2024年04月09日
競合調査とは?実用的な調査方法と成功させるためのポイント
新しいビジネスを立ち上げる際、新商品やサービスを開発・ローンチする際、あるいは競合との競争に勝ち残ってビジネスを存続させるためには競合調査は必須です。この記事では「競合調査とは何か?」という基礎知識から、調査の項目や流れについて解説します。
また、競合調査は正しく行わないと戦略策定に必要な情報が得られません。調査を行う際のポイントや注意点についても解説します。
・「競合調査」についての基礎知識
・「競合調査」の調査項目例と調査フロー
・「競合調査」の結果を有効活用するためのポイント
本コラムは、市場調査業界で多くの実績を誇る未来トレンド研究機構が監修しております。
情報収集の重要性が、日に日に増している昨今、少しでも皆様のお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。
目次
競合調査とは
競合調査とは競合の状況や状態、あるいは競合商品・サービスをさまざまな観点から調査し、自社あるいは自社の商品・サービスと競合を比較して強みと弱みを分析することです。効果的な差別化戦略やベンチマーク戦略の立案を目的として実施します。
他者との差別化を図りたい、新商品やサービスを開発するにあたって比較分析を行いたい、販売促進のための手法を模索したいなど、目的に合わせて同業界・同業種の情報を収集・分析します。目的を達成するためには調査の設計や全体フローを把握し、適切な方法を洗濯することが重要です。
市場調査との違い
競合調査とは前述のとおり競合他社の状況や状態あるいは競合商品・サービスを調査し、自社あるいは商品・サービスと比較して分析することを指します。それに対して市場調査はターゲットとなりうるマーケットに対して行う調査です。
市場調査ではターゲット顧客層に対するアンケートやインタビュー調査などを行い、顧客の動向や思考、商品・サービスに対するニーズを分析します。
競合調査の重要性
以上で競合調査の概要についてご説明しましたが、そもそもなぜ競合調査を行う必要があるのでしょうか?ここからは競合調査の重要性について解説します。
① 事業運営のリスク回避と成功確率向上
② 新たな強み・新たな競合の発見
③ 戦略の見直し
④ 業界トレンドの把握
①事業運営のリスク回避と成功確率向上
事業を行うにあたって自社の競合の存在は大きな脅威です。競合に顧客が流れることで、売上や利益が減少してしまいます。競合調査を行って競合商品・サービスに対する優位性を分析し、それを戦略的に押し出していくことで売上・利益アップにつながり、成功確率を高めることができます。
②新たな強み・新たな競合の発見
自分の強みは自分で気づいていないことも多いです。競合調査で競合と比較することで、自覚していなかった自社あるいは商品・サービスの強みに関して気づきを得られる可能性があります。また、競合状況は刻一刻と変化するものです。競合調査によって新しい競合の台頭、あるいはこれまで漏れていた競合、競合としてみなしていなかった競合などを発見することができます。
③戦略の見直し
市場の状況は社会情勢やトレンドの変化によって常に変動しており、前述のとおり競合の状況も一様ではありません。それに伴って企業も経営や販売、マーケティング、開発戦略を柔軟に変えていくことが大切です。定期的に競合調査を行い市場や競合の状況を把握することで、経営戦略の見直しと最適化につながります。
④業界トレンドの把握
市場のトレンドは常に変わり続けています。特に近年ではネットの普及やグローバル化などによって新しい価値観がどんどん生まれ、トレンドの変化も非常に目まぐるしくなっています。そうした状況下で従来の戦略や手法を取り続けていれば、すぐに衰退してしまうでしょう。業界のトレンドに取り残されないためにも、競合調査は必要不可欠といえます。
競合調査の項目例
競合調査の項目は非常に多岐にわたります。下表に主な調査項目例をまとめました。競合調査を行う際には目的に合わせて適切な調査項目を設定しましょう。未来トレンドでは、下表の項目は勿論、その他お客様に合わせた項目のご提案から調査・アフターフォローまで可能です。
- ビジネスモデル/スキーム
- 売上計画/実績
- 視認性/認知
- 強み/弱み(SW)
- 機会/脅威(OT)
- 顧客理解
