下げることができます。」(大谷弁護士)

No.1表示は一般消費者に対して強い印象を与えられるが、その分、不当表示だと指摘されるリスクが大きい表示方法である。もしNo.1表示について迷っている場合には、信頼できる調査会社や弁護士などに意見を聞くと良いだろう

No.1や初に関して基本的な情報を改めてまとめると、消費者庁が提示している報道発表資料、ガイドラインが事業者にとって重要な指標となることが分かる。消費者庁は、「事業者が構ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」というガイドラインを発表し、事業者のこれからの景表法に対する心構えも示している。

景表法に対し事業者がどのように向き合うか、この機会に検討をしておくと良いだろう。とはいえ、知識を1から学ぶのが難しいという場合は弁護士事務所が運用する記事が参考になることもある。

大谷弁護士の所属する弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、景表法に関する解説記事を作成し、基礎的な知識を記事で学ぶことができる。景表法についての知見を増やしたい担当者はこの機会に一読しておくことをお勧めする。

本インタビューの監修者

未来トレンド研究機構 
村岡 征晃

1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。

ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。

そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。

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