- 顧客リスト
- 顧客インサイト
- 流通構造(チャネル・フロー)
- 仕入先別仕入量/荷量
- 各段階の取引額
- W/R比率
- 中心事業の収益力
- 事業の成長性
- 海外売上比率
- 製品価格/見積額
- 定価のないサービスの実態価格
- 生活者の価格受容性
- 価格弾力性
- 価格別購入意向率
- ペルソナの深堀
- コンテンツ評価
- カスタマージャーニー
- 代理店
- フランチャイジー
- エージェント
- 商社
- コンサルタント
- 営業手法収集
- 販路
- 営業ツール/セールストーク
- 営業スキーム
- アポイント獲得
- 販売実績
- 代理店/量販店との関係性
- 競合排除の戦術
- 店頭販促戦略
- 営業手法収集
- マーケティング手法
- 市場の需要
- ターゲット/セグメント
- 5F/4P/4C/3C
- 広告の出稿状況
- 活用チャネル
- 広告宣伝費
- PR状況
- 顧客満足度
- 製品/サービス認知度
- 消費者行動モデル
- ブランディング施策の立案
- リピート率
- ナーチャリング戦略
- 顧客ロイヤリティ
- 関係構築スキーム
- 個別ニーズ
- 設定目標/KPI
- 顧客単価の推移
- 組織体制
- 雇用状況
- 賃金/報奨
- 人材教育/福利厚生
競合調査のフロー
やみくもに調査を進めてもなかなか期待した結果が得られない可能性があります。ここからは市場調査のやり方を手順ごとにご説明していきます。
① フェーズ①:【整理】きっかけ・目的の整理
② フェーズ②:【対象】競合の定義・選定
③ フェーズ③:【仮説】仮説の立案
④ フェーズ④:【実査】調査開始
フェーズ①:【整理】きっかけ・目的の整理
まずは「何のために競合調査を行うのか?」という目的を明確にしましょう。経営戦略の立案のため、新商品・サービスの開発のため、商品・サービス改善のため、販売戦略やマーケティング戦略の見直しのためなど、会社によって競合調査の目的はさまざまです。これによって必要となる情報や調査の手法、項目が変わってきます。
目的が明確化されていないのであれば、「なぜ競合調査が必要だと思ったのか?」というきっかけを考えてみましょう。そうすれば自ずと目標が明確になってきます。
フェーズ②:【対象】競合の定義・選定
調査の目標が決まったら、次は「どのような企業が競合となりえるのか?」という競合企業の定義付けを行いましょう。たとえば商品やサービスの開発、改善を目的としているのであれば、類似の商品・サービスを販売している企業が競合となり得ます。
ただし、競合となりえるのは同じ業界の企業だけとは限りません。たとえばダイエット食品を販売する場合、「痩せるための商品・サービスを提供する」という意味ではフィットネスジムやパーソナルジムが競合になり得る可能性もあります。また、「美しくなりたい」というニーズを捉えるなら、エステや美容クリニックも競合とみなすことができます。
市場全体や顧客のニーズを広い視野で俯瞰し、競合の候補を選定しましょう。
フェーズ③:【仮説】仮説の立案
調査対象が決まったら次は自社の状況や立ち位置に関して仮説を立てていきましょう。「競合A社が新商品を出し、○○について自社商品よりも優れているから売上が減少した」「競合B社は原価を低く抑えているから、自社よりも安価に商品を提供できている」というように、他社がなぜ自社よりも優位に立っているか?見立てを立てましょう。
前者の仮説であれば競合商品の内容、後者であれば販売戦略やビジネスの流れを分析することで、要因を検証できる可能性があります。
フェーズ④:【実査】調査開始
目的、調査対象、仮説が決まったら、調査の方法を考えましょう。競合調査には3C分析、4C分析、ファイブフォース分析など、さまざまなフレームワークがあり、その中から最適なものを選択します。
同様に、調査項目についても調査の目的や対象に応じ、仮説を検証できる情報が集められるような項目を選定しましょう。調査方法と項目が決まれば、いよいよ調査を実施していくことになります。
競合調査のポイント
上記のようなフローを経て競合調査を開始します。ここからは競合調査を行う上で意識しておきたいポイントをご紹介します。以下のような要点を抑えることで、より精度が高い調査が可能となります。
ポイント①:効率的な競合調査のためのフレームワーク
競合調査といっても、その手法はさまざまです。目的や競合の定義、対象が明確になったら、必要となる情報が得られるよう効率的に調査・分析ができる手法を選択しましょう。そのためにも競合調査に用いられるフレームワークを把握しておくことが大切です。
3C分析
3C分析とは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要因について自社と他社を比較分析する手法です。競合調査においてはベーシックな手法といえます。
市場の規模や将来性、市場内や顧客ニーズ、競合・自社の強みや弱み、市場シェアや立ち位置、競合と自社の戦略の違い、競合と比較した自社、商品・サービスの強みや弱み、自社の戦略の妥当性など、さまざまな情報を整理して分析することが可能です。
4C分析
4C分析とは「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」について調査・分析する手法です。商品・サービスが顧客に与える価値、コストの妥当性、利用のしやすさ、販売戦略の妥当性などを競合と比較することが可能です。
4P分析
4P分析とは「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売戦略)」について調査・分析する手法です。4C分析と似ていますが、4Pは顧客目線で競合および自社の商品・サービスを分析します。
顧客が得られる価値、顧客が捉えているコストの負担感、商品の購入のしやすさ、接客やサービスの質などを把握することができます。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは「競合他社」「新規参入企業」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「代替品」という5つの側面から競合・自社の商品・サービスを分析する方法です。
既存競合企業の状況、市場に新規参入してくる企業の脅威、売り手(仕入先やサプライヤーなど)の自社に対する影響力、買い手(顧客や販売店、代理店など)の自社に対する影響力、顧客のニーズを満たす代替品の有無などを把握することが可能です。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、商品やサービスの原材料の調達から顧客に提供するまでに経る各工程について分析する手法です。
購買、製造、受注、物流、販売・マーケティング、アフターサービスなどの直接部門、あるいは人事や労務、経理、開発研究などの間接部門において、組織体制や業務フローなどの妥当性や改善点などを競合と比較分析することができます。
ポイント②:調査結果を活用した戦略立案のためのフレームワーク
競合調査を単なる情報収集だけで終わらせてしまうケースも散見されますが、その後の戦略立案や事業運営に活かしてはじめて意味があるものとなります。ここからは以上のようなフレームワークで得られた結果を有効に活かすためのポイントについて解説します。
SWOT分析・クロスSWOT分析
SWOT分析とは自社の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4点について分析する手法です。
先ほどご紹介したフレームワークで得られた情報をこれらの軸で分類することで、自社の強みと弱み、将来性、自社に及ぼす脅威(新規参入企業の存在や競合企業の新たな商品・サービスのローンチなど)を分析することが可能です。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは、自社と競合の立ち位置を地図のように図で表現して分析する手法です。たとえば「使いやすい・使いにくい」「法人向け・個人向け」「顧客の年齢層が高い・低い」というように軸を設定し、競合と自社を比較してマッピングすることで、それぞれの立ち位置が把握でき、今後のポジショニング戦略に役立ちます。
Points Of X
Points Of Xとは「Points of Difference(相違点)」「Parity(類似点)」「Failure(脱落点)」という3点について分析する手法です。自社商品・サービスがどのような価値を持っているのか?競合の商品・サービスとどのような類似点があるのか?競合と比較されたときになぜ顧客から選ばれないのか?を把握することができます。
ポイント③:競合調査を成果につなげるコツ
競合調査は調査そのもの以上にその後の有効活用が重要となります。ここからは競合調査を成果につなげるコツをお伝えしますので、ぜひ以下のことを意識して分析結果を戦略立案などにお役立てください。
ユーザー体験の把握
上記の競合調査に加えてユーザーの動向や心理も確認しておきましょう。特にGoogleやECサイトの口コミやレビューを見ることで競合と自社の商品・サービスを実際に使用したユーザーの声を見ることができます。そこから、ユーザーが求めている体験・経験と、そこから得られる結果を把握して商品・サービスの改善や販売・マーケティング戦略につなげていくことで、より売上アップにつながりやすくなります。
「優位性」と「独自性」
他社と同じようなことをしていてもなかなか成果にはつながりにくいです。競合調査を通じて自社の商品・サービスの優位性や独自性を確立させましょう。単純に「他社と比較した」だけではなく、競合とどのような違いがあるのか?自社の商品・サービスは競合のそれと比較してどのような強み・弱みがあるのか?競合の商品・サービスに欠けているものはないか?を分析しましょう。
【BtoBの競合調査の重要性】より正確に競合状況を把握する方法
BtoBにおける競合調査は他社との差別化を図り、マーケティング戦略や販売戦略を立案するためにとても役立ちます。BtoBをメインとした競合調査の年間実績300件超えの市場調査の専門家が、競合調査の重要性、具体的な分析方法、流れ、効率的に実施するポイントについて詳しく解説します。
競合調査の注意点
競合調査はご自身で行う方法と、リサーチ会社やコンサルティング会社などに外注するという2つのパターンがあります。いずれにせよ、正しく行わないと期待した結果は得られません。ここからは、それぞれについて注意点を見ていきましょう。
ご自身で競合調査を行う際
市場や競合の状況は常に変化し続けています。競合調査は1回だけ、あるいは短期間だけではなく、なるべく定期的に、長期的なスパンで調査をされることをおすすめします。
また、多くの情報を集めたい、精度を高めたいという気持ちはあるかと思いますが、調査対象や調査項目を増やしすぎるとかえって情報が過多となり分析の精度が低下してしまうおそれもあります。また、調査にリソースをかけ過ぎてしまうのは本末転倒です。調査対象や項目は優先順位をつけて重要なものだけに絞り込み、効率化を図ることが大切です。
競合調査を外注する際
競合調査はリサーチ会社やコンサルティング会社などに外注することも可能です。ただし、その場合もやはり調査対象や項目、期間などを明確にしておきましょう。競合調査の専門家であれば的確な調査を実施してくれますが、依頼のしかたを間違えてしまうと期待した結果が得られない場合もあります。
また、外注先によって調査の手法やノウハウ、スキルはさまざまです。調査実績が豊富な会社、調査対象や項目などについてもアドバイスしてくれる会社を選びましょう。
「成果に繋がる」意味ある競合調査を実施しよう
競合調査を実施することで、競合と自社の強みや弱み、市場での立ち位置など、さまざまな事柄がわかります。しかし、肝心なのはそれからです。調査結果を戦略に活かすことができなければせっかくリソースを割いて調査を行った意味がありません。
ぜひ今回の記事を参考に、調査後の分析結果の活用も視野に入れて調査の目的を明確にし、それに合わせた競合や項目の選定、仮説の立案を行い、それらに合ったフレームワークを用いて調査を実施しましょう。
本コラムの監修者
未来トレンド研究機構
村岡 征晃
1999年の創業以来、約25年間、IT最先端などのメガトレンド、市場黎明期分野に集中した自主調査、幅広い業種・業界に対応した市場調査・競合調査に携わってきた、事業発展のためのマーケティング戦略における調査・リサーチのプロ。
ネットリサーチだけなく、フィールドリサーチによる現場のリアルな声を調査することに長け、より有用的な調査結果のご提供、その後の戦略立案やアポイント獲得までのサポートが可能。
そんな我々が、少しでもマーケティング戦略や販売戦略、新規事業戦略にお悩みの皆さんのお力になれればと思い、市場調査やマーケティングに関しての基礎知識や考え方などを紹介しております